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訳書『デザイニング・インターフェース』について

2012年6月に実施した『デザイニング・インターフェース』読書会資料(http://www.slideshare.net/noriyo/on-designinginterfaces)へのアクセスが現在でも多いため、その過去のイベントに依存した記述を削除/修正して、書籍紹介のプレゼンテーションとしてご覧いただけるようにしました。Facebookページの以下のお知らせもあわせてご覧ください。https://www.facebook.com/iaspectrum/posts/588575471256557

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On“Designing Interfaces”2014-06-15Noriyo Asanonoriyo@iaspectrum.net
UX ?
「ユーザーエクスペリエンス(UX)」という⾔言葉葉を近頃よく⾒見見聞きするようになりました。UXといわゆる普通の“体験”との違いとは何でしょうか。それは、UXには利利⽤用する対象があるという点です。つまりそこには、何らかのツール/システム/テクノロジーが必ず介在するのです。たとえば…⾳音楽を聴くという⾏行行為について考えてみましょう。
⾳音楽を聴くという⾏行行為はもともと「U」が付かない「X」、純粋な「体験」であると思います。何か⾳音楽を聴きながら、「私は今、その曲を利利⽤用している」とか「私は⾳音楽ユーザーである」などと思うことは、あまりないですよね。
昔々、すべての⾳音楽は「⽣生演奏されるもの」でした。つまり、⾳音楽という形のないものを記録・再⽣生できる媒体ー  レコード盤、磁気テープ、CD、MD  などなど  ―が発明され、録⾳音技術というものが⽣生まれる前の時代のことです。⽣生演奏しかない時代にはすべての⾳音楽体験は「X」であった。しかし、録⾳音技術が⽣生まれたことによりそのテクノロジーを利利⽤用するという「UX」が⾳音楽体験の中に含まれるようになった。
たとえば、今では⾳音楽を聴くという「X」の中に、Amazonで掘り出し物のCDを⾒見見つけるiTunesでせっせとプレイリストを作る⾼高級ヘッドフォンで昔の⾳音源を聴き直すそういうさまざまな「UX」が関わっています。その時、⾳音楽を体験する⾃自分は、AmazonというWebサービスのユーザーiTunesというソフトウェアのユーザーヘッドフォンというハードウェアのユーザーでもあるのです。
このように「UX」とはさまざまな技術の誕⽣生と進化の中で「U」なしの、よりプリミティブな「X」の中に現れ、時の流流れと共にその構成要素として不不可⽋欠となりつつあるもの。私はそんな⾵風に捉えています。さて、近頃では…こんな⾔言葉葉もいっぱい⽬目につきます。
UI ?
私たちは⽇日本語の「技術」ということばを⼆二通りの意味で使うことがあります。「○○社が開発した  技術(Technology)は凄いね」「このツールを使いこなすにはそれなりの技術(Technical ability)が要るね」
技術を扱う私たちUI設計者は、常にTechnologyを意識識していますがTechnical Abilityの問題にはなかなか⼿手出しできません。「技能」を向上させる啓発活動や教育といった領領域にまでUI設計者が踏み込むことは⾮非常に難しいのが現実であるからです。
Technologyでも、この両者が歩み寄ってこそユーザーインターフェースはその真価を発揮するのです。Technical abilityテクノロジーを追求するだけでなくユーザーの技能を引き出すこと。それが、UI設計者に求められるのではないでしょうか。
ユーザーの技能を理理解するために⾏行行動経済学の「⼆二重プロセスモデル」を⾒見見てみましょう。⼈人間は何かを判断する時、実は2段階の処理理をしているという考え⽅方です。システム1(直感)による判断が正しいか?システム2(推論論)による判断がそのエラーを正せるか?正解! 不不正解…YesYesNoNo問題
ユーザーの技能は、技術的なスキルだけでなくこのような判断能⼒力力によっても⼤大きく左右されます。操作のたびにいちいちシステム2の処理理を経由させられるUIはたとえスキルの⾼高いユーザーでも使いにくいものになってしまいます。ユーザーの技能を⾼高めるにはシステム1のエラー発⽣生率率率をできるだけ抑えたい。つまり、素早く反射的に、難しく考えずに操作できるようないわゆる“透明なインターフェース”を作ることが重要になります。システム1(直感) システム2(推論論)速い並列列に処理理無意識識的・⾃自動的努⼒力力は要らない連想に基づく遅い順番に処理理管理理されている努⼒力力を要する規則に基づく
QWAN
そのようなUI設計を⾏行行う上で役⽴立立つのが書籍『デザイニング・インターフェース』で⽰示されているUIのデザインパターンです。多くの⼈人にとっての使いやすさ・使い⼼心地のよさといったものには何かしら根源的な共通の要素を⾒見見出すことができます。建築家クリストファー・アレグザンダーはそれを無名の質  /  QWANQuality Without A Nameと名付けました。
無名の質(QWAN)AliveいきいきとしたWhole全⼀一的なComfortable⼼心地よいFree⾃自由なExact正確なEgoless無我のEternal永遠の無名の質は本来ことばでは表せないものだがそこには7つの特性を⾒見見出すことができる。それを実現し、かつ再現可能にするのが、パターン⾔言語である。アレグザンダーは、そう考えました。
デザインパターンは、いわば単語のようなものです。誰かとコミュニケーションする時にわずか⼀一つの単語で何かを伝えるのが難しいのと同じで、個々のデザインパターンも単独で存⽴立立するものではありません。単語が集まって⽂文章になるようにどのパターンも互いに組み合わせてこそその真価を発揮するのです。あなたが作りたいUIを実現できそうなパターンを集め、それらをうまく組み合わせて形にすること。それは、あなた⾃自⾝身のパターン⾔言語を⽣生み出すということです。そのような⼯工程を経て実体化されたUIにはきっといくばくかの「無名の質」が備わっているはずです。
「無名の質」を備えたUIは、それ⾃自体が絶賛の的になることはないかもしれません。でも、それでよいのではないでしょうか。UIを操作すること⾃自体がUXの核⼼心である。そんなケースは、ごく限られているはずです。ある体験の中に何らかのUXが関わっているとしてさらにそのUXの中で利利⽤用されるUIの役割とは、本来の体験における⽬目的の達成を決して邪魔することなくいわば“⿊黒⼦子”のように助けること。そんな⾵風に⾔言ってもよいかもしれません。
パターンを知り、活⽤用することは、“ワンパターン”なUIをデザインすることとは違うのです。さまざまなパターンを学ぶことであなた⾃自⾝身のパターン⾔言語を作り上げる⼒力力を⾝身につけること。それが、私たちのUIデザインをより豊かに、実り多きものにしてくれると、私は考えます。
Thank you.I hope you enjoy designing interfaces.Jenifer Tidwell 著 / 浅野  紀予  訳『デザイニング・インターフェース(第2版)― パターンによる実践的インタラクションデザイン』http://www.amazon.co.jp/dp/4873115310/

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