ワールドシリーズ第2戦で完投勝利を挙げ、捕手スミスと抱き合うドジャースの山本由伸=トロント(共同) ワールドシリーズ第2戦(ブルージェイズ1-5ドジャース、1勝1敗、25日、トロント)山本がドジャースに大きな1勝をもたらした。前回(ブルワーズとのリーグ優勝決定シリーズで1失点完投)は真っすぐが主体で、この試合は立ち上がりからスプリットとカーブを多投した。ブルージェイズは第1戦で、14安打11得点と打線が爆発。序盤に勢いを止める必要がある。そのために、初球から勝負球を連投してきた。
一回にいきなり連打で無死一、三塁のピンチを招いたが、クリーンアップから2三振を奪って無失点。二、三回も先頭打者を出塁させたものの、同点止まりでしのいだことが大きい。
本拠地で燃え盛る相手の炎を消したのは、気持ちの強さと制球力、そして研究心だ。打者一人一人に対して、投球の組み立てが、しっかりできている。第1戦で大事を取って途中交代した主砲ビシェットが七回2死から代打で出てきた際は、投手コーチがわざわざマウンドへ行った。対策を徹底したのだろう。強力打線の勢いを止めると、丁寧にコーナーを突きながら攻めの投球。四回以降はひとりの走者も出さなかった。
六回までは投手戦。ブルージェイズのガウスマンは改めていい投手だと思った。武器であるスプリットの落差が大きく、ドジャース打線は二回から5イニング連続で三者凡退。七回1死からスミスに勝ち越し本塁打を許した内角球は失投ではなく、スミスがうまく打った。3点目となるマンシーの一発は、きた球に反応したら逆方向へ飛んでいったもので、〝打者あるある〟だ。その右腕に投げ勝ち、105球で完投した山本は、すごいの一言に尽きる。
大谷は八回の打席で安打が出た。第1打席の左飛を含め、状態は悪くない。相手バッテリーは内角を見せて外に落とす攻めを徹底し、大谷封じへの必死さがうかがえた。
数字上は1勝1敗ながら、本拠地へ戻るドジャースは1・5勝分に感じられる。それをもたらしたのは、2001年のシリング(ダイヤモンドバックス)、ドジャースの投手では1988年のハーシュハイザー以来となるポストシーズン2試合連続完投勝利を挙げた山本だ。大谷に続き、メジャーの歴史に名を刻んだといえるだろう。次は佐々木の番だ。(サンケイスポーツ専属評論家)