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【櫛田育良〈上〉】途方もなく長く感じた数週間と憧れの人 氷上へ戻った決意の冬

日刊スポーツ・プレミアムでは、毎週月曜日にフィギュアスケーターのルーツや支える人の信念に迫る「氷現者」をお届けしています。

シリーズ第57弾は櫛田育良(18=木下アカデミー)が登場します。2023―24年シーズンの世界ジュニア選手権5位の実力者は、25年5月に島田高志郎(24=木下グループ)とのアイスダンスカップル結成を発表。26年ミラノ・コルティナ五輪の出場資格を得ることはかないませんでしたが、25年の全日本選手権にはシングルとの二刀流での出場が決定。前人未踏の道に挑むスケーターです。

全3回の「上編」では、踊ることが大好きだった幼少期からスケートとの出合い、浜田美栄コーチの元へと移籍した経緯までをたどります。(敬称略)

氷現者シリーズ一覧はこちらから

◆櫛田育良(くしだ・いくら)2007年(平19)10月29日愛知県一宮市生まれ、名古屋市出身。5歳の時に邦和スケートクラブで本格的に競技を開始。2020年に京都・宇治市に誕生した木下アカデミーへと拠点を移す。宇治中3年時の22年に初出場したジュニアGPチェコ大会で銅メダルを獲得。愛知・中京大中京高(通信制)に進学した23年は、全日本ジュニア選手権で2位。24年世界ジュニア選手権5位。25年5月に22年全日本選手権2位の島田高志郎とのカップル結成を発表し、シングルとの二刀流に挑戦。モットーは、「かぶったことがない」という名前のように、スケートで自分にしか出せない味を表現すること。これまでの高校の学業成績はオール「5」。身長167センチ。

11月3日西日本選手権 ジュニア女子フリーの演技を終え、声援に応える

11月3日西日本選手権 ジュニア女子フリーの演技を終え、声援に応える

踊るのが人生

2007年10月29日。愛知県名古屋市の隣の一宮市に、1つの小さな奇跡が生まれた。

櫛田家に1人娘が誕生。父が付けた名は育良。先に「いくら」という音を決め、それから漢字を当てた。

10月末にしては最高気温が24度近くまで上がる、ポカポカとした陽気の日の出来事だった。

「名前、気に入っています。他の人とあまりかぶらないのが良いんです」

後に本人がそう笑顔で語るように、家庭は個性を大切に伸ばす教育方針だった。

近所を散歩する幼少期の櫛田(本人提供)

近所を散歩する幼少期の櫛田(本人提供)

ベビーカーに乗るよりも抱っこの方が好きな甘えん坊。両親いわく「蹴る力が非常に強い子」だったという。

「寝ている時にお母さんにかかと落としをしていたらしいです(笑い)」

一方で、幼稚園の運動会の徒競走では、ぶっちぎりでトップに立っても、ゴール直前で後ろの友だちを振り返って待つような優しい心の持ち主だった。

幼稚園の運動会でトップを走る櫛田(本人提供)

幼稚園の運動会でトップを走る櫛田(本人提供)

特に大好きだったのは踊ること。

2歳の時、街でアンパンマンの音楽が流れていると、突然踊り出し、母に「一緒に踊ろう」とせがんで苦笑させたことがある。

ピアノを習った時期もあり、コンクールで賞を取ったこともあった。自分が弾くのも好きだったが、他の子の演奏中にホールから飛び出し、1人ロビーで漏れ出る音楽に合わせて踊っていたこともあった。

「座って聴いているより、踊っている方が好きだったみたいです(笑い)」

ピアノコンクールのロビーで踊る幼少期の櫛田(本人提供)

ピアノコンクールのロビーで踊る幼少期の櫛田(本人提供)

スケート支えた両親の深い理解

そんな自由奔放な櫛田と、スケートとの出合いは偶然だった。

幼稚園の友人家族とともにスキーに行ったことがきっかけ。

母に「もう1回、スキーに行きたい」とねだると、連れて行かれたのは雪山ではなく、近所のスケートリンクだった。

一宮市スケート場。1968年の開業以来2022年の閉館まで西尾張地域唯一のリンクとして長年愛されてきた、冬季限定の施設だった。

一宮スケート場で初めて滑る櫛田(本人提供)

一宮スケート場で初めて滑る櫛田(本人提供)

「スキーとスケート。似ているんじゃないかって思ったんだと思います(笑い)」

本文残り67% (2622文字/3940文字)

    keywords

    #【勝部晃多】#櫛田育良#氷現者#フィギュア
    スポーツ

    勝部晃多Kota Katsube

    Shimane

    島根県松江市生まれ。2021年4月入社。高校野球の神奈川担当などを経て、同年10月からスポーツ部に配属。バトル班として新日本プロレスやRIZINなどを担当し、故アントニオ猪木さんへの単独インタビューや武藤敬司氏の引退試合、那須川天心―武尊などを取材した。23年2月から五輪班に移り、夏季競技はバレーボールを中心に担当。同年秋のW杯や24年夏のVNLなど。冬季競技はフィギュアスケートをメインに務め、全日本選手権は2年連続で取材中。X(旧ツイッター)のアカウントは「@kotakatsube」。

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