日本学術会議の在り方を巡り、政府は有識者懇談会を設置し、議論を始めた。
求められる機能とそれにふさわしい組織形態を検討する。現行の「国の特別機関」という位置付けから民間法人に移行する案も俎上(そじょう)に載せる。
政府は問題点を整理した上で、毅然(きぜん)とした態度で速やかに改革を進めてほしい。
それにしても、東京電力福島第1原発の処理水の海洋放出について、学術会議が提言や見解を出していないのはどうしたことか。
処理水は科学的根拠に基づく安全な方法で放出されている。国際原子力機関(IAEA)は報告書で、「国際的な安全基準に合致する」と結論付けた。
これに対し、中国は処理水に「核汚染水」とのレッテルを貼り、科学を無視して「海洋環境の安全と人類の生命、健康にかかわる重大問題」と批判している。事実と異なるプロパガンダに、漁業者らは風評被害に悩まされ、日本の国益は侵害されている。
この深刻な事態に対応せずして、国民のための組織といえるのか。かつて学術会議は「東日本大震災復興支援委員会」を設置し、原子力災害に伴う農産物の風評問題に関する提言を行った。処理水についても科学に基づく発信を行うべきだ。
学術会議法は「科学が文化国家の基礎であるという確信に立って、わが国の平和的復興、人類社会の福祉に貢献」することが使命だとしている。使命を果たしているとは言い難い。
軍事忌避の体質も問題である。昭和25年と42年に「戦争を目的とする科学の研究は絶対に行わない」とする声明をまとめ、平成29年に声明継承を宣言している。これらは防衛力の充実に関する研究まで阻む要因となってきた。
政府は学術会議の見直しに向け、第三者による「選考諮問委員会」を新設し、会員選考に関与させる同法改正案を、先の通常国会に提出する方針だった。学術会議側が「独立性が損なわれる」と反発したため、提出を見送った。
学術会議の運営は国民の税金で賄われている。国防に後ろ向きで、国民のために働かない組織を税金で養う必要はあるのか。現状を改める気がないなら、民営化するしかない。





