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日本経済新聞
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データセンター林立、千葉・印西
外資呼ぶ情報城下町

IN FOCUS



千葉県北部に位置する印西市。
東京のベッドタウンとして発展してきたファミリー層に人気のニュータウンエリアが、データセンター(DC)の一大集積地としてIT業界で存在感を高めている。





データ莫大 外資も動く

2019年には米グーグルが建設用地を取得。英コルト・データセンター・サービスも進出しており、外資系企業の動きも活発だ。主な計画は20年以降だけで少なくとも8件にのぼる。

データセンターの規模は最大受電容量の大きさで表現することが多いが、その合計は公表値で535メガワット。1年間のフル稼働を仮定すると一般家庭108万世帯の年間電気消費量に相当する。一般的に電力量が多いほどサーバーの数が増やせるため、取り扱えるデータ量の巨大さを物語る。



1

最大規模のDC、住宅地に



大和ハウスが建設を進めるデータセンターが新興住宅地の奥にそびえる(千葉県印西市)

大和ハウス、14棟を計画


住宅地の向こうに地上5階建てで窓のない、特異な風貌の「城」がそびえる。
大和ハウス工業が建設を進めるデータセンターだ。物流施設に注力してきた同社が大型DCを手掛けるのは初めてで、ここに最大14棟を予定。

延べ床面積は東京ドーム約7個分の33万平方メートルほどと国内最大規模だ。21年秋に1棟目が完成、運営事業者の豪エアトランクに引き渡した。30年の全施設完成の予定を数年前倒しし、建設を急ぐ。

点在する「巨大な箱」


市内を歩くと、直近の8件のほかにも箱のような建物が点在する。巨大なものだけで少なくとも5カ所で確認できた。
セキュリティー上の理由などからデータセンターであることを明示しないことも多く全体の把握は難しいが、住宅地と施設が共存する風景はここでは珍しくはない。



2

膨らむ需要 事業拡大



ランプが色鮮やかに光るMCデジタル・リアルティのデータセンターのサーバー室。国内外から需要は高く貸し出しペースは順調という

運用順調 拡張も視野 


ランプを色鮮やかに点灯させながらサーバーがうなりをあげる――。三菱商事と米デジタル・リアルティ・トラストの合弁会社、MCデジタル・リアルティ(東京・港)は21年9月、新たなデータセンターのサービスを開始した。

同社は大阪府の箕面、茨木エリアにもDCを構えるが、印西エリアの災害リスクの低さや都市圏へのアクセスの良さ、整備された通信インフラなど、大阪の立地と同様の条件が進出を後押しした。今後の需要増を見越し、既に拡張用の土地を確保。さらなる開発の余地を残す。

コロナ下、通信需要が急増


データセンターの需要は右肩上がりだ。新型コロナウイルス禍を受けた電子商取引(EC)などのオンライン経済の拡大や企業のデジタルトランスフォーメーション(DX)化、デジタルコンテンツの増加が拍車をかける。

19年に225万平方メートルだった国内DCの総延べ床面積は、25年に約1.5倍の350万平方メートルまで増えると調査会社のIDCジャパンは予測する。

3

電力インフラ、整備急ピッチ



大きな電力を消費するデータセンターの急増で課題となるのは電力供給量だ。東京電力パワーグリッドは、印西地区に現在の約3倍の供給を想定。新京葉変電所から千葉印西変電所をつなぐ全長約10キロの電力ケーブル用とう道の掘削を急ぐ。

9月から送電ケーブルの引き込みを順次開始し、24年3月の完成を目指して電力インフラを整える。



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4

なぜ印西? そろう条件



NECは今春、SCSKと合同で市内にデータセンターを開設する。同社が印西に進出するのは初めてで、作業が急ピッチで進められている。NECでクラウド事業などを担当する仲川賢次氏は「地盤の強固さや災害リスクの低さが魅力的」と話す。

SCSKとNECが準備を進めるデータセンターでは今春の開設に向け、サーバー室内の配線作業などが行われていた

地盤調査・解析サービスの地盤ネット(東京・新宿)は地盤や浸水リスク、揺れやすさなど5つの指標から、千葉ニュータウン地区を建物の建設に適した地域と分析する。

加えて同地区は都心や成田空港へのアクセスに優れる。茨城県北部や千葉県南房総にある海底ケーブルの陸揚げ地点にも比較的近く接続が容易で、海外とのデータ通信に有利だ。施設の増加に伴い電力インフラが整備され、それがさらに次の施設を呼ぶ循環も集積を加速させる。

印西市はデータセンターの誘致活動を行っていないが、様々な企業の進出は「活性化につながる」(市担当者)と期待する。

強固な地盤 低い水害リスク

国土地理院による数値データと地盤ネットが行った試験結果を踏まえ、同社の伊東洋一品質管理本部長は千葉ニュータウン地区を地盤の強固な地域であると分析する。約7万年から15万年前に形成された古くからの段丘層である下総台地上に位置するため水害リスクも低く、補強工事不要率は92%としている。
ほかにデータセンターが集積する大阪府箕面市の彩都エリアも地盤が固く、東京・多摩地域の一部は印西地区とほぼ同じ地層の特徴を持つという。

地盤ネットでは浸水リスク、揺れやすさ、土砂災害リスク、液状化リスク、地盤改良比率をそれぞれ評価し点数化する(東京都新宿区)



5

地方展開のモデルに



岸田文雄首相はデジタル田園都市国家構想を掲げ、関東と関西に集中するデータセンターの地方分散を促す。災害時の事業継続リスク対策のほか、施設の大規模化による用地需要の観点で地方都市に注目が集まる。

不動産サービス大手のシービーアールイー(CBRE、東京・千代田)は電力や通信環境、災害リスク、経済規模などから札幌市や福岡市を次の有力候補地に挙げる。同社の岩間有史アソシエイトディレクターは「印西に集積する理由、立地に必要な条件を分析し選定に生かすべきだ」と話し、得られた知見を地方展開に生かす重要性を指摘する。

データセンター、関東と関西に集中

調査会社の富士キメラ総研によれば、地方に拠点を構えるデータセンターはサーバールームの面積比で15%程度にとどまり、ほとんどが関東と関西に集中する。
政府は地方分散を進める方針で、中でも福井県敦賀市は誘致に積極的だ。災害リスクの低さや大都市圏に比較的近いこと、電力の安さなどを強みに、2月には政府との意見交換も行った。市としての新たな産業に育て、活性化を目指したい考えだ。



取材・記事 藤井凱、中園大樹
グラフィックス 天野由衣





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