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バスの運転士不足が深刻化するなか、高岡市は路線バス事業者と自動車学校の協力で、バス運転体験会を開催した。県内自治体では初めての取り組みだ。バス試乗に加え、移住と就職相談、芸能人のトークショーを組み合わせたプログラムが反響を呼び、県内外の１９～５９歳の７４人が応募した。（源一秀）
体験会は１１月９日、高岡自動車学校（高岡市蓮花寺）で実施された。市の募集に応じた７４人の希望者から、１４人（県内８人、県外６人）が選ばれた。
「まずは、タイヤの点検からいきますよ」
高岡市内などを運行する加越能バス（高岡市江尻）の運転士田島奈美さん（５１）が実際の路線バス車両を使用し、乗車前点検の段取りを説明。タイヤ、オイル、車内の各種スイッチと点検を進め、参加者はポイントをメモしながら、熱心に聞き入った。
運転体験では、参加者が教官と自動車学校のバスに乗り、約４５０メートルのコースを２周した。市内の女性（５４）は「車体が大きいので、ハンドルを切るタイミングや、停留所で正確な位置に停車するのが難しかった。でも、まあまあできたかな」と笑顔だった。
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試乗会のほか、高岡市への移住・就職についての相談会や、芸能人と運転士のトークショーも行われた。
移住相談では、市の地域おこし協力隊員で東京都日野市出身の和田庸さん（４３）と、水戸市出身の加藤木守さん（４３）が、食や住環境の魅力を紹介した。
トークショーには、「乃木坂４６」の元メンバーでタレントの佐々木琴子さんが招かれた。佐々木さんは田島さんに、仕事のやりがいなどを問いかけ、３年前までバスガイドだったという田島さんは、会社から誘われて運転士になったと明かして、会場をわかせた。
堺市から来た営業職の男性（３１）は「高岡移住も視野に、真剣にバス運転士を考えたい」と、興味津々の様子だった。
神奈川県のバス会社で事務員を務める横浜市の荻野善幸さん（１９）は「将来の選択肢の一つにしたい」と話した。
反響を受け、市総合交通課の山村紘次課長は「自治体の実施で安心感があったのと、移住、就職相談を組み合わせたことがよかったのでは。今後も継続したい」と手応えを感じていた。
運転士充足率８５％ 人手不足苦しい現場
高岡市内などで４４系統の路線バスを運行する加越能バスの担当者に尋ねると、人手不足にあえぐ現場の苦悩が浮かび上がる。
「路線、高速、貸し切りバス合わせて８４人の運転士が必要だが、６７人で回している」
そう話すのは、同社自動車部の林裕一副部長だ。「路線バスを止めるわけにはいかない」と、貸し切り業務を断って路線に回している状態だという。
外部業者に委託してスカウトメールを送ったり、ハローワークで求人したりしているが、なかなか採用に結びつかない。
公益社団法人「県バス協会」の統計によると、県内のバス運転士の充足率は約８５％だ。加入２５社への調査（１０月１日現在）では、県内の運行車両は６０１台で、必要運転士数は７０２人だが、実際は１０４人不足している。
県内の大型２種免許保有者は２０１５年末に７４９３人いたが、２４年末には５６６７人まで減った。同社はかつて大型２種免許保有者を採用していたが、１０年ほど前からは４５万円程度の取得費用の補助制度を設け、応募時点で免許を必須としなくなった。
業務の性質上、拘束時間は長くなりがちで、同社では１１時間半。「実働は８時間を切り、休み休み仕事できるのだが、きついと感じる人が多いようだ」
高岡市との体験会について林副部長は「単独での実施は難しい。今後も行政と協調して実施できれば」と期待している。
