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仏ノートルダム大聖堂のオルガン奏者デュボワが火災逃れた名器で新録音…「伝統の響きを楽しんで」 

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「多くの偉大な作品に自らを投影できるのが、オルガニストの妙味です」と語る
「多くの偉大な作品に自らを投影できるのが、オルガニストの妙味です」と語る

 パリのノートルダム大聖堂の大火災から6年。奇跡的に難を逃れた歴史的名器のパイプオルガンによる新録音が話題を呼んでいる。夏に来日した演奏者のバンサン・デュボワ(45)に復活までの話を聞いた。(松本良一)

「ヴァンサン・デュボワ/永遠のノートルダム」(ワーナー)
「ヴァンサン・デュボワ/永遠のノートルダム」(ワーナー)

 仏ブルターニュ出身のデュボワは2016年、ノートルダム大聖堂のオルガニストの一人に就任した。「計4人で毎週ミサを担当していますが、あの火災は悪夢でした。現場中継のテレビの前で『ああ、すべてが終わった』と思った」と振り返る。

 大聖堂のオルガンの歴史は1403年にさかのぼる。19世紀には当時の著名なオルガン製作者カバイエコルが手を入れ、現在の姿となった。約8000本のパイプを持つ壮麗なオルガンは焼失の危険にさらされたが、「天井の高さが幸いして火災による高熱にさらされず、消火による放水などの影響もほとんどなかった」と話す。

 5年かけて徹底的な清掃と調整を施されたオルガンは24年末にお披露目された後、今年2月に記念の録音が行われ、「永遠のノートルダム」(ワーナー)としてCD化された。「クリーニングでほこりなどが払われたせいか、高音がよりクリアで明るくなりました」

 CDに収められたのはバッハとラベルの編曲などのほか、大聖堂ゆかりのオルガニストだったビドールやフランク、ビエルヌなどの作品だ。「由緒ある楽器にはフランスのオルガン音楽の伝統を踏まえた曲がふさわしい。フルートの音色を模した大聖堂のオルガンの特徴的な響きを楽しんでほしい」と語る。

 そもそもオルガンは1台ごとに異なる音を持ち、設置場所の残響によっても異なる表情を見せる。オルガニストは作品に関する膨大な知識や演奏技法に加え、それぞれの楽器の特性に瞬時に適応しなければならない。「カメレオンみたいな存在なんです」

 そして、こう付け加えた。「一番重要なことは、この楽器からリリカルな表現を生み出すことです」

 巨大なメカを操るオルガニストは、職人と芸術家という二つの顔を併せ持つのだ。

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