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第4回 入力ミスは何故起きたか? 検証委報告書の甘すぎる勧告

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 ここのところ,「社会保険庁オンラインシステム」(現行システム)についての記述や,解説書を探し続けている。昔,アメリカン航空が開発したオンライン予約システム「セイバー(Sabre)」が,情報処理システムの教科書に紹介されていたことを思い出したからだ。同じように,社会保険業務システムの解説資料が存在していないかと思ったのだ。

 ところが,これまでのところ,そうした資料は見つかっていない。

 社保庁オンラインシステムは良くも悪くも公共システムである。その開発と運用には1000億円単位が費やされている。しかも,再三指摘してきたように,その費用は業務勘定で支出されており,その3分の1は税金,残りの3分の2は年金保険料で賄(まかな)われている。ところが前回も指摘したように,第三者による監査が実施された形跡はないし,詳細な資料が外部に公開された形跡もない。

基礎年金番号導入時の移行プロセスは触れられず

 年金記録問題検証委員会が10月31日に発表した最終報告書を見る限り,社保庁オンラインシステムが最初につまずいたのは,平成9年の基礎年金番号の導入時と推測できる。

 検証委の報告書には,次のようにある。

社会保険庁は,平成8年12月に,年金受給者には基礎年金番号を記載した新しい年金証書を,また,公的年金加入者には基礎年金番号通知書を送付する等の準備を行い,9年1月から基礎年金番号に基づく業務を開始した。

 ここでのキーワードは“準備”である。最終報告書では,基礎年金番号を利用する新システムに移行する際に実施すべき準備,実施(移行),移行後の検証というプロセスがまったく触れられていない。この時点ですでに,帰属先(被保険者)が不明な保険料の納付記録,いわゆる「宙に浮いた5000万件の年金記録」が始まっていたと考えられる。移行にともなうプロセス評価を見過ごしたのは,「年金記録問題発生の経緯,原因,責任の所在等について調査・検証を行うため」(最終報告書より引用)に発足した検証委の仕事としては,不十分と言えるだろう。

 どのような問題でも,原点となる事象,時点というのがある。新システムへの移行時に,システムそのものとシステムの運用管理に何があったのだろうか。検証委は「平成8年と言えば,もう十年以上も前だ。記録など残っているはずがない」と看過してしまっていないか。あるいは,当事者である社保庁が隠しているのではないだろうか。

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