英国で、同性愛者らLGBT(性的少数者)に対する暴行事件が多発している。同性愛者らへの偏見に基づくヘイトクライム(憎悪犯罪)はロンドンだけでも4年間で約1・5倍に増加した。近年、英政府はLGBTへの差別解消に向けた教育を進めているが、宗教上の理由などで認めない一部の市民は反発。今後、政府の方針への不満が犯罪を増加させる恐れも指摘されている。
(ロンドン 板東和正)
■バスの中で暴行
5月30日未明。英ロンドン北部の繁華街、カムデンタウン付近を走る深夜バスの2階で、同性愛の女性カップルが襲われる事件が発生した。
英BBC放送などによると、被害に遭った2人の女性は、ウルグアイ人のゲイモナトさん(28)と、恋人で米国人のクリスさん(29)。2人がバスの2階でキスをしていたところ、その様子を見ていた複数の10代の少年が嫌がらせを始めた。2人を「レズビアン」と呼び、キスを見せるよう要求。2人が断るとコインを投げつけ、顔を殴るなどの暴行を加えた。少年らはその後、警察に加重重傷暴行などの容疑で逮捕されたという。
事件後、ゲイモナトさんが、血まみれになった自身とクリスさんの写真を米交流サイト大手フェイスブック(FB)で投稿。鼻や額などから出血した2人の姿は瞬く間に拡散し、国内外で注目された。メイ英首相は事件を受けて「忌まわしい襲撃で、私の思いは被害を受けたカップルとともにある」と声明を発表。ジャビド内相もツイッターで「恐ろしい事件だ」と不快感をあらわにした。
■増加する被害
2人が自身の痛々しい写真を公開してまで被害を伝えたのは、LGBTに対するヘイトクライムの増加に危機感があるためだ。ゲイモナトさんは「(同性愛者などへの)暴力が常態化してしまっている」とした上で「だからこそ(事件の)衝撃を感じてもらうために、殴られて血まみれになった姿を見せることが必要だった」と訴えた。




