クマを撃つことに執念を燃やす31歳の兼業猟師、小坂チアキは以前はクマが人を怖がった理由として、オジから聞いた話を紹介する。昔の銃は今ほど強力ではなかったため、弾が当たった瀕死(ひんし)のクマがよく山を歩き回った。「それを見て周りのクマや他の動物が人間を恐れるようになっていた」
▼北海道を舞台にした命がけの狩猟劇を描いた漫画『クマ撃ちの女』(安島薮太著)16巻の一コマである。ところが現在は、狩猟においても道徳的に残虐な行為を働かないように定める法律が整備されるなどクマも保護されている。チアキは続ける。「なめられているんですよ今は」
▼今年は京都市の住宅街でも目撃情報があるほど各地でクマが出没し、人身被害が過去最多となった。背景にはチアキの指摘だけでなく、クマの生息数増加とクマが食べるドングリの不作など、さまざまな原因があろう。ただ、人を襲ったクマを駆除した自治体に「クマを殺すな」と抗議が殺到する現状は、やはり本末転倒である。
