■5月11日
舞台に姿を見せただけで客席がなごむ。笑いが広がる。そんな喜劇俳優のベテランが急死した。お笑いトリオ「レツゴー三匹」の逢坂じゅんさんだ。昭和の漫才ブームを引っ張り、最近はドラマでも活躍した。
前回のNHK連続テレビ小説「ごちそうさん」にも、うどん屋台の店主役で出演したので、ご記憶の方も多いだろう。そのうどんで女優、杏演じるヒロインが昆布だしのまろやかさを知り、大阪の味に目覚める重要な役どころ。人の良さそうな雰囲気で、それこそ、うどんに負けないいい味を出していた。
小欄も以前、演歌歌手、川中美幸の舞台で、名作ドラマ「君の名は」のパロディーを演じるじゅんさんを見たことがある。川中とのとぼけたやり取りが絶妙で、客席も大爆笑。当時は即興と思っていたが、何度も共演した川中の話によると「台本通り、きちんとこなす役者さんでした」という。
中学時代から俳優志望とあって、自然体の演技が印象的だった。8月に大阪・新歌舞伎座の舞台で共演するはずだった女優、川上麻衣子は「先月23日に電話したばかり。じゅんさんは心臓を悪くしたことがあるのですが、『最近は調子いい』と明るい声で話していたのに…」と早過ぎる死を惜しんだ。
ところで、「レツゴー三匹」と言えば1979年、ハイジャックされた日航機に3人が乗り合わせ、客席から犯人の逮捕された操縦室に駆けつけたが、恐怖心から犯人のズボンを踏んづけただけだったという話は有名だ。そのときのゆるい会見も笑いを誘った。着ぐるみのゆるキャラ全盛だが、じゅんさん亡き後も、昭和のとぼけた味を出せる本物には多方面で活躍してほしいものだ。 (森岡真一郎)