
川端康成作品といえばまず『雪国』が浮かぶのですが(次に『伊豆の踊り子』)
荒木飛呂彦さんのスタンドを使いそうな踊り子の装丁に惹かれて、まずこっち。
名作と呼ばれるこのお話、何度も映画化されていて、期待がすごいです。
目次
孤児の学生様が旅をして出会った可愛らしい踊り子の旅芸人一行。
2人のウブな恋心を描いた『伊豆の踊り子』含む初期の短編5作品。
川端康成さんの描写する女性像は、どんな女性であれ、なんと可憐で麗しく、魅力的でした。
娘は瑞々しさある天真爛漫な姿で。
そして昔の言葉が多くて難解ではあるけれど、きれいな日本語で語ってくれています。
いや、言葉だけじゃなくて、何を伝えたいのかっていうのも難しいのだけれど。
でもそのはっきり伝えないところが、奥ゆかしい日本の美というものを表しているのかもしれませんな。
この時代の考えや一般的な解釈が、この一冊でとてもわかります。
なんといってもやはり差別的な解釈がとても目立ちました。
芸人(踊り子もそう)が乞食のような底辺の身分ということに驚き。
女性差別なんかは、知っていたけれども、ここまでとは……。
汚れているというイメージがあったことは知っていましたが、こんなにも虐げられて、乱雑に扱われる存在だったなんて。
女性として生きるわたしの本音は、現代に生きていて本当に本当に、心の底から良かった。
テーマになっているのは色恋ですが、孤独や死人もキーワードとなっている一冊。
孤独な身だったり、差別されたり、病人に亡くなった人。
解説にあったのですが、川端康成さん本人が天涯孤独の身で、幼いころから周囲の人々が亡くなっていることから、そんな自分と同じにおいのする登場人物たちを描いたのでは。
この時代の小説家は私小説が多いイメージですが、この短編集には、それらしきものは一編だけでした。
川端康成さんは、天涯孤独な自分をあまり思い返したり、語ったりしたくなかったのかもしれません。
薫(踊り子)がウブでとっても可愛らしくて、別れる際の態度と心境もすごくわかる……。
もうすぐいなくなってしまうのに、貴重な一時なのに、この現実に納得できなくてへそを曲げてしまう。静かな抗議みたいなもの。
こうしていれば、もしかしたら、彼の気が変わってまだ側にいてくれるかもしれないという微かな期待なんかもしたりして。
主人公が、踊り子たち一行に再会したくて追いつこうとしたりする心情も甘酸っぱくてときめき、心き潤いを与えてくれます。
別れてからおいおい泣く姿は、すごく切なくて、読んでいる私まで胸が苦しくなりました。
だって今は遠距離恋愛は、つらいけど電話やメッセージで繋がって居場所も逐一聞けるし、約束もできて再会可能だけれど、この時代はそうはいかないもの。一期一会だもの。
2人が再会できますようにと本気で思うのです。
そして結ばれてしまえ!
祇園歳のとある情景という意味みたいです。
馬に乗って芸をする少女のお話ですが、お祭りのいろんな景色に気を取られて注意散漫になっているように感じます。
それが原因でとんでもない事態になる最後の場面にドキリとしてしまい、嫌な予感がしました。
おそらく稼ぎ頭の、花形の桜子が大怪我してしまったとなると、本人やみんなに恨まれてしまうのではないか……と。
このような、芸で食っていく人たちには常にリスクが伴うなと思うのと、生きるのに必死な環境の息苦しさと、心身ともに自分をコントロールしなきゃ上手くやっていけないという過酷さと、いろいろなシビアな部分を感じ取ったお話でした。
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介護の壮絶さは今も昔も変わらない。
16歳の青年が介護するとなると、尚更苦痛だったことと思います。
その当時は大変でも、やっぱり時が経つと美化してしまうものなんだなと感じたり。
そういうのって初恋だけじゃないんだなと思ったり。
一番わかりやすくておもしろくて好みでした。
肺炎で亡くなった人のお顔はきれいなんて、はじめて知りました。
屍の花嫁なんておもしろいじゃないの。
突然お骨を見せなければならなくなって焦るところも、偽装しようと躍起になるところもコミカルで良きです。
あれよあれよと……
君、何回結婚するのさ!笑
オチはさっぱりしていておもしろかったです。
結局まさかのそっちと結ばれたのね。
死体紹介人とは彼のことでしたのね。おもひろい商売だこと。
たくさんの女性(娼婦)が登場して、私の頭はてんてこ舞い。
でも賑やかなことです。
女って賑やかなのよ、集うと。
その中でも私はお清さんが印象的で、好きでした。
とにかく真面目で、儚くて、でも切なくて苦しい生涯で。最後はとにかく不憫で。
彼女と正反対のお咲は、生きる術を身につけていてたくましい。
真面目なお清よりも不道徳なお咲の方がうまくいっているというのは、腑に落ちなくて厳しいお話という印象ですが、これが現実そのものなのよな……。
真面目な人ほど損をするんですよね。
あくまでも私の解釈ですが、きっとそういうことを川端康成さんは描いたのかなと感じました。
川端康成氏、難しい。
でも考察しがいがあるので、何度も読んで理解できたら達成感がすごいものになりそうです◎
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