参院選で議席を増やした参政党の主張には、この国に暮らす多様な人々の人権や尊厳を軽んじているとの懸念を禁じ得ない。国と地方の議会に相当数の議員を有する公党である。人権を重視した政策に見直すよう求める。
参政党は参院の議席を改選前の2から15に増やした。政権批判票の受け皿になったのは確かだが、参政党に投票した有権者が同党のすべての主張を支持したわけではないだろう。
外国人に対する規制強化は根拠が曖昧な上、外国人の生活を脅かす。選択的夫婦別姓や同性婚の否定は、女性や性的少数者(LGBTQ)ら抑圧された人たちの人権への配慮を欠く。高齢者ら終末期延命治療の全額自己負担化は命の切り捨てにつながりかねない。
参政党が公表している憲法草案は、主権は国家が持つとされ、国民主権に関する記述は見当たらない。天皇は元首と位置付けられ、法律や条約、首相らの人事を一度は拒否できるとしている。
国民の要件として「日本を大切にする心」が求められ、国防の努力義務も課される一方、国民の基本的人権の規定は抜け落ち、法の下の平等、思想の自由、信教の自由、表現の自由、労働者の権利なども明文化されていない。
戦争に至り多くの国民に犠牲を強いた戦前戦中の国家主義への回帰が著しいだけでなく、政治権力を制限し、個人の権利を保障する憲法の役割からも外れる。
神谷宗幣代表は「あくまで議論のたたき台」と釈明するが、その段階の内容を党の草案として公表し、参院選でも訴えたことは無責任のそしりを免れまい。
そもそも国会議員は現行憲法を尊重し、擁護する義務を負う。憲法が保障する基本的人権を損ねるような立法は認められない、とあらためて指摘しておきたい。
今年は戦後80年の節目だ。神谷氏は著書などで、アジア太平洋戦争が日本の侵略だったことを否定する歴史認識を公言しているが、負の歴史も認めなければ、内外の戦争犠牲者や被害者、国際社会の理解は得られまい。
メディア対応にも懸念を抱く。参政党は22日、国会内の記者会見で神奈川新聞の記者を排除した。到底容認できない。公党として、国民の知る権利に応える役割を重んじ、党に批判的なメディアにも開かれた組織であるべきだ。
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