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Google への転職を知ったスティーブ・バルマーが激怒して壁に椅子を投げつけたという逸話が有名なマーク・ルコフスキー(Mark Lucovsky)が、今度はGoogle からVMware へ移籍するとのこと。
TecgCrunch の記事にはルコフスキーがデイヴ・カトラーにスカウトされてマイクロソフトに入ったことが書かれているが、新装版が出る『闘うプログラマー』にももちろん彼が登場する。しかもとても強烈なキャラクターとして。
ちょうど『闘うプログラマー』新装版を献本いただいたので、そこから引用しよう。
カトラーとペラゾーリはルコフスキーを高く評価し、マイクロソフトにはいったとき、連れてこなければならないと考えた。二十九歳で、結婚して二人の子供がいた。優秀だが、性格は未熟だった。NTの広い分野について、なんでもよく知っていて、同僚を感嘆させた。半面、疑い深くて自分勝手なので、チームメイトを怒らせた。いつも他人を批判しようとし、弱みをさぐっている。「証明してみせるまで、他人はまちがっていて、自分は正しいと思っている」と、仲間のひとりは言う。(137ページ)
引用文中の「半面」は「反面」が正しいのではないか?(訂正:少なくとも「半面」で間違いとはいえないので、この問題提起は取り下げます)
このようにずば抜けて優秀で、しかも同時にすげー嫌な奴なのだが、ルコフスキーはWindows NT の開発においてAPI を担当し、マイクロソフトがOS/2 を切り捨てることを明らかにし、IBM との提携関係が終わらせた歴史的な会議をやり遂げたのもルコフスキーだった。
本の後半で「ラジオのトークショーで警鐘を鳴らす保守派の評論家、ラッシュ・ランボーの役割をNTチームでになったルコフスキー(346ページ)」という表現があるが、ここのラッシュ・ランボーはラッシュ・リンボーの誤りである。
とにかく『闘うプログラマー』はこんな強烈な面々が苦しみ、咆哮し、問題をねじ伏せる様をいきいきと描いた素晴らしい本で、新装版を少し目を通しただけで燃え上がるものを感じた。
新装版では成毛眞が「解説」を書いているのだが、以下のくだりに呆れた。
不思議なことにウィンドウズNTの最初のバージョンは1.0ではなく3.1だった。これは当時のウィンドウズの最新版が3.1だったことに由来する。マーケティング的には主流だったウィンドウズとの互換性を訴えたかったのだ。ウィンドウズ9Xシリーズ、ウィンドウズXP、ウィンドウズ・ビスタもウィンドウズNT系である。(407-408ページ)
Windows 9X シリーズをWindows NT系に分類するなんて初耳である。これをかつて MSKK の社長だった人が書くのは滑稽だが、その間違いを正せなかった編集者にも責任がある。
結論としては『闘うプログラマー』は素晴らしい本だし、献本してもらいながらこういうことを遠慮なく書くような人間なのでワタシはいろんな人に嫌われるのだ。
![闘うプログラマー[新装版] 闘うプログラマー[新装版]](/image.pl?url=https%3a%2f%2fimages-fe.ssl-images-amazon.com%2fimages%2fI%2f51kV6tOSplL._SL160_.jpg&f=jpg&w=240)
id:yomoyomoはてなブログPro雑文書き、翻訳者。1973年生まれ。著書に『もうすぐ絶滅するという開かれたウェブについて 続・情報共有の未来』、『情報共有の未来』、訳書に『デジタル音楽の行方』、『Wiki Way』、『ウェブログ・ハンドブック』がある。

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