
海の近くで海洋プラスチックごみ問題に取り組む拠点をつくりたい、その思いをつなげたのは「さかさま不動産」だった――。
貸したい物件を借り手に紹介するのが普通の不動産屋だが、インターネットのマッチングサイト「さかさま不動産」には、何かをやりたい人の思いや夢が並び、それに賛同する空き家や空き店舗のオーナーを探す。だから「さかさま」だ。写真と文 池谷美帆 2022年5月30日公開
三重県鳥羽市で海洋プラの再資源化に取り組む「REMARE」の間瀬雅介さんの作業場は、もともと、水産加工会社の空き倉庫。独特な色合いのランプシェードやテーブルなど、海洋プラを再利用したアート作品が創られている(三重県鳥羽市で)
ランプシェードを手にする間瀬さん。海洋プラごみの問題に直面する漁師のそば、原料を集めやすい海のそばで活動したいと、2020年、さかさま不動産に相談し、この場所に巡り合った(三重県鳥羽市で)
浜辺に流れ着いた海洋プラごみを拾う間瀬さん(右)ら。倉庫の家主の石川隆将さん(中央)は、話を聞き、「すぐに使って欲しい」と即決。活動が軌道に乗るまではと、しばらく賃料もいらないと言った(三重県鳥羽市で)
石川さんと間瀬さんをつないだのは、地元に顔の利く漁業従事者の浅尾大輔さん(右)。「(間瀬さんに)ここに来いよと呼んだからには責任がある」と、地域に溶け込めるようサポートしながら応援する(三重県鳥羽市で)
集めた海洋プラごみ。ペットボトルなどの他、流された漁具も多い。元航海士の間瀬さんは、航海中に海に漂うプラごみの多さに驚いたという(三重県鳥羽市で)
プラごみを粉砕するなどして、ボード状に加工する。テーブルや時計など、様々な作品に生まれ変わる(三重県鳥羽市で)
「大輔さんなど漁業関係者とつながりを持たずに移住したら、こんなスピード感で地域に入り込めなかったと思う」と間瀬さん。地域に根ざしながら事業を拡大するため、奮闘している(三重県鳥羽市で)
さかさま不動産は、同県桑名市の企画会社「On―Co」(オンコ)が手がけるサービス。共同代表の水谷岳史さんは、10年ほど前から、空き家を有効利用してシェアハウスや飲食店などを運営。その中で、夢を実現したい同世代の若者らから、「空き家をどう探したらいいかわからない」と相談されたのをきっかけにこの仕組みを考えだした。「物件情報を公開はしたくないが、どういう人か知った上でなら貸したいと考える人がいた」と水谷さん。手数料などもかからない。スタートから約2年で駄菓子屋や本屋など14件の夢が実現した。埋もれた空き家が『夢』や『思い』で掘り起こされていく。
さかさま不動産を全国に広げようと、支局制度もスタート。4月には広島支局を開設し、空き家問題に関心を持つ地域の人たちが水谷さん(右)の説明を聞きに集まった(広島県東広島市で)
空き家は借りるコストも低く、”新しいことを始めたい人にとっての挑戦の場”と水谷さんは力を込める。空き家が埋まるだけでなく、地域が活性化されるようなプレーヤーが集まることを期待する(広島県東広島市で)
名古屋市の元バーだった空き店舗では、紅茶専門カフェ開業に向けて改修が進められた。「何をしたいか、商店街の人たちに理解してもらった上でスタートできるのは心強い」と借り主の青山祥さん(左)(名古屋市中村区で)
築約70年の空き店舗。現在改修は終わり、紅茶専門カフェ「Teapick」として生まれ変わった(名古屋市中村区で)
名古屋市の大門横丁の空き店舗で駄菓子屋を始めたあいざわけいこさん(左)。居酒屋などの木造長屋が並ぶ大門横丁は、休業中や空き店舗も多く、駄菓子屋ができるまで、昼間は閑散としていた(名古屋市中村区で)
この物件は契約が決まりかけていたが、さかさま不動産に掲載した思いが家主の気持ちを動かした(名古屋市中村区で)
子どもたちに囲まれるあいざわさん。「コロナ禍で失われた子どもたちの居場所を作りたかった。さかさま不動産と出会っていなかったら、こんなことやっていなかった」と笑顔を見せた(名古屋市中村区で)