Movatterモバイル変換


[0]ホーム

URL:


記事・株価を検索する

日本経済新聞

NIKKEI Primeについて

朝夕刊や電子版ではお伝えしきれない情報をお届けします。今後も様々な切り口でサービスを開始予定です。

/

イチロー、悪球打ちで陥ったワナ 200安打逃した理由(1)

スポーツライター 丹羽政善

日経の記事利用サービスについて

企業での記事共有や会議資料への転載・複製、注文印刷などをご希望の方は、リンク先をご覧ください。

詳しくはこちら

「一般論として、ボールに手を出せば、不利なカウントで勝負をすることが多くなり、また、難しい球に手を出して凡打にもなる――」

9月23日、テキサス。

残暑というよりは、まだ夏真っ盛りという強い日差しが、グラウンドを照りつけていた。

ボール球に手を出す確率は過去最悪

打撃練習が終わり、人気のなくなったダッグアウトで、マリナーズのクリス・チャンブリス打撃コーチと肩を並べた。

イチローの不振についてはこれまで、嫌というほど質問をされてきたはずで、声を掛けただけで何かを察したような眼差しをこちらに向けた。それでも、示したデータに興味を持ってくれたのか、やがて、一つ一つの質問に対する答えが長くなった。

示したのは、イチローのボール球に手を出す確率だ。今季は過去ワーストの36.2%で、シーズンの最多安打を記録した2004年の16.6%と比べると、倍以上となっていた。過去2年も32.1%、35.6%と高いが、今年はさらにその傾向が強まっている。

5月下旬には40.4%にも

どんな影響があるのか――という問いには、冒頭の一般論しか返ってこなかったが、もう少し具体的な数値を示すと、ノートの上のそれを指で追った。

イチローが「苦しかった」と振り返った5月は36.7%で、打率が下降していった5月16日から31日までの15試合では40.4%という高率になっていた。この間の打率は1割8分6厘(59打数11安打)である。

「ちょっと積極的すぎるかも」

試合前後の監督会見で、イチローの状態が話題になりだしたのもその頃で、エリック・ウェッジ監督は「ちょっと、積極的すぎるかもしれない」と話した。

それはつまりボール球に手を出しすぎているということを示唆するものでもあり、こうした数字を把握していたものと思われるが、チャンブリス打撃コーチは、「(一般論が)イチローにも当てはまるかどうかは、分からない」と、監督とはやや違う見方だった。

「ストライクゾーンは、人それぞれ。そもそもイチローのゾーンは広い。単純にそれだけが理由とは考えにくい」

もう一歩踏み込んで、6月の数字も伝えた。

スタメンを外れた6月10日までの9試合は49.2%――半分近い確率でイチローはボール球に手を出していた。この間は38打数5安打で打率1割3分2厘だ。

6月、スタメンを外れた前後で大きな差

11日にスタメン復帰してからは、8試合で16安打をマークするなどしたが、この間はボールを振る確率が33.8%にまで下がっていた。

さらにボール球を打ってアウトになった回数が6月の前半は9試合で14度もあり、逆にヒットになったのは1度しかなかったこと。そして11日以降は、ボールを打って凡退した数が8試合で8度に減ったことなども指摘すると、チャンブリス打撃コーチはしばらくその数字に見入っていた。

「あの前後で、何かイチローに指摘をしたのか?」と聞くと、首を振ったものの、「それだけ違うのであれば、本人の中で、意識があったのだろう」と話してくれた。

「ボール球をヒットにすると、ややこしく」

このとき、自身の経験も踏まえ、ボール球に手を出すリスクを問えば、1970年1月のドラフトで全体の1位指名を受けてインディアンス入りしたチャンブリス打撃コーチは「ボール球をヒットにすると、ややこしくなる」と苦笑した。

「そうすることで、知らず知らずのうちにストライクゾーンを広げてしまう。でも、ボール球をヒットにできるのは、たまたまか、よほど調子のいいとき。それを勘違いして、ボール球を追っていると、やがてツケを払わされる」

その言葉は、イチローがシーズン終了後に話したことを整理しているときにつながった。

イチローは、序盤に苦しんだ理由をこう振り返っている。

「4月に結果が出ることの難しさ――。それが、今年もすごく難しかった、それは誤った判断だったということはいえる。それが5、6(月)に出てますから。4月の難しさというのは毎年難しいですけど、結果が出ることで、あえて難しくなる」

結果として間違った判断

イチローは4月、4月の月間安打としては自己最多の39安打をマークした。打率は3割2分8厘。

とくに半ばを過ぎてから調子が上がり、4月19日からの11試合では、21安打を記録している。

このときに感じていた感覚が正しいものなのかどうか。あるいは、修正が必要なのか。イチローはその判断に迷い、結果として間違った判断をしてしまったという。

ということは、好調だった4月に何かがある。

さかのぼって、4月のボールを振る確率も調べてみると、32.6%で、今季の平均よりはやや低いものの、過去全体の数字と比べれば、やはり高い部類の数値だった。

イチローにしか安打にできないと思ったが

極端とはいえないものの、ボール球を追いかけてしまって結果を出した4月。それが果たして、その後の代償につながったのだろうか。

こんなケースも見つかった。イチローは4月19日に4安打を記録しているのだが、その3本目のヒットは、左投手の投じた外角に遠く外れるカーブをセンター前に転がしたものだった。

あの球はイチローにしかヒットにできないだろう――。あのときはそう思ったが、あれがいわゆる、チャンブリス打撃コーチのいう「ややこしくなる」ヒットだとしたら……。

本質はどこか

4、5年ほど前のこと。イチローは、チームの問題を米メディアに問われ、「木に問題があるなら、根っこを見なければならない。(根に問題があるのに)水をやり続けても解決にはならない。とにかく、問題の根源を見つけることが最初」と話した。

184安打に終わり、シーズン200安打が10年でストップした今シーズン。そうなってしまった本質はどこにあったかということだが、今回、問題なのは不調だった5月ではなく、好調だった4月だったという点で、通じるところがあるのかもしれない。

ただ、なぜ、イチローにとってのストライクゾーン(手を出すゾーン)が広がったのかということにおいては、すっきりしない部分もある。

次回(31日掲載予定)は、そこを掘り下げてみたい。

アプリで開く

すべての記事が読み放題
有料会員が初回1カ月無料

有料会員限定
キーワード登録であなたの
重要なニュースを
ハイライト
登録したキーワードに該当する記事が紙面ビューアー上で赤い線に囲まれて表示されている画面例
日経電子版 紙面ビューアー

日経の記事利用サービスについて

企業での記事共有や会議資料への転載・複製、注文印刷などをご希望の方は、リンク先をご覧ください。

詳しくはこちら

関連記事

速報(スポーツ)

日経からのお知らせ
あなたに合った電子版の使い方をご紹介

ランキング(スポーツ)

 更新

特集記事(PR)はこちら

つくるをほぐす 発見と創造の喜び

NIKKEIリスキリング
つくるをほぐす 発見と創造の喜び

「朝コーヒー」の習慣で老化知らず?

Gooday
「朝コーヒー」の習慣で老化知らず?

理美容室の倒産がなぜ増えているのか

BizGate
理美容室の倒産がなぜ増えているのか

和食に合う新たなワイン造りを応援

PR未来ショッピング
和食に合う新たなワイン造りを応援

「現場で使える」英語力を測る。

PRスキルアップ
「現場で使える」英語力を測る。

全国のワークスペースを利用できる

PRNIKKEI OFFICE PASS
全国のワークスペースを利用できる

秋の新色 リップ&アイシャドウ

THE NIKKEI MAGAZINE
秋の新色 リップ&アイシャドウ

2025 出身大学別年収ランキング

PR日経転職版
2025 出身大学別年収ランキング

セレクション

未来面「先が長い挑戦、続けるために何が必要ですか?」読者のアイデアとJFEホールディングス社長の講評(10月27日)日経優秀製品・サービス賞2024グローバル市場に挑戦 35点を紹介NIKKEI ニュースレター日経電子版が提供するニュースレターサービス「NIKKEI Briefing」などのご登録はこちらBSテレ東「NIKKEI NEWS NEXT」「NIKKEI 日曜サロン」編集委員・記者らがニュースを解説

トレンドウオッチ

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

日経ビジネス

日経クロストレンド

NIKKEI Prime

日経BizGate

NIKKEIリスキリング

日経ウーマノミクス

NIKKEI Smart Work

フォローする
有料会員の方のみご利用になれます。気になる連載・コラム・キーワードをフォローすると、「Myニュース」でまとめよみができます。
新規会員登録ログイン
記事を保存する
有料会員の方のみご利用になれます。保存した記事はスマホやタブレットでもご覧いただけます。
新規会員登録ログイン
Think! の投稿を読む
記事と併せて、エキスパート(専門家)のひとこと解説や分析を読むことができます。会員の方のみご利用になれます。
新規会員登録 (無料)ログイン
図表を保存する
有料会員の方のみご利用になれます。保存した図表はスマホやタブレットでもご覧いただけます。
新規会員登録ログイン
エラー
操作を実行できませんでした。時間を空けて再度お試しください。

権限不足のため、フォローできません

ニュースレターを登録すると続きが読めます(無料)

News Catch Up

日本経済新聞の編集者が選んだ押さえておきたい「ニュース5本」をお届けします。(週5回配信)

ご登録いただいたメールアドレス宛てにニュースレターの配信と日経電子版のキャンペーン情報などをお送りします(登録後の配信解除も可能です)。これらメール配信の目的に限りメールアドレスを利用します。日経IDなどその他のサービスに自動で登録されることはありません。

ご登録ありがとうございました。

入力いただいたメールアドレスにメールを送付しました。メールのリンクをクリックすると記事全文をお読みいただけます。

登録できませんでした。

エラーが発生し、登録できませんでした。

登録できませんでした。

ニュースレターの登録に失敗しました。ご覧頂いている記事は、対象外になっています。

登録済みです。

入力いただきましたメールアドレスは既に登録済みとなっております。ニュースレターの配信をお待ち下さい。

_

_

_

[8]ページ先頭

©2009-2025 Movatter.jp