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産経新聞:産経ニュース

       今から36年前の1982年8月、アフリカ南部でひとりの老国王が息を引き取った。王の名はソブーザ2世。彼は自身が統治するスワジランド(今年4月にエスワティニに改名)になんと82年と254日も君臨してきた。正確な記録が残っているなかでは、世界史上最長の在位を誇る君主であった。

       彼は生後わずか4カ月で父のあとを受けて王位に即(つ)いた。その享年83。これまた当時の世界の君主のなかでは最年長だった。ソブーザの死を受けて、最年長の君主となったのは2歳年下の昭和天皇であった。

       一夫多妻制をとるエスワティニでは、ソブーザ2世には70人もの妃がいた。生まれた子供の数は実に210人にものぼったという。そのなかから王位継承者に選ばれたのは、当時14歳だったムスワティ3世。成人(18歳)に達するまでは生母が摂政を務め、86年4月に正式に国王に即位した。今度は世界最年少の君主の誕生となった。

       南アフリカ共和国に隣接するエスワティニは、日本でいえば四国より少し小さい領土を持つ。ソブーザ2世が4歳だった1903年からイギリスの保護領となり、彼自身が長年イギリスと交渉を続けた結果、68年に独立国となった。

       独立当初は「立憲君主制」をとっていたが、73年に国王は憲法を廃止し、議会も解散させられた。「絶対君主制」へと転換したのである。その後は、40の主要部族の長からなる評議会も形成されたが、国王自身の権限は強く残された。

       ムスワティ3世の時代になり、かつて父が解散した議会も復活した。首相や国家の要職を任免する権限も国王が持つが、評議会や首相(閣僚の任免)からの助言を受けている。その点では「立憲君主制」に再び近づいたかのようにも見える。

       石器時代(20万年前)から続く歴史と伝統を重んじる一方で、現代的な価値観も取り入れなければならないエスワティニとその国王の苦悩も並大抵ではないだろう。とはいえ、あまりにも民族的な伝統にしばられると、現代世界のなかで孤立も強いられることになる。

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