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Amazonに挑む、ショピファイの運命握る「危険な果実」

グロービス経営大学院教授が「サブスク」で解説

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写真はロイター

新興ネット通販向け電子商取引(EC)プラットフォームを手掛けるカナダのショピファイの勢いが止まりません。右肩上がりにユーザー数を増やし、米アマゾン・ドット・コムのマーケットプレイスの牙城を崩すのではないかとの期待もあります。ショピファイのビジネスはなぜ受け入れられたのでしょうか。アマゾンに追いつくことはできるのでしょうか。グロービス経営大学院の嶋田毅教授が「サブスクリプション」の観点から解説します。

【解説ポイント】
・自由に手軽にECサイト構築可能
・「フィッシュモデル」で投資回収
・アマゾンと共存か対決か

ショピファイの特徴はいくつかありますが、課金モデルと顧客への提供価値という側面から見てみましょう。

まず課金モデルです。ショピファイの特徴に、BtoBビジネスながらサブスクリプション(定額使い放題)モデルを前面に出している点があります。売り上げに応じたクレジットカード手数料が発生しますが、ショピファイのサービスの核である販促、在庫管理、サイトのデザイン、売上分析といった基本サービスはあくまで定額です。

サブスクで利益率上昇

サブスクリプションモデルというと音楽のSpotifyやスポーツ動画のDAZNといったBtoCサービスを思い浮かべる人も多いと思いますが、ショピファイは主に法人相手にこのサブスクリプションモデルで課金しています。ベーシックプランは月額わずか29ドルで、非常に安い価格でEコマースサービスを受けることが可能です。

サブスクリプションモデルは通常、「フィッシュモデル」という投資回収構造になることが多いといわれています(より厳密にいえば、売り切り型のモデルからサブスクリプションモデルに変更したときの収益変化のモデルです)。

最初は多くの顧客を集めるために先行投資的なマーケティングやサービス拡充が必要です。しかも定額料金は低めに設定することが多いため、初期には利益はマイナスでそれがどんどん膨らみます。しかし、ある段階を超えると追加投資などが減り、また顧客がより高いプランに移行するなどして顧客単価が上がることも多いため、どんどん利益率が上がるというビジネスモデルです。

【関連記事】
アマゾンキラー、ショピファイ 世界で100万社超導入

関連記事中のショピファイの損益を見ると、時価総額はどんどん伸びていますが、赤字は拡大しています。これは、ショピファイはまだ投資時期にあることを示唆します。それにもかかわらず投資家が評価しているということは、ショピファイはこれからも顧客数を伸ばし、いずれ投資回収フェーズに入る可能性が高いとの期待があります。

多くの企業が両社活用

サブスクリプションモデルが成功を収めるための鉄則は、顧客に「素晴らしい」と思える経験を提供し、また彼らの声を聞いてどんどんサービスのレベルを上げていくことです。最初はユニークなサービスであっても、競合や代替品が出てきて立ち止まった瞬間に「負け」となってしまうのです。

では、現時点のショピファイとアマゾンマーケットプレイスの提供価値を比較してみましょう。

ショピファイとアマゾンマーケットプレイスでは、顧客が感じる便益は大きく異なることがわかります。自分の世界観でサイトを構築し、価格設定やブランディングにこだわりたいならショピファイを選ぶでしょう。あまりブランドにこだわらず、純粋に販路を拡大したいというのであればアマゾンマーケットプレイスがいいかもしれません。買い手の詳細なデータはアマゾン側に入るとしても、アマゾンの優れた物流網を活用し、買い手にスピーディーにモノを届けられるのは大きなメリットです。もちろん、目的に応じて両社を使い分けることもできます。実際、多くの企業が両方を使っているという情報もあります。

明らかにいえるのは、現在、両社とも顧客体験の向上に大きく投資しているということです。ショピファイは投資フェーズですから当然ですが、アマゾンも近年、特にマーケットプレイス事業に力を入れています。アマゾン独自で在庫を持って販売するよりも、マーケットプレイス事業の方が収益が高いからです。

一説には最近アマゾンは「イノベーション予算」のほとんどをマーケットプレイスにつぎ込んでいるともいわれます。顧客の信用情報などに基づいたアマゾンレンディングや、配送代行サービスのフルフィルメント・バイ・アマゾンも拡大しており、顧客支援の姿勢も明確に打ち出しています。ショピファイに比べると年間販売額の大きい大手に充実したサービスを提供して、便益に見合った手数料を得るモデルを機能させています。

ビジネススキルをもっと学びたい

ただでさえ強大なアマゾンがさらに力を入れているマーケットプレイス事業にショピファイは勝てるのでしょうか? 筆者の予想は、(1)それぞれすみ分けるか、(2)アマゾンがショピファイを押しつぶすというものです。ショピファイの逆転は、アマゾン本体にトラブルが起きて自滅するなどしない限りは難しいでしょう。物流への投資などは体力勝負という側面もありますので、いわゆる「破壊的イノベーション」となる可能性は小さいように思われます。

異なる提供価値で共存

シナリオ(1)のすみ分けですが、これはフェイスブックとリンクトインのような関係をイメージしてもらうとわかりやすいでしょう。SNSは典型的な「Winner takes all(勝者総取り)」のビジネスですが、その中にもすみ分けはあります。ターゲットと提供価値が違うことにより、共存が図れる可能性は十分にあるでしょう。

シナリオ(2)のアマゾンが押しつぶすということも十分ありそうです。アマゾンのジェフ・ベゾス最高経営責任者(CEO)のポリシーの一つは「あなたの利益は私のビジネスチャンス」というものです。利益を出している、あるいは出しそうなビジネスを圧倒的な資金力とイノベーションの力で押しつぶすというシナリオは十分にあるでしょう。ショピファイが「目の上のたんこぶ」として無視できなくなれば、それをつぶしに来る可能性は十分にあります。「モグラたたき」はトップ企業のセオリーでもあります。

ただ、少なくとも数年間はこの可能性は少ないように思われます。せっかくもうかっているマーケットプレイス事業で、収益性を落としてまでショピファイをつぶすインセンティブは弱いからです。

現在、ショピファイには大きく3つのコースがあります。月額29ドルのベーシック、成長を支援するサービスのついた月額79ドルのコース、成長をさらに加速させるサービス付きの月額299ドルです。ショピファイとしてはいかに上位に移行させられるかが黒字化のカギとなります。

ただ、どのコースも顧客の販売額に応じた販売手数料は不要です。ここがアマゾンとの大きな違いです。アマゾンの虎の尾を踏むとしたら、この販売手数料を課した時ではないでしょうか。それはアマゾンのビジネスにより近づいていくことを意味するからです。コースの上位移行がうまくいかず、販売手数料という「危険な果実」に手を伸ばした時こそ、アマゾンの強烈な反撃や買収といった新しい物語のスタートとなるのかもしれません。

しまだ・つよし
グロービス電子出版発行人兼編集長、出版局編集長、グロービス経営大学院教授。88年東大理学部卒業、90年同大学院理学系研究科修士課程修了。戦略系コンサルティングファーム、外資系メーカーを経て95年グロービスに入社。累計160万部を超えるベストセラー「グロービスMBAシリーズ」のプロデューサーも務める。動画サービス「グロービス学び放題」を監修

サブスクリプション」についてもっと知りたい方はこちら

https://hodai.globis.co.jp/courses/298902e0(「グロービス学び放題」のサイトに飛びます)

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