衆参両院で21日行われた首相指名選挙で、自民党の高市早苗総裁が首相に選出された。衆院では僅差で過半数を得たものの、参院では1回目の投票で指名を決められず、決選投票までもつれ込んだ。首相は日本維新の会を新たな連立パートナーとして安定政権を目指すが、初日から少数与党の現実を突き付けられた。
参院は過半数に1票届かず
首相指名選挙を前に、国会内で開かれた自民両院議員総会。首相は与党が衆参で過半数に満たない現状に触れ、「有権者から衆参ともに比較第一党、この数を与えられている。その責任を重く受け止め、必ずや政治を前に進めていかなければならない」と訴えた。
衆院の指名選挙で、首相は自民と維新、さらに無所属議員が加わったことで過半数233を上回る237票を獲得。僅差ながら決選投票を経ずに首相に指名された。
ただ、参院では少数与党の厳しい現実に直面した。1回目の投票では、与党の計119(自民100、維新19)に4票積み増して123票を得たものの、過半数124に1票届かなかった。
決選では立憲民主党の野田佳彦代表を抑えて指名を得たが、得票は首相125、野田氏46、無効票・白票が計75。首相が初回から積み増した2票のうち1票は国民民主党の新人議員が誤って投票したとみられ、実質は過半数ギリギリだった。
「多数派工作、衆院よりきつい」
「首相指名選挙の票数が、これからの国会運営の基礎票になる」。自民ベテランはそう語り、辛うじて首相指名にこぎつけた結果を深刻に受け止めている。立民幹部は「首相は思ったよりも票を積み増せなかった。これから大変だろうな」とほくそ笑んだ。
新政権も無所属や一部野党の協力を得なければ過半数確保はおぼつかない。しかし、その野党には自維が目指す衆院定数1割削減などに反発が広がる。先日まで連立パートナーだった公明党の斉藤鉄夫代表も「特定の政党間だけで決めるのは極めて乱暴だ」と、さっそく批判を強めている。
与党となった維新幹部も「衆院と違って参院は3年に1回しか選挙が行われない。参院の多数派工作は衆院よりもきつい」と漏らす。常に突きつけられる「数合わせ」に答えを出さなければ、首相は前に進めない。(千田恒弥)




