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先月末にこの記事を見たときは、これは日本の技術系ニュースサイトでも取り上げられるだろうなと思ったのだが、観測範囲が狭いのかそういうのを見かけなかったので、一応紹介しておく。
コーディングアシスタントは、生成 AI のユースケースとして有望視されているが、期待される生産性の向上はほとんどないという話である。
多くの開発者が AI のコーディングアシスタントで生産性が向上すると言っているが、Uplevel 社の研究によると有意な利益は見られず、それどころかGitHub Copilot を使用するとバグが4割以上多く発生したとな。また pull request のサイクルタイムを測定しても、Copilot を使用する開発者に有意な改善は見られなかったとのこと。
じゃあ、AI のコーディングアシスタントに全然意味がないのかというと、開発者の燃え尽き症候群についての調査では、標準時間外に費やした作業時間は Copilot を使用している場合のほうが減少したという。
8月に発表された GitHub の調査によると、今やソフトウェアエンジニア、開発者、プログラマーの97%が AI コーディングアシスタントを使用しているとのことで(ほとんど全員や!)、それにはもちろん生産性向上の期待があるし、コーディングアシスタントを使うことで55%速くコードを書けるようになったという調査結果もあるのだが、Uplevel 社の発表内容はそれに対立するものである。
結局は、コーディングアシスタントを使っても、現状は人間のチェックが必要ということのようだ。記事には、「AI で生成されたコードを理解し、デバッグするのがますます難しくなっており、トラブルシューティングに大量のリソースを要するため、コードを修正するより最初から書き直すほうが楽だったりする」という Gehtsoft の CEO である Ivan Gekht の発言が引用されている。
数行のコードを書くことと、本格的なソフトウェア開発は別物ということですね。およそ一年前に書いた「ソフトウェア開発の真の問題点は、コードを書くことではなく、問題の複雑さの管理にある」という話を思い出しますね。
この記事の最後には、Uplevel 社の研究とかなり異なるコーディングアシスタントへの肯定的な声も紹介されており、使い方次第というのは間違いないようだ。現状では、生成 AI アシスタントはJava のアップグレードといった定型作業の工数節約のほうが効果が大きそうである。
ネタ元はSlashdot。
id:yomoyomoはてなブログPro雑文書き、翻訳者。1973年生まれ。著書に『もうすぐ絶滅するという開かれたウェブについて 続・情報共有の未来』、『情報共有の未来』、訳書に『デジタル音楽の行方』、『Wiki Way』、『ウェブログ・ハンドブック』がある。

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