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【ニューヨーク=金子靖志】国連総会の特別委員会は8日、各国がインターネット上の犯罪に協力して取り組む「サイバー犯罪条約」について議場の総意による無投票で採択した。条約は月内にも総会本会議に提出され、正式に採択される見通しだ。

条約はロシアが主導した。強権国家が反体制派の監視を目的として条約を悪用するのではないかとの懸念が米欧では出ている。日本は今後、条約内容を精査し、署名と批准の是非を検討する。
条約はネット上の不正アクセスや児童ポルノ拡散などの犯罪捜査で国際協力のあり方を定めたほか、途上国に対するネット犯罪の取り締まりに向けた技術支援が盛り込まれている。
もともと2001年に欧州評議会が別のサイバー犯罪条約を採択し、日米など75か国が批准しているが、未批准のロシアが「西側諸国による不完全なものだ」(国連外交筋)として包括的な新条約が必要だと主張し、22年に交渉が始まった。米欧は採択の前提として、「表現の自由」の抑圧や差別につながる捜査について、協力要請を拒否できる条項を明記するよう要求。当初、ロシアや中国は反発したが、最終的に盛り込まれた。
ただ、人権団体は新条約への懸念を強めている。国際人権団体ヒューマン・ライツ・ウォッチは声明で「条約は人権保護が不十分で政府の監視を拡大し、世界中のジャーナリストや活動家などに対する弾圧の法的手段となる」と非難し、各国に署名・批准しないよう求めた。
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