いまさらあえて声高に訴えるのも恥ずかしいのですが、食べ物の中心部(マグロ以外の食べ物でもあえて大トロと呼ぶことにする)よりも端っこのほうがしばし大トロ以上のおいしさで、かつ希少部位であるということは周知の事実でしょう。
エッセイの名手・向田邦子でさえ端っこグルメを俎上(そじょう)に載せこうおっしゃっています。
端っこが好きなのは海苔巻きだけではない。羊羹でもカステラでも真中よりも端っこが好きだった。
向田邦子『父の詫び状』文藝春秋
本日はカゲゾウの完全独断・完全偏見で端っこグルメをランキングし、No.1を勝手に決定したいと思います。
パイ菓子の円周部分はまさにお宝。本体部分と比べてはるかに香ばしそうな色艶。肉眼でもはっきり確認できる砂糖のツブツブ。甘さの密度が他の部分よりもはるかに濃いのが高ポイントです! ほんとは外縁だけ食べたいのですがさすがにもったいない。
切断の際にでる幅広の端っこ。カゲゾウは勝手に「おきりこみ」とか「一反木綿」と読んでいたんですが、うどん屋さんの亭主に聞いてみたら「みみ」というらしいっス。時たまこれが入っていると思わずガッツポーズですよね。じゃあ最初からきしめんを頼めって話ですけど、それだとお得感がまったくない。あくまでも麺に混じる「みみ」がおいしい!
え? 意外ですか。いやいや、トンカツも立派な端っこグルメですよ。他の部分よりも衣が多い分カリカリなところがたまりません。もちろんど真ん中の脂身がたんまりのったところも大好き。なので、トンカツを食べる場合、最終盤には端っこと大トロの二切れを残します。どちらをフィニッシュブローにするか……、毎回悩ましい問題です。
人様には内緒ですが、ウチでは通称「おっぱい」と呼んでいるほうれん草の茎の部分。泥を落とすのが多少面倒ですが、ここを捨ててしまうなんてもったいない。単独で食べるとじんわりと甘くおいしい。これを集めて豆腐やごはんに乗せ、カツブシを振りかけたら醤油を少し垂らし、ムシャムシャとかっこんでます。
生卵ならトロリとした卵黄部分が大好きなのですが、いざゆでたまごになると黄身のあのボソボソした感じがあまり好きではありません。なのでゆでた場合は断然白身がイイ! 黄身が混じっていない端っこがサイコーです。優美な曲面を舌の上で楽しんだあとおもむろに咀嚼(そしゃく)する。触覚と味覚を2度楽しめる希少部位!
向田邦子さんも愛した巻物の端っこ。あの海苔がくしゅくしゅとした感じと、ごはんや具材がちょこっと飛び出しているアバウトな感じがなんとも食欲をそそる。何か端っこの方が味が濃縮しているような気がするのはカゲゾウだけでしょうか? 使われているものは完全に同じなのにぜったい端っこのほうがうまい。
表面に歯ごたえがあり、中身が柔らかい厚揚げ。両方のコントラストが楽しめるのがいいですよね。厚揚げは当然焼いて表面をより香ばしく仕上げます。ウチではサイコロ状には切りません。厚めの短冊切りにします。だってみなさん想像してみてください、この切り方だと端っこは切り口以外の5面がすべて香ばしい外殻なのですぞ!
※厚揚げに関しては以前こんな記事も書きましたのでお時間のあるときにどうぞ↓
いよいよ残すところベスト3……、の前にちょっと番外編を。端っこか? と聞かれるとびみょーに違うっぽいのでランキングからは外しましたが、フライドポテトの短くてカリカリになった部分っていいですよね。ちっこい分、同じ揚げ時間でも他のものよりこんがり色づいて、クリスピー度が増しているとうれしくなっちゃいます。
料理として最初からおいしくて、かつ希少性(というかお値段)も高い蒲焼き。もちろん胴体の部分の平たいエリアは当然好きですよ。でもしっぽのすぼまった部分は、たっぷり焦げ色がついていて香ばしく、味も明らかにほかと違う。これがあることで蒲焼きの味がより起伏に富みます。戦局を一転させる切り札的存在。最初ではない。でも最後でもない。しっぽをいつ食べるか? そのベストタイミングは今もって探索中です。
※蒲焼きに関しても以前にこんな記事執筆しました↓
細巻きと同じく、同一の食材なのに端っこの方に味が濃縮している系ですな(断じて錯覚などではない!)。薄皮のすぼまったシホシホのところが、サラミ側に転写されているのを見ただけでテンションあがります。ボンレスハムも当然候補にあがりましたが、みなさんに問いたい。自分でボンレスハムを買ったことがありますか? と。恥ずかしながらカゲゾウは実家にくるお歳暮でしか食べる機会がありません。お手軽に自分で食べられるのはやはりサラミ!
カゲゾウの中では、他の追随を許さない端っこ界の絶対的王者ッ。他に比するものなき頂点の味ッ! それがフランスパンの端っこっ!! おほん、すいません、つい取り乱してしまいました。
特に最近は、本場フランスの日本支店も増え、武器として使えるんじゃないかというくらい端っこが尖ったヤツもありますよね。端が鋭角なほどうまいと学会にも発表されたばかりです(嘘)。お店で買って我慢しきれず、家に帰る途中で端っこ分だけかみ砕いてしまうこともしばし。あのパリパリとした外皮をガリガリとかみ締める瞬間は至福以外のなにものでもありません。
しかしチョット前までさほど興味を持っていなかったウチの子どもたちが、このうまさに気がつき、虎視眈々(たんたん)と端っこを狙っているのです。こっそり端っこだけ先に切って隠してしまおうかとも思うのですが、一応父親なので公平にジャンケンで決めています。
さて、みなさんのお好きな端っこグルメはありましたか? ランキング形式にするためにあえて10品目に絞りましたが、圏外でもおいしい端っこグルメはたくさんあります。
南部せんべい外周の薄いバリの部分とか、羊羹の両端とか、卵焼きの切れ端とか、泣く泣く割愛しものも多々。いや〜端っこグルメって本当においしいですよね。それでは機会があれば次回は「このマニアック部位がうまいグルメ」でお会いしましょう!
※この記事は2017年5月の情報です。
1974年生まれの二女一男のパパ。共働きの奥さんと料理を分担。「おいしいものはマネできる」をモットーに、料理本やメディアで紹介されたレシピを作ることはもちろん、外で食べた料理も自宅で再現。家族と懐のために「家めし、家BAR、家居酒屋」を推進中。「双六屋カゲゾウ」名義でボードゲーム系のライターとして活動中。「子育屋カゲゾウ」名義で育児ブログも更新中。
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