以前は不可能だった旧姓併記は最近、認められるようになった ziggy_mars/iStock.
<旧姓を使って活躍する女性に対してパスポートで旧姓併記を認める事例が出てきているが、それなら選択式別姓を導入する方が現実的では>
結婚により夫の姓に変更した人が外務省に対して、「私が旧姓を併記したパスポートを持っている理由を説明した文書を出してもらえないか? あるいは私のように困っている人のために英語で説明している資料はないか?」と尋ねたところ、「ないですね」という回答があったそうです。そこで、その人は、
「旧姓パスポートのままでもよかったけど、有事の際に連絡が取りにくい、けれども旧姓もバリバリ使っているという理由で旧姓併記の手続きをした。新しいパスポートを受け取った時は、かっこ付きでも自分の思い入れある名字が残り嬉しかった。けれどもこのままだと先々でトラブルの元にもなる」
とツイートしたところ、突然、河野外相が「対応を指示しました」とリツイートしたそうで、外相の対応に喝采が上がっています。
ここで問題になっている「パスポートへの旧姓併記」というのは、具体的にどういうものなのでしょう。例えば、鈴木花子さんという女性が結婚した場合に、現行法制では夫婦の別姓は選択できないので、夫の姓である山田が戸籍名になったとします。
その鈴木(新姓は山田)さんが、海外で学会発表をするような場合に、それまでの学術的業績が「Suzuki」で蓄積され、従って次の発表も「Suzuki」で行いたいし、学会への招聘レターも「Suzuki」で来ていたとします。仮に高度な技術に関連する内容などで、学会参加において「フォトID」つまり写真付きの身分証明が必要な場合に、それが「Yamada」だと困る、そのような場合に「旧姓併記」という制度があります。その場合、パスポートには、
<姓>
YAMADA (SUZUKI)
<名>
HANAKO
という表示になります。以前は、この例のように「海外で仕事をするなど、明らかに旧姓での身分証明が必要である」という事実を示さないと、なかなかこの「旧姓併記」ができなかったのですが、最近は「女性活躍」の一環として、この「旧姓併記」の申請を簡素化するように内閣は努力するとしています。
さて、今回の問題ですが、かつては面倒であった(その前は不可能だった)旧姓併記が柔軟に受け付けられるようになったとして、今度はその「旧姓併記」によって、また別のトラブルが起きているということなのです。
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(れいぜい あきひこ)ニュージャージー州在住。作家・ジャーナリスト。プリンストン日本語学校高等部主任。1959年東京生まれ。東京大学文学部卒業。コロンビア大学大学院修士(日本語教授法)。福武書店(現ベネッセコーポレーション)勤務を経て93年に渡米。
最新刊『自動運転「戦場」ルポ ウーバー、グーグル、日本勢――クルマの近未来』(朝日新書)が7月13日に発売。近著に『アイビーリーグの入り方 アメリカ大学入試の知られざる実態と名門大学の合格基準』(CCCメディアハウス)など。メールマガジンJMM(村上龍編集長)で「FROM911、USAレポート」(www.jmm.co.jp/)を連載中。週刊メルマガ(有料)「冷泉彰彦のプリンストン通信」配信中。

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