最高齢田中さん117歳に 戦争、病越え5時代生きる

世界最高齢の福岡市の田中カ子(かね)さんが2日、117歳の誕生日を迎えた。幼いころから書くことが好きで、次男の妻、禮子さん(85)が住む川崎市の家にはカ子さんが思い出を振り返ったノートやメモ用紙が保存されている。戦争、病気、家族との別れ――。メモ書きや家族の話からは、苦しい時も前を向き、明治から令和まで5つの時代を生き抜いてきた姿が浮かぶ。
カ子さんは1903年(明治36年)、福岡県旧和白村(福岡市)の農家に9人きょうだいの7番目として生まれた。
19歳で餅屋を営む1つ上のいとこ、英男さんと結婚。長男が生まれた。当時の思い出を「昭和4年 別府耶馬渓見物。3人で汽車の旅、楽しかった」などと記している。
37年に日中戦争が始まり、英男さんと長男が出征。「男手はないが、めそめそしてはいられない。身も心も男のようになり、精米や餅つきでも何でもできるようになった」。福岡の軍基地にうどん店を出し、次男と養女に加え、戦死した親戚の子3人を育てた。過労がたたりパラチフスを患ったが、必死に働いた。
つらい経験もあった。生後程なく長女が亡くなり、その後に迎えた養女は45年に20代で早世。2年後、次女も1歳で他界した。振り返った心境は「涙なみだ」。
戦後、カ子さんと英男さんは駐留米軍や牧師の影響でキリスト教に入信。畑を提供し、教会を建てた。夫婦で切り盛りする餅屋は繁盛。結婚50年を記念して夫婦で米国を旅行し、ディズニーランドも満喫した。
93年、英男さんは90歳で死去。カ子さんは90歳で白内障、103歳で大腸がんの手術を受けたが「ビールが飲みたい」と言って医師を驚かせるほどの回復力を見せた。
孫やひ孫に慕われ、現在暮らす老人ホームでは他の入居者を励ます「お母さん的な存在」。昨年9月、長寿を祝うためホームを訪れた福岡市長に目標を聞かれ、「死ぬ気はせん。そんなことは考えたことがない」と笑顔で答えた。
誕生日の2日、禮子さんから届けられた花を受け取り、カ子さんは手をたたいて喜んだという。この日もホームの食事をぺろりと平らげた。〔共同〕