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産経新聞:産経ニュース
      フリーライターの松沢直樹氏
      フリーライターの松沢直樹氏

      最近、赤地に白い十字とハートを描いた「ヘルプマーク」をよく見かけるようになった。目に見えない障害や疾患などで助けが必要なことを周知する目的だが、マークの定着に伴い、かえって福祉に立ちはだかる「壁」を感じる人もいる。福祉はどうあるべきなのか。

      一昨年、私は障害者になった。双極性障害という他の人には見えない疾患と向き合いながら日々を過ごしている。自分の体の変化を一言で表せば、「短時間で電池が切れてしまう年代物のスマートフォン」になったような状態である。

      そのため、調子が良いときでも3時間程度しか働くことができない。また、外出時も突然発作に襲われることがあり、処方薬の持参はもちろん、落ち着くまでベンチなどに座って休憩しなければならない。

      困ったことに、私は一般的な同年代の男性より体格が良い。したがって、電車内の優先席利用がはばかられる。ゆえに、外出時は「ヘルプマーク」を着けるようになり、電車などの交通機関利用時に、配慮してくださる人と出会う機会が増えた。

      懸念される「悪用」

      ただ、ヘルプマークは全国共通ではなく、東京都の調査によれば、令和2年5月末時点で熊本、大分、鹿児島の3県は導入されていない。また、配布方法についても、まちまちだ。長野県、宮城県富谷市などは郵送を受け付けているが、大多数の自治体は手渡しでの配布となっている。

      さらに配布場所も一律ではない。東京都は、都営交通の駅や営業所などで配布されているが、大多数は自治体の役所窓口だ。そのため、情報も錯綜(さくそう)し、外出困難な障害者にとってヘルプマークの入手が困難となっている。

      加えて問題なのは、ヘルプマークの受け取りに法的な拘束力がないことだ。一部の自治体では配布の際に障害などの状態を確認しているが、原則として障害者手帳を交付されていないと受け取れないなどといった規制はない。そのため、悪用を懸念する声も耳にする。

      実際に一時期、フリーマーケットサイトなどでヘルプマークが転売されているケースが確認されていた。さすがに批判が集まったためか、最近は目にしなくなったが、転売以外にも悪用されるケースが生じないか、利用当事者としては心配である。

      ヘルプマークの利用当事者として、もう一つ心配なのは犯罪被害だ。そもそも、ヘルプマークは目に見えない障害と共存しなければならない人に配慮され、生まれた。したがって、マークを着けていなければ、健康な人となんら見分けがつかない。

      だが、皮肉なことに、ヘルプマークを着けることによって、障害者であることが分かってしまう。つまり、「犯罪被害に遭っても抵抗できません」と公言しながら、街中を歩いているようなものだ。このため、ひったくりなどの盗難や女性に対しての性暴力、これらの被害が加速しないか非常に心配である。この点については、早急に対策を講じてほしいと思う。

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