死と隣り合わせで震災と原発災害に対応した消防士たちを丹念に取材。当時の緊迫を描き出した迫力作。
われわれは生きて戻れるのか? ――原発が爆発・暴走するなか、地震・津波被害者の救助や避難誘導、さらには原発構内での給水活動や火災対応にもあたった福島県双葉消防本部一二五名の消防士たち。他県消防の応援も得られず、不眠不休で続けられた地元消防の活動と葛藤を、一人ひとりへの丹念な取材にもとづき描き出す。講談社 本田靖春ノンフィクション賞ほか受賞の迫力作。
講談社 本田靖春ノンフィクション賞(第42回)受賞
日隅一雄・情報流通促進賞2020大賞受賞
日本ジャーナリスト会議(JCJ)賞受賞
静かな衝撃を与えた話題作、ついに文庫化!
──「『孤塁』その後」より
一号機が爆発した三月一二日の夜、ヘッドライトに照らされたきらきら光る粒子が舞うのを見ながら、横山さんは、「たった一日前の、大地震と津波のあとの世界が、いま、どこに向かっているのか」と考えていた。自分の命が危険にさらされる切迫した暗闇のなかで、世界をなんとか捉えたいと思考していた横山さんの言葉は、心に残った言葉の一つだった。
そして今、新型コロナの感染拡大やロシアによるウクライナ侵攻があり、「戦争」が連日報じられ、この世界はどこに向かっているのかと、私も考えることがある。暮らしが暴力によって、突然破壊されていく様を目の当たりにし、あらためて、市井の人の経験と、日常への思いこそ、聞かれ続けなければならないと思っている。それが、日常が壊されない世界のために、必要なことだ。
渡邉敏行さんの「教訓にしてほしい」という言葉があり、それを胸に、二〇一九年から、全国の原発避難計画の取材を重ねた。どの原発立地自治体の避難計画も、現実とかけ離れていて、市井の人を守れるものだとは到底思えなかった。さらに、ウクライナのザポリージャ原発も攻撃を受け、戦争における原発のリスクを突きつけられている。しかしいま、日本政府は「原発回帰」を打ち出し、原発の再稼働、新増設、さらには運転期間の延長まで言い出している。それはまるで、二〇一一年、多くの人々の人生を根こそぎ奪った出来事を忘れてしまったかのようだ。
原発事故後の記憶を殺さないでほしい。きっと、その一人ひとりの経験が未来につながると信じている。ささやかな幸せがどんなものだったのか。どうして、それが壊されたのか。そしてこれから、どんなふうに生きていけることが、回復なのかを。
改めて、真摯に話をしてくれた消防士たち一人ひとりに、感謝の気持ちを伝えたい。
吉田千亜
これまで全く表に出ていない話ばかりです。
チェルノブイリでも消防士の被ばくが大きな問題でしたが、福島第一原発の地元消防が、地震・津波・原発災害のなか、どのような状況におかれていたのか。丁寧な取材で消防士たちの思いをすくいとった本書の記述に、原稿整理をしながら何度も洟をすすりました。
『世界』連載中も大きな反響がありましたが、著者・吉田千亜さんは単行本化のためにさらに取材を敢行。総勢70名近い消防士のことばが、当時の危機的な状況を立体的に浮かび上がらせます。
地元を愛し、地元に暮らし、人命救助を使命としていた双葉郡の消防士たち。
著者が言うように、彼らが生きていてくれたからこそ聞けた話です。
そして、聞き取り伝えてくれた著者がいてこその本です。
ぜひこの本を、多くの人に読んでいただきますよう、心よりお願いいたします。
(編集部 大山美佐子)
金平茂紀さん(ジャーナリスト)
『孤塁』は、3・11から10年目にして成し遂げられた、ルポルタージュのひとつの金字塔である。
今井照さん(地方自治総合研究所主任研究員)
この「生」の翻弄に、いったい誰が責任を取ったのだろう。
首藤淳哉さん(HONZ)
この本が読み継がれる限り、「あの日」が忘れ去られることはない。一冊の本が持つ力を、舐めてはいけない。
*その他、書評情報等は単行本『孤塁』ページを参照ください
「〈私たち〉の世界史へ」(小川幸司氏)より
……こうした双葉郡の消防士たちの「3・11」を私たちがまとまった形で知ることが出来たのは、9年後の2020年になってからのこと。吉田千亜のルポルタージュ『孤塁――双葉郡消防士たちの3・11』が世に出たからであった。これは、吉田が関係者に徹底した聞き取りを重ねて完成させた、すぐれた「オーラル・ヒストリー」による現代史でもある。そして、吉田が描いた一人ひとりの消防士たちもまた、「3・11」の極限状態の中を行きぬく時に、「過去」の人間たちの姿やイメージを引照しながら、自分の生きている位置を見定め、自分の進むべき道を決めようとしている。その時「過去」によって世界のなかの自分を定位しているならば、それは世界史を考えていることになるだろう。
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