「やった、決まった!」。通院先のドイツ東部ドレスデンの病院の中庭で、ロマン・オレクシフ君(9)が卓球に熱中していた。顔は着圧マスクで覆われ、手足には皮膚移植の痕が残る。リハビリのために始めた卓球は、父ヤロスラフさん(40)と互角の戦いを繰り広げる腕前になった。「命さえ助かる保証はないと言われたのに、奇跡だ」。ヤロスラフさんは目を細めた。
2022年7月14日の昼。ウクライナ中部ビンニツァの病院に露軍のミサイルが直撃した。診察を待っていた母ハリナさん(当時29歳)は死亡した。ロマン君は救出され一命を取り留めた。