群馬県草津町の黒岩信忠町長(78)に町長室でわいせつ行為を受けたと、嘘の告訴をしたなどとして虚偽告訴と名誉毀損(きそん)の罪に問われた元町議、新井祥子被告(56)に前橋地裁は29日、懲役2年、執行猶予5年(求刑懲役2年)の判決を言い渡した。判決を受け、県庁で記者会見した黒岩町長は「こちらの主張は、ほぼすべて認められた。でたらめな電子書籍が世界に出回って6年、われながら、よく戦ってきたと思う」と振り返った。
世界で名誉傷つけられた
起訴状などによると、新井被告は令和元年11月、著者と共謀し「町長と肉体関係を持った」などと記載した電子書籍を配信し、町長の名誉を傷つけたとしている。3年12月には町長室で町長から強制わいせつの被害を受けたと虚偽の告訴状を前橋地検へ提出した。
黒岩町長は「公務中に町長室で、そのような行為を行うはずもない。1%の非もないのに『レイプ犯』の烙印(らくいん)と戦い続けた」。特に許せなかったのは、観光地として著名な草津町が「レイプの町」「セカンドレイプの町」として「世界中に広まったこと。それは絶対に食い止めたかった」。
夢を売る場所にデモ隊や街宣車、爆破予告も
町民や町議会はじめ地元関係者は理解してくれたものの、中央の学会、政界やフェミニスト団体、さらに欧米の左派系メディアなどからは「草津町=レイプ許容の観光地」とのレッテル貼りが進んだ。町内では、そうした批判を背に外部からのデモ隊や街宣車、さらに爆破予告などもあり、治安面での対応も迫られた。
「草津温泉のような観光地は夢を売る場所。そこにこのようなレッテルを貼られることが、どれほどの屈辱か。それが6年間戦ったエネルギーとなった」。その後、町長室での面談場面で被告が録音していた音声データから、わいせつ行為は一切認められないことが判明すると、一部の学会や団体代表から謝罪が寄せられるようになったという。
元町議から謝罪なし
「ドイツの知人から『大丈夫か?』と連絡を受けたこともあり、ネットや交流サイト(SNS)の威力を思い知らされた。世界に広まった言説のひとつひとつに反論することは不可能。民事と刑事の裁判の結論が出た今、明らかになった事実が世界中に行き渡っていくことを静かに見守っていきたい」と語った。
新井被告からは、謝罪などの連絡はないという。




