過度な借入れから消費者の皆さまを守るために、年収などを基準に、その3分の1を超える貸付けが原則禁止されています(総量規制)。例えば、年収300万円の方が貸金業者から借入れできる合計額は、最大で100万円となります。
(1)総量規制の対象となる貸付けは、貸金業者の貸付けです。したがって、貸金業者に該当しない銀行などが行うローンや、信販会社の販売信用(ショッピングクレジット)は総量規制の対象にはなりません。
貸金業者とは、お金を貸付ける業務を行っており、財務局または都道府県に登録をしている業者のことで、具体的には、消費者金融、事業資金を貸付ける事業者金融、クレジットカード会社などが貸金業者に該当します。銀行や、信用金庫、信用組合、労働金庫なども、さまざまな融資を行っていますが、これらは「貸金業者」ではありません。
(2)クレジットカードで現金を借りるキャッシングは、総量規制の対象となり、年収の3分の1を超える貸付けが禁止されます。クレジットカード会社は、「貸金業者」として「貸金業法」に基づき、金銭の貸付けを行うからです。
なお、クレジットカードで商品やサービスを購入するショッピングについては、「貸金業法」は適用されません。つまり、総量規制の対象外です。
※ショッピングのリボ払い、分割払い、ボーナス払いには、別途「割賦販売法」が適用されます。
(3)法人については、総量規制は適用されません。法人の経営状態はさまざまで、例えば売上げなどの一定の数値的基準をもって法人の借入れを一律に過剰貸付けとすることは不適当ですので、個人における年収の3分の1といった定型的な総量規制が適用されないものです。
(4)担保や保証人の有無、消費目的か事業目的かの資金使途にかかわらず、個人向け(個人事業者を含む)の貸付けは、原則として総量規制の対象となります。
(5)個人事業者に対する貸付けは総量規制の対象となり、年収の3分の1を超える貸付けが原則として禁止されます。ただし、借り手の事業実績や事業計画などに基づいて借入総額の返済が合理的に見込まれるなど、明らかに返済能力があると認められる場合には、「顧客の利益の保護に支障を生じることがない契約」として、3分の1を超えて例外的に借入れすることができます(総量規制の「例外貸付け」)
Q1
1社からの借入れが、年収の3分の1を超えなければよいのですか。全ての借入れの合計が年収の3分の1を超えないことが必要ですか?
A1
全ての貸金業者からの借入れの合計が、年収の3分の1以内であることが必要です。
例えば、年収300万円のサラリーマンが、貸金業者A社から80万円を既に借りている場合、貸金業者B社、C社からは、合計で20万円(=300万円×1/3ー80万円)までしか借入れできません。
Q2
年収の3分の1以内であれば、必ず借りることができますか?
A2
貸金業者は、借り手の収入、借入れの状況などを基に審査を行い、返済能力の有無の判断を行っています。年収の3分の1以内であれば必ず借りられるというわけではありません。
Q3
借入残高が「年収の3分の1」を超えているかどうか、貸金業者はどうして分かるのですか?
A3
貸金業者からの借入残高のデータは、厳格な情報管理のもと、「指定信用情報機関」に集められています。貸金業者は、指定信用情報機関を利用し、借り手の借入残高を把握します。
また、借り手の年収については、一定の場合「収入を証明する書類」を借り手から受け取ることで、把握する仕組みになっています。「収入を証明する書類」とは、例えば、「源泉徴収票」、「確定申告書」、「給与明細」など、1年間の収入が分かるような書類です。
Q4
総量規制の基準となる「年収」には、どのようなものが該当しますか?
A4
総量規制の基準となる「年収」には、定期的な収入として以下のものが法令に定められています。
(1)給与
(2)年金
(3)恩給
(4)定期的に受領する不動産の賃貸収入(事業として行う場合を除く)
(5)年間の事業所得(過去の事業所得の状況に照らして安定的と認められるものに限る)
【注】 上記以外の収入(例えば、宝くじや競馬などによる一時的な収入)は、貸金業法上、年収には含まれません。
Q5
保証人がいれば年収の3分の1を超えて借入れできますか?
A5
保証人がいても、貸金業者からは年収の3分の1を超える借入れはできません。担保や保証人の有無、消費目的か事業目的かの資金使途にかかわらず、個人向け(個人事業者を含む)の貸付けには原則として総量規制の対象となります。
Q6
リボルビング契約の場合、総量規制はどのように適用されるのですか?
A6
一定の限度額を設定し、その枠の中で借入れや返済を行う契約のことを、極度方式基本契約(一般に「リボルビング契約」)といいます。
貸金業者は、顧客と極度方式基本契約を締結(新規契約)する場合、一般的な返済能力調査義務に加えて、指定信用情報機関が保有する信用情報を利用した調査を行い、一定の場合には収入を証明する書類を取得するものとされています。調査の結果、総量規制に抵触するなどしていた場合、返済能力を超える貸付けとして極度方式基本契約の締結が禁止されます。
また、契約締結後も、極度方式基本契約に基づく個々の貸付けにより総量規制に抵触していないか、法令が定めたタイミングで指定信用情報機関を利用した定期または随時の調査などを行うものとされ、その結果、総量規制に抵触していることが分かった場合、極度額の減額または新たな極度方式貸付けの停止を行うものとされています。
Q7
銀行のカードローンも総量規制の対象となりますか?
A7
総量規制は、貸金業者からの借入れを対象としていますので、貸金業者に該当しない銀行、信用金庫、信用組合、労働金庫などからの借入れは、貸金業法の規制(総量規制)の対象外となっています。
Q8
クレジットカードを使った商品やサービスの購入(ショッピング)も総量規制の対象となりますか。
A8
クレジットカードを使った商品やサービスの購入(ショッピング)は、貸金業法の対象外ですので、総量規制の計算にあたって借入残高には含まれません。一方、クレジットカードを使用した借入れ(キャッシング)は、総量規制の対象となります。
Q9
貸金業者から事業資金を借りようと考えています。総量規制は適用されるのですか?
A9
法人向けの貸付けは総量規制の対象外です。
なお、個人事業者に対する貸付けは、原則として総量規制の対象となりますが、事業・収支・資金計画を提出し、返済能力があると認められる場合には、借入残高が年収の3分の1を超えて、新たな借入れをすることができます(総量規制の「例外貸付け」)。
ただし、個々の貸金業者の判断で追加的な資料等の提出が求められることがあること、最終的に貸付けを行うか否かはそれぞれの貸金業者の判断に委ねられること、などの点についてご留意ください。