ネット中傷対策で総務省が転換、事業者の通信履歴は原則消去から3~6カ月保存推奨へ
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総務省の有識者会合は2025年7月3日にまとめた報告書案で、SNS運営を含む通信事業者に対し、通信履歴を最低3〜6カ月保存することを推奨する制度改正案を示した。通信履歴は「原則としてすぐに破棄」という従来方針を転換する。同案への意見募集を開始しており、8月4日まで受け付ける。結果を踏まえて、総務省は2025年秋にも事業者向けの指針を改正する方針だ。
「通信履歴」は、発信者と通信相手のIPアドレスや電話番号、これらにひも付く利用者の情報や通信日時など、通信内容を除く関連情報を指す。憲法などが定める「通信の秘密」で保護対象に含まれるため、総務省は課金など業務上の必要期間が過ぎたらすぐに消去すべきだとしていた。
見直しの背景には、ネット上で権利侵害を受けた被害者が発信者情報の開示を請求しても、通信履歴が破棄されているため被害救済に結びつかない例も多いという実情がある。ただし総務省が示した3〜6カ月という期間は裁判所など手続きが速やかに進んだ場合の最低限に変わりはない。また警察庁は犯罪捜査のために保存期間を1年6カ月にする意見を出していたが、採用しなかった。
通信の秘密を害しない範囲の線引きに対し、総務省が極めて慎重に運用を見直している状況も垣間見えた。
保存「最長6カ月」から「最短3〜6カ月」へ
通信履歴の扱いは、総務省の有識者会合「ICTサービスの利用環境の整備に関する研究会」が議論し、報告書案に盛り込んだ。現在は通信事業者によって通信履歴の保存期間のばらつきが大きい。このため誹謗(ひぼう)中傷などネット上での権利侵害や違法・有害情報に対し、被害者側による発信者情報開示請求を阻まれる場合があることが議論の焦点になった。
通信履歴を原則として残さないという方針は、総務省と個人情報保護委員会が定めた事業者向けの指針「電気通信事業における個人情報等の保護に関するガイドライン」で決められている。通信事業者は「通信履歴(中略)については、課金、料金請求、苦情対応、不正利用の防止その他の業務の遂行上必要な場合に限り、記録することができる」(第38条第1項)とした。つまり必要な期間の経過後はすぐに消去することを求めている。
業務に必要な保存期間は事業者がそれぞれ取り決める。ガイドラインは例として「一般に6カ月程度、特に業務で必要性な場合は1年程度」は許容できるとした。つまり通信の秘密に抵触しない「最長期間」が6カ月や1年で、実際にはより短い事業者が少なくない。
実際に有識者会合などでは、書き込みから1カ月ほど、もしくは3カ月未満で被害者が申し立てたり警察機関が照会したりしたものの、履歴が既に消去され、発信者を特定できない例が挙がった。
総務省が今回示したガイドライン改正案は、「必要がなくなった通信履歴は消去」という第38条第1項を維持しながら、運用方法に関する「解説」に新たな「例外」を追加した。誹謗中傷などネット上での違法・有害情報の対策に応えることも業務の一部と捉え、通信履歴の保存期間は「少なくとも3〜6カ月程度」が望ましいとした。事業者の法的義務ではなく要請であり、違反への罰則もない。ただし事業者の多くはガイドラインを順守すると見られている。
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