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WirelessWire News連載更新(みんなかえってクソして寝るまでの希望)

WirelessWire Newsで「みんなかえってクソして寝るまでの希望」を公開。

今回は『Enshittification』にちなんでタイトルに「クソ」の文字を入れるというとんでもないチャレンジをやってしまい、これは絶対怒られるなと覚悟したが、編集長にお目こぼしいただいた。

それが念頭にあり、それに合うエピグラフは何かないかと頭を巡らせたときに思い出したのがこれで、なのでティム・ウーの名前が出てくること以外、本編の内容には何の関係もないのである。というか、どうでもいい。

ただこのタイトルはただふざけているのではなく、ちょうど一年前に書いた「沈鬱な黒い毒と小さな希望」にかけているのである。ええ、本気で。

「メタクソ化」論についてはこれまでも何度も取り上げているので、内容的には『Enshittification』より『The Age of Extraction』を厚く紹介したつもりである。

コリイ・ドクトロウにしろ、ティム・ウーにしろ、彼らの論にはこれまで文章を書く上でお世話になってきたが、今回は彼らの新刊をそのまま好意的に紹介して終わりにせず、あえてカウンターを載せている。

特にマイク・マズニックがティム・ウーに牙をむいているのを意外に思う向きがあるかもしれないが、これはウーが「インターネットを生み出した26ワード」でおなじみ通信品位法230条の撤廃を主張したのにマズニックがガチギレした流れで……といった、本編に盛り込めなかった話は今回も山ほどあるんですな。

やはり一つの文章で洋書の新刊を二冊取り上げるのは無茶というもので、それに関する情報を集めるだけで、どこからどう手を付けてよいか途方に暮れてしまった。

正直、この連載を今年やり通せるとは思わなかった。ワタシの場合、これまでウェブ連載が4年続いたことはない。来年5月まで書ければ、その4年の壁を乗り越えることになる。そこまで体力と気力が持つかどうか……。

「共鳴コンピューティング宣言」が我々に訴えるもの

resonantcomputing.org

先週くらいから話題になっているみたいだが、「共鳴コンピューティング宣言(The Resonant Computing Manifesto)」とは何ぞや?

アテンションを奪うことに長けた中央集権的なプラットフォームが人々のつながりや幸福感を奪っており、テクノロジー人間性を損なう結果になっている現状への批判がまずある。

クリストファー・アレグザンダーと「無名の質」を引き合いに出しているところにおっとなるが、この文章の著者たちはこの質を「共鳴(resonance)」と呼んでいる。テクノロジーは人間の最良の部分を引き出すべきものという信念のもと、もっと個人やコミュニティの特性を生かしたテクノロジーのあり方、つまりは共鳴的な環境を構築できるはずだと訴えている。

今我々はコンピューティングの未来を選ぶ岐路に立っているという認識のもと、以下の5つの原則を提案している。

  1. プライベート(Private):個人が文脈の主導権を握る
  2. 専用性(Dedicated):ソフトウェアは利用者個人の利益に専念する
  3. 多元性(Plural):分散型権力、相互運用性、参加者の選択肢を重視する
  4. 適応性(Adaptable):利用者や文脈の違いに柔軟に対応できる開放性を持つ
  5. 協働性(Prosocial):人々のつながりや協働を促進し、コミュニティを豊かにする

なるほどね。誰が書いたのかと思ったら、執筆者には「ウェブをますます暗い森にし、人間の能力を増強する新しい仲間としての生成AI」で取り上げたマギー・アップルトン、「BlueskyやThreadsに受け継がれたネット原住民の叡智」で取り上げ、また今回の文章でも牙をむいているマイク・マズニック、そしてAIエージェントに死を招く「三位一体」でおなじみサイモン・ウィリソンなどが名前を連ねている。

この宣言の賛同者となると、ティム・オライリー、ケヴィン・ケリー、ブルース・シュナイアー、アラン・ケイケント・ベックヤンシー・ストリックラー、アニール・ダッシュ、オードリー・タン……とこのブログ的にもおなじみの名前が続くのである。

ネタ元はThe Future, Now and Then

ニューヨーク・タイムズが選ぶ今年の100冊に入ったテック方面の本

www.nytimes.com

ニューヨーク・タイムズ紙が選ぶ今年の100冊だが、やはりワタシとしてはノンフィクションに目がいく。その中に何冊かテック系の本が選ばれているので、邦訳を期待して紹介させてもらう。

残念ながらというべきか、今回 WirelessWire News 原稿で取り上げた二冊は入ってませんな。どちらも刊行間もないからだろうか。

まず、こないだ邦訳『アバンダンス』を紹介したエズラ・クラインとデレク・トンプソンの『Abundance』が入っているが、あらためて邦訳の仕事の早さに敬服してしまう。

ワタシが「今こそ「弁護士国家」米国は「エンジニア国家」中国に学ぶべきなのか?」で取り上げたApple in China が入っている。

そして、少し前に洋書ファンクラブで取り上げられていたCareless People も入っている。

この本の内容については渡辺由佳里さんの文章を読んでいただきたいが、著者はこの本のせいで Meta から訴訟で追い込みをかけられ、5万ドルの罰金で破産の危機にあるというのは本当にひどい話だと思う。

続いて、ワタシも5月に取り上げたカレン・ハオのEmpire of AI が入っている。

本の内容についてはエミコヤマの読書記録を参照くだされ。そういえば、TBS の CROSS DIG で著者がインタビューを受けていた。

うーん、100冊中4冊、ニューヨーク・タイムズは一般紙だからそんなものか。

ブレット・イーストン・エリスの10年以上ぶりの邦訳『いくつもの鋭い破片』が来年のはじめに出るぞ

ブレット・イーストン・エリスの大作『いくつもの鋭い破片』(上下/1月発売)校了せり。pic.twitter.com/llzxktamw5

— Schün Ngash (@Schunag)December 3, 2025

この投稿で、ブレット・イーストン・エリスの『帝国のベッドルーム』(asin:4309206441)以来10数年ぶりの長編小説『The Shards』の邦訳『いくつもの鋭い破片』()が出るのを知る。ワオ!

当然ながらブレット・イーストン・エリスの邦訳が出るのも10年以上ぶりである。

yamdas.hatenablog.com

個人的には、彼の本では『White』の邦訳を期待していたが、残念ながらそちらは無理だったか。

これは何度も書いているが、現在、彼の評価は『アメリカン・サイコ』の原作者としてが主に思うが、ワタシは彼のデビュー作『レス・ザン・ゼロ』のほうが好きな人間で、どうやら彼のハイスクール時代に材をとったと思われる『いくつもの鋭い破片』は期待してしまうねぇ。

思えばブレット・イーストン・エリスという人は、デビューから40年以上経った後も、良くも悪くも独特の存在感を持った人である。そのあたりは『現代アメリカ文学ポップコーン大盛』に収録された青木耕平さんの文章を読んでほしい。

そうそう、先週クエンティン・タランティーノの“21世紀の映画ベスト20”発表(そして、ポール・ダノ『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』での演技を過剰にディスったの)が日本でも話題になったが、タランティーノがそれを行ったのはThe Bret Easton Ellis Podcast なんだよね。

ズートピア2

『ズートピア』を楽しく観た人間として、当然本作も観たいと思ったが、でも、あれって結構前の映画だよね……と調べたら、2016年のはじめだから、ほとんど10年ぶりの続編ということになる。そんなに経つのか!

もちろんこのタイムラグにはコロナ禍が影響しているのだろうが、この10年で人間世界はずいぶんと変わってしまい、「別々の種でも分かり合える」というテーマを貫くのは、割とシャレにならない地点に来てしまっている。

正直、前作のような圧倒的なものは本作には感じなかった。これは作品のせいというより、こちら側の問題かもしれない。

でも、現在の分断の世界において、上記のテーマを貫徹させ、そして、事件解決のミステリーのストーリーをしっかり描いているのは良かった。

ワタシは吹き替え版での鑑賞だったが、本作でのキーパーソンとなるヘビの声はキー・ホイ・クァンなのね。そうした意味で、ヘビに中国系をあてた本作の政治性について分析できるのかもしれないが、それはワタシの仕事ではない。

吹き替えの声優では江口のりこが上手かった。エンドロールで彼女がビーバーのインフルエンサー役なのにかなり驚いたくらい。ただ、その役柄は感心しないな。最近、ハリウッド映画はインフルエンサーに甘くないか?

そういえば、こないだの『WEAPONS/ウェポンズ』に続いて本作でも『シャイニング』の参照があった。今年はこれに加えて『サブスタンス』と3本『シャイニング』の参照がある映画を観たことになる。

WEAPONS/ウェポンズ

公開初日に観に行った。近場のシネコンでは、レイトショーの終映時間が日付超えでカンベンしてくれよという感じだったが、ヘタすれば日本公開がなかったかもしれないのだからねぇ。

劇場に入る前にステッカーを手渡され、何かと思ったらワーナーのステッカーだった。普通こういうのはチケットを買った映画にちなむもののはずが、なんで映画会社のステッカーなんだよと思った人もいるだろうか。これは、本作がワーナーが配給する最後の洋画だから(多分)。

さて、観に行くと決めた映画の評はできるだけ読まないのだが(こういう感想を書きあげた後にまとめて読む)、本作は驚きのあるホラー映画と聞いていて、小学校のクラスの子供たちが(ただ一人を除いて)深夜に家から走り去ったという前提がミステリーだし、演出は確かにホラーなのだけど、子供たちが消えたクラスの担任教師、消えた子供を必死に探す父親、町の警察官、コソ泥の与太者、とフォーカスする人物が次々と移っていきながら同じ出来事を多層的に描く……あれ、これって先が読めない脚本がよくできた人間ドラマなの? と思っていたら、文句なしのホラーに戻り、「武器」という本作のタイトルの意味が分かる仕掛けである。

ホラー描写で『シャイニング』などの古典も参照され……そうそう、本作の子供たちが2時17分に消え去ったという設定も、『シャイニング』におけるオーバールック・ホテルの217号室にちなんだものでしょう(映画版では、外観を撮影されたティンバーライン・ロッジの要請で(ホテルに存在しない)237号室に変更されている。余談だが、ワタシは10年以上217号室に住んだ経験があるので、この設定はすっと思い出せるのだ)。

そのように過去のホラー映画の演出も押さえながら、そのクライマックス、文句なしに怖い場面なのに客席からどうしようもなく笑い声があがってしまうところは確かに新鮮と言える。楽しめました。

OpenAIとGoogleの生成AIの覇権争いは、Netscapeとマイクロソフトのブラウザー戦争の再現か?

avc.xyz

1990年代半ば、世界にワールドワイドウェブを紹介し、インターネット時代をもたらしたのはNetscape のブラウザだった。

しかし、Windowsオペレーティングシステムを握るマイクロソフトが、OS にInternet Explorer ブラウザをバンドルする戦術でブラウザ戦争に勝利し、敗れた Netscape は AOL に売却された

やがてインターネット支配を巡る争いはブラウザから検索エンジンに移り、そこで勝利したのはGoogle である。

さて、それから月日が流れ、2014年にGoogleDeepMind を買収し、その後トランスファーアーキテクチャを開発し、2017年に論文でその概念を世界にもたらした。

しかし、Google が躊躇する間に大規模言語モデル(LLM)で最初にリードしたのは、ご存じの通り、OpenAI だった。OpenAI は ChatGPT で、それこそかつてのNetscape ブラウザが世界にインターネットを紹介したように、世界に実用的な人工知能を紹介したのだ。

で、Google はかつてのマイクロソフトのように「目を覚まし」、「新たなAIの王者」と称賛された Gemini 3 で OpenAI のリードを消し去ったとみられる。「OpenAI神話はもう終わった」という声もある。

Google は、やはりかつてのマイクロソフト同様、Gemini を自社のあらゆる消費者向けサービスに組み込んでいる。

だからといって、OpenAI はかつてのNetscape のようにどこぞに買収される運命にあると言いたいのではない、とフレッド・ウィルソンは書く。

彼が引き合いに出すのは、「歴史は繰り返さないが、韻を踏む」というマーク・トウェインの有名な言葉である。

LLM も OS やスマートフォン市場と同様に、最終的には二大企業の争いになると考えてきたが、それが現実になっただけだとウィルソンは見ている。ただ、まだ分かってないことがあるともウィルソンは書く。

それは AI 分野における検索エンジンの役割である。LLM 以上に重要な AI アプリケーションは存在するか? もし存在するならそれは何か? ということだ。ここが次のポイントかな。

アディ・オスマニの『バイブコーディングを超えて』が早くも今年末に刊行される

yamdas.hatenablog.com

オライリー本家から出るBeyond Vibe Coding を紹介したのが今年6月、そして実際に本が刊行されたのが8月か9月だった(オライリーのページには8月とあるが、Amazon のページでは9月となっている)。

で、調べものをしていて、邦訳『バイブコーディングを超えて AI時代を生き抜く開発者の未来』が今年末に出るのを知る。

原書刊行から半年足らずで邦訳が出るなんて、オライリー関係で最速ではないか?

これは驚きだが、これはやはりオライリーにおける翻訳書の制作体制の変化が影響しているのだろうか? 今回の場合は、人間の訳者がクレジットされているが。

オライリー・ジャパン新刊・近刊情報を見ると、9月に5冊、10月に5冊、11月は6冊、そして12月も5冊出る見込みで翻訳書が量産体制になっているのに今さら気づかされる。

ビットコインの大きな秘密:暗号資産は法執行機関の秘密兵器となった

bitwarden.com

今年のOpen Source Security Summit で、『サンドワーム ロシア最恐のハッカー部隊』の邦訳があり、クリプト+犯罪がテーマの本を書いている WIRED のアンディ・グリーンバーグを講演を行っている。

その内容は、完全な匿名性を約束するデジタル通貨というビットコインの約束はもはや正しくはなく、もはやビットコインは犯罪者にとって最大の悪夢となったというものだ。

2014年頃から法執行機関は、ビットコインブロックチェーンは追跡可能な記録となっており、「ブロックチェーンフォレンジック」で従来の金融システムよりも資金の流れを追跡できるようになったという。

グリーンバーグによると、「米国司法省史上最大規模の第1位、第2位、第3位の、総額数十億ドルに及ぶ資金押収」は暗号資産の資金差し押さえだという。

それでも中国の犯罪組織トップにはまだ手が届かないなどの問題はあるとのことだが、ブロックチェーンの分析は法執行機関に力を与える一方で、他のすべての利用者にとって深刻なプライバシーの懸念を引き起こす。つまり、犯罪者を捕まえるのと同じ技術が、善良な市民を追跡する可能性があるわけですね。

ネタ元はHacker News

そうそう、先月「シリコンバレーの技術解決主義を斬る『フィンテック・ディストピア』」を書いたが、クリプト界隈から怒られが発生しないかというのが少し心配だった。で、どうだったかというと、そういうのはまったくなかった。理由は単純で、単に読まれてないだけだろう。そんなものだ。

そうそう(二度目)、ビットコインと言えば、『マスタリング・ビットコイン』の第三版がやはり今年末に出るよ。

バラエティ誌が選ぶコメディ映画100選

variety.com

バラエティ誌が選ぶコメディ映画100選ということで、昔同じような企画を紹介したな……と記憶を辿ると、10年前だった。

しかし、こういうリストを見ると、全然観れてないよなぁ、とうなだれてしまうのである。今回のリストで、ちゃんと観たことがあるのは以下のちょうど30本だった。3割か……。

こういう企画で『裸の銃を持つ男』を堂々持ってくるセンス、ワタシは嫌いではない。あと、『アニー・ホール』がキャンセルされてなくて本当に良かった。

今回調べて、だいたい1500円以内でディスクが買えることも分かった……のだが、新品のBlu-ray/DVD が買えない作品は『ワンダとダイヤと優しい奴ら』、『ビートルズがやって来るヤァ!ヤァ!ヤァ!』、『ウィズネイルと僕』、『スパイナル・タップ』、『アニー・ホール』がそうで、これは由々しき事態である。

しかもこれらの作品は配信もほぼやってない(『ウィズネイルと僕』が Prime Video、『アニー・ホール』が U-NEXT で観れるのがわずかな例外)。『スパイナル・タップ』は、本国では今年続編が公開されたというのに、ちゃんと来年日本公開されるか心配になるよ。

最近ご恵贈いただいた本の紹介(みやもとくにお、大久保隆夫『この一冊で全部わかるセキュリティの基本 第2版』、池本大輔『サッチャー 「鉄の女」の実像』)

先週末、上京した時に二冊本を手渡しでご恵贈いただいたので、ひとまず紹介させてもらう。

まず一冊目は、みやもとくにお、大久保隆夫著『イラスト図解式 この一冊で全部わかるセキュリティの基本 第2版』で、これは著者のみやもとくにおさん(id:wakatono)にいただいた。

この本は某所で取り上げる候補として買おうと思っていたので、とてもありがたかった。

みやもとくにおさんならまず間違いないという安心感がある。

二冊目は、池本大輔著『サッチャー 「鉄の女」の実像』で、これは中公新書のヒットメイカ上林達也さんにいただいた。

上林さんにお会いするのは10年以上ぶりで、感慨深かったし、何より再会できて嬉しかった。

実は今、同じ中公新書の新刊である加藤喜之『福音派―終末論に引き裂かれるアメリカ社会』を読んでるところなので(これも面白い)、これを読み終えた後に読ませてもらう。

高市早苗首相が目標とする政治家として名前が引き合いにされることが多いところでの刊行は、この本が運を持っていると言えるのでしょうな。

さて、先週末上京したのは、久方ぶりに文学フリマ東京に(客として)参加するためだった。

どれくらい久しぶりかというと15年ぶりくらい? と思っていたが、後で2014年以来11年ぶりと判明した。さすがに15年は大げさすぎた。しかし、11年前と規模がまったく違うのはご存じの通りである。

こちらでも久方ぶりにお会いする方、ネットでしかやり取りのない方に一通り挨拶できた……と思ったが、これも後から、何人も抜けに気づいて頭を抱えることになった。

大量に本を買い、部屋に山積みされているが、西森路代さんの『伏線と回収の日々』から読み始めた。

ヒューマノイドロボットはその国の「人の働き方」を反映する社会の鏡なのか

note.com

近年ヒューマノイド分野に注力している森山和道さんだが、これは特に重要な論考だと思う。そして、あまり話題になっていないのが不思議である。

最近、米国や中国のスタートアップの手によるヒューマノイドが実用化されようとしているが、それらのデモンストレーション映像を見て森山さんが覚えた違和感からこの文章は始まる。

「彼らが目指しているゴールは、私が想像している未来と同じなのだろうか?」という疑問です。

国ごとに異なる「人の働き方」は、ヒューマノイドの用途をどう分岐させるのか|森山和道 ライター、書評屋

ヒューマノイドが期待されているのは、間違いなく「人作業の代替」です。労働力不足があらゆる先進国で叫ばれる今、人の代わりに動く機械が求められているのは自明の理です。 けれど、ここで一つ、私たちは重要な視点を見落としています。「そもそも人間はどう使われているのか?」という前提が、国や文化によってまるで異なるという事実です。

国ごとに異なる「人の働き方」は、ヒューマノイドの用途をどう分岐させるのか|森山和道 ライター、書評屋

そして、アメリカ、日本、中国、そして欧州におけるヒューマノイドが、それぞれの地域で求められているものが反映されることが分析されている。

詳しくはリンク先をどうぞ。この分野はデモンストレーションの映像と一緒に語れるのが強い。

ヒューマノイドを見つめることは、私たち自身を見つめることです。 「ロボットに何をさせたいか」という問いは、「人間は何をすべきか」「人間にとって幸せな労働とは何か」という問いと表裏一体です。

国ごとに異なる「人の働き方」は、ヒューマノイドの用途をどう分岐させるのか|森山和道 ライター、書評屋

そろそろ森山和道さんの手によるヒューマノイド本が読みたいところである。

リベラル派の停滞を「豊かさ」で打破する政策提言の書『アバンダンス』が来月出る

yamdas.hatenablog.com

エズラ・クラインとデレク・トンプソンの共著『Abundance』のことは、今年3月に出たばかりの時期に紹介したし、それ以降、WirelessWire News 連載でも以下で引き合いに出させてもらった。

ただ、正直邦訳は簡単には出ないなと思っていた。理由は当たり前だけど基本アメリカの話だから。

しかし、調べものをしていて、来月にNewsPicksパブリッシングから『アバンダンス:「豊かな時代」を呼びさませ』(今のところ邦題は仮)として邦訳が出るのを知る。仕事が早い!

版元としては、十分この本の内容は日本にも適用できると踏んだようだ。

サルマン・ラシュディが語るルー・リード「ワイルドサイドを歩け」誕生秘話

www.independent.co.uk

サルマン・ラシュディルー・リードについて語っている。

具体的にはルー・リードの代表曲「ワイルドサイドを歩け(Walk On The Wild Side)」が、元々ネルソン・オルグレンの『荒野を歩め(A Walk on the Wild Side)』をミュージカル化するにあたり書いたものだが、その話が頓挫したため、歌詞をアンディ・ウォーホルの「ファクトリー」にいた人たちに置き換えたものだという。

うーん、ルー・リードの伝記本でその話読んだ気がするが、正確には覚えていない。しかし、それよりサルマン・ラシュディルー・リードと友人だったというのは知らなかった。

ラシュディは、「ルー・リードと友人だったと言えるのは実に驚くべきことだ。なぜなら大学時代、私はヴェルヴェット・アンダーグラウンドを崇拝していたから。まさかルー・リードの電話番号を手に入れることになるとは夢にも思わなかった」と語っている。

そして、ラシュディはネルソン・オルグレンとも奇妙な縁があったという。

オルグレンが『真夜中の子供たち』の批評を書いたつながりで、ラシュディオルグレンの新居祝いのパーティに呼ばれることになったという。

しかし、当日オルグレンは心臓発作を起こし、亡くなってしまった。「だから私はネルソン・オルグレンに会えなかったのだけど、あと一歩だったんだ」とラシュディは語る。

ちょうどラシュディの短編集が出たとこなんだね。しかし、長らく彼の邦訳は出ていないが、悪魔の詩訳者殺人事件の影響なんだろうな。

マニがストーン・ローゼズ初来日時に語った「音楽上のヒーロー」

nme-jp.com

「マニ」ことゲイリー・マイケル・マウンフィールドが亡くなった。

彼を追悼する投稿に、ベースプレイヤーとしての素晴らしさはもちろんだが、彼の陽性の人柄を称えるものが多かったのが印象的だった。本当に多くの人に愛されていたのだなと再確認させられた。

彼を追悼するために、1989年から2004年まで読者だった雑誌 rockin'on から引用する「ロック問はず語り」をやらせてもらう。

今回取り上げるのは、1990年1月号で、表紙はストーン・ローゼズで、この号はさながら彼らの初来日公演特集号と言える。その中で、リズム隊のレニ&マニで増井修のインタビューを受けている。

●あなた方の生み出すリズムは実に多様性に富んでいてよくここまで複雑なことがやれるなと感心するんですけど、それぞれのルーツは何なんですか?
R(レニ)「マニは実にいろんなものがバックにあるね、ノーザン・ソウルからレゲエ……」
M(マニ)「ファンク、パンク」
R「僕自身も同じようなものが好きだな。ビートルズみたいなポップ、レゲエ、ヒップホップやハウスの中のいいもの」
M「だからリズム・セクションがうまく機能してるんだと思うよ。いろんなものが拮抗し合って、でもうまく溶けあって」
R「バンドの四人ともルーツを挙げればエルヴィスからバルトークまで、実に幅広いな」
M「僕らの音楽をよく聞いてると、もう何でも出てくるって感じだろ?」

バンドへの揺るぎない自信が伝わるが、マニは昔からのダチであるこの四人でないとバンドは成り立たないと強調している。

この二人だとレニのほうが弁が立つのだが、最後の質問に対するマニの回答は、読んでて思わず笑ったのを覚えている。

●では最後に、プレイヤーとしてそれぞれ音楽上のヒーローを挙げて欲しいんですが。
M「えーと……俺」
R「ジョン・ボーナムかな」
●へーえ。ストーン・ローゼズって全員レッド・ツェッペリンが好きなんですか?
M「えーっ!?」
R「こいつは嫌ってるよ。はじめはみんな嫌ってたんだ。でも俺がレコード持ってて、ジョンに聞かせたら最初は厭がってたんだけど、何度か聞くうちに気に入ってきたんだ。イアンも最初に聞かせた時はヘドが出そうな顔してたけどそのうち『でも何かあるな』って思うようになったんだ」

ヒーローを聞かれて「俺」と答えるマニ。でも、それが嫌味にならない稀有な人だった。

文学フリマ東京41の会場でも、TBS ラジオブースにいた長谷川プロデューサーと顔を合わせるなり、自然と「マニが亡くなりましたね」「この世代のミュージシャンも鬼籍に入るのだな、と思いましたよね」とマニの話題になった。そこでも言ったし、何度も書いているが、ストーン・ローゼズの 1st アルバムは、音楽というよりも魔法であり、マニのベースなくしてその魔法はありえなかった。

ありがちだが、彼のベストプレイは、ローゼズでは "She Bangs the Drums"、プライマル・スクリームでは "Kowalski" になるだろうか。

プロフィール
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雑文書き、翻訳者。1973年生まれ。著書に『もうすぐ絶滅するという開かれたウェブについて 続・情報共有の未来』、『情報共有の未来』、訳書に『デジタル音楽の行方』、『Wiki Way』、『ウェブログ・ハンドブック』がある。

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