以前、勤めていた会社の上司なのですが、「なんか惜しい!」と、思っていました。
上司は誰もが知る進学校から、難関の理科系国立大学を出てます。
わたしが新入社員のときの課長であり、異動してからも何かと縁が深く、家におじゃましたこともあります。
多くの方から好かれるような親しみやすい性格なのですが、難点がありました。
それは「酒を飲むと泥酔してしまう」ことです。
「ちょっと、飲もうか!?」と、言って、居酒屋に入ると、酒が止まらなくなります。二軒目、三軒目と練り歩き、午前様になることも珍しくありませんでした。
まだまだ酔っちゃないだろう
レモンスライスがしみるなんて
何だか みょうに気がきくネ
俺の冗談がおかしいのかい
飲みほしてしまおう
テレ臭さなんて
夜はまだまだ続くんだぜ
今夜 今夜 店ごと
グイとひと息に飲んじまえ
~「三軒目の店ごと(吉田拓郎)」
ある日、出勤すると、上司は暗い顔をして座ってました。
わたしはカバンから、ノートパソコンを取り出して、仕事をはじめるも、上司は携帯をいじったままで、仕事に入る気配がありません。
何かあったんですか!?
うん、昨日、電車にパソコンを置き忘れてな・・・
上司は酒を飲んだあと、終電間際の電車の網棚にノートパソコンを入れた鞄を置き忘れたようなのです。
上司は朝から駅の事務室に紛失した鞄が届いてないかを問い合わせてました。
いい上司なのですが、「なんか惜しい!」と、思うのはこのことです。
ノートパソコンは、1989年に出た東芝の「Dynabook」が世界初と言われてます。一気に普及したのは、90年代の終わりころです。その頃になると、IT業界で働く人であれば、ノートパソコンを鞄に入れて持ち歩くのが当たり前になりました。
当時のITエンジニアのアタマのなかには、「働き方改革」という言葉はありません。
会社でも家でも、時間があれば仕事をするのが普通です。自宅でも会社の仕事を持ち帰り、ノートパソコンをインターネットにつなげて、ドキュメントを送信してました。
インターネットの通信の主流はISDNです。これは、電話線の情報をデジタル化することで、一回線で2つの電話番号が持てる規格です。回線速度は64Kbpsです。今では考えられないのですが、インターネットはダイアルアップ接続ですので、インターネットをすると、電話代がかかる仕組みです。
ノートパソコンの持ち歩きが一般化したことで、問題になったのが鞄です。
サラリーマンの鞄というと、かっての主流は「持ち手」の皮カバンです。
わたしが長年愛用してたこの鞄は、肩にかけるための取っ手もあります。ただ、鞄を肩にかけるという発想は、ダサいというのが、昭和世代の感覚でした。
しかし「持ち手」タイプの皮カバンに、ノートパソコンを入れて通勤するのは、かなりの苦です。ノートパソコンは軽量化、小型化がトレンドでしたが、そうは言っても、通勤ラッシュのなかで、パソコンを入れた鞄を手に持ち続けるのは、やはりしんどいです。
当時、鞄は電車の網棚に載せるのが一般的でした。
そこで通勤時に「鞄の持ち忘れ」をすることが、情報セキュリティインシデントになります。
ノートパソコンのなかには、機密情報が詰まってます。
持ち忘れという最悪の事故を少しでも軽減するべく、パソコンにログインする際に強固なパスワードを設定しておくことは必須でしょう。
また、データの暗号化も重要な対策です。
WindowsパソコンにはBitLocker(ビットロッカー)という暗号化機能が標準で備わってます。
BitLockerは、Windowsのコントロールパネルの配下にある「システムとセキュリティ」→「BitLocker ドライブ暗号化」へとナビゲーションすることで設定できます。
下図の「BitLockerを有効にする」をクリックすると、「回復キーのバックアップ方法を指定してください。」と表示されます。そこで、任意のバックアップ方法を指定します。
より望ましいのは、リモートワイプツールを採用して、パソコンのデータを遠隔操作によって、システム管理者が消去できるようにすることです。ただ、これは「持ち忘れパソコン」に電源が入り、ネットワークにつながっていることが前提です。
ですので「強固なパスワード+データの暗号化」が、パソコンを持ち忘れた場合にとっておくべき有効な対策と言えそうです。
しかし、本質的に重要なのは「パソコンを入れた鞄を電車の網棚に載せない」ことでしょう。
いまは「持ち手」タイプの鞄を使うビジネスマンが激減しました。多くのビジネスマンは、リュックサックタイプか、肩掛けタイプのトートバッグをつかってます。
これらの鞄は、網棚に載せる必要がありません。
いまは、満員電車でも網棚は空いてます。
リュックやトートが増えたのは、スマホの普及が影響してます。車内でスマホを操作するための両手が必要になったので、手持ちカバンは邪魔です。
時代とともに、昭和世代のビジネスマンが抱いていた「鞄を肩にかけるのはダサい」発想は無くなりました。
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