米大リーグ、エンゼルスの大谷翔平投手(26)が投打に渡る活躍で、全米から大注目を浴びている。
記者は大谷と面識はないが、1度だけ意図せず接近し、驚かされたことがある。2016年7月16日のこと。同15日にヤフオクドーム(現ペイペイドーム)での球宴第1戦の取材を終え、福岡空港発の航空便に搭乗。出発を待っていたところ、視界の右端に大きな影が。上部の収納棚に荷物をしまっていたのは日本ハム時代の大谷だった。
そして大谷は193センチ、95キロの体を折りたたむように私の右隣のエコノミー席に座った。足は長く、ひざが前の座席に当たっている。体も大きいので〝共有肘掛け〟部分にもスターの左腕は進出してきていた。
機体が動き始め、ほどなくして大谷は眠りについた。私も普段は移動時間は睡眠に充てるのだが、熟睡して右隣に寄っかかってしまっては申し訳ない。到着地まで起きていることにした。
そして約1時間半後、まもなく羽田空港というときに、大谷のすごさを目撃したのだ。「当機はあと5分ほどで着陸体勢に入ります」のアナウンスで目覚めた怪物は、おもむろに搭乗前に購入していた弁当をテーブルに置き、開封した。
「今から⁈ もうすぐテーブルもしまわないといけないのに…」
私の心配をよそに大谷は弁当(「丼もの」だったと記憶)を数口で完食。時間にして2分程度か。驚いたのはそのスピードだけではなく、少なくとも私なら、大谷と同じタイミングで目覚めていたら、そこから弁当を食べようと思わない。寝ちゃってタイミングを逸したので、飛行機を降りてから食べるだろう。大谷の慌てない、動じない姿に大物感を見た気がしたのだ。
もう一つ気になったのは、着陸後、大谷はスマホを右手で持ち、左手で画面をタップ、スワイプしていた。同じ右利きの私は逆だ。勝手な憶測だが、大谷は右手の指先の感覚を大事にするために、左手で操作していたのではないかと感じた。それくらい日々の生活に高い意識を持っていても不思議ではないからだ。
ちなみに、その移動便で左隣は日本ハム時代の有原(レンジャーズ)だった。後のメジャーリーガーに挟まれての移動。忘れられない2時間の旅だった。(湯浅大)