パタゴニアの“ナノ・パフ”は、真夏以外スタメン確定。タフでラフな安心感がすごい
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山之内 渉
玄関を出るとき、無意識に手が伸びているんです。
パタゴニアのロングセラー「ナノ・パフ・ジャケット」。2010年の登場以来、多くのファンを生んできたこのジャケットですが、ぼくもその魅力に取り憑かれたうちの一人。
圧倒的なタフさと軽さ、そして絶妙な暖かさ。「とりあえずこれ着ておけば間違いない」という安心感。このジャケットへの依存度は、年々高まるばかりです。
ほぼ一年中、出番アリ。「稼働率」がバグってます
ナノ・パフ・ジャケットは、ざっくり言うと「着られる期間がやたら長い」一着です。
秋〜春先まではメインアウターとして、真冬はコートやフリースの下に仕込む中間着として。さらに言えば、夏だってキャンプ場や山の朝晩にサッと羽織るのに丁度いい。なぜここまで使い回せるかというと、理由は2つあります。
ひとつは、ダウン(羽毛)ではなく、化繊の中綿(プリマロフト)を使っていること。 ダウンほどの爆発的な保温力はないものの、逆に言えば「暑すぎない」のが最大のメリット。 電車や屋内に入った瞬間に「暑っ!」と感じる、あのストレスがありません。
しかもプリマロフトは湿気や水にめっぽう強いので、雨の日でも、アクティブに動いて汗をかいても、快適な暖かさがずっと続きます。
そしてもうひとつが、この「ミニマルなデザイン」です。
ロゴも控えめで、デザインは極めてシンプル。いかにも「今から山に登ります」というゴリゴリ感が薄いおかげで、チノパンやジーンズに合わせて街へ出ても馴染みます。
天候が読めなくても、行き先が山でも街でも、とりあえずこれさえ着ておけばなんとかなる。この「思考停止で選べる気軽さ」こそが、結局毎日着てしまう理由なんです。
「着てよし、畳んでよし」のギミックが憎い
このジャケット、脱いだ後も優秀です。
内側の胸ポケットに本体をグイグイ押し込むと、なんとそのまま収納できてしまうパッカブル仕様。さらに重さは約369gでiPhone2台分ちょっとという軽さ。このコンパクトさなら、バックパックの隙間はもちろん、オフィスのデスクの引き出しにだって放り込んでおけます。
じゃあ、着心地はどうなのか? 抜群に良いです。
特筆すべきは、あえて少し長めに設計された「袖の長さ」。 デスクワークで腕を前に出しても、車のハンドルを握っても、あるいは登山の岩場でグイッと手を伸ばしても、背中がつっぱる感じがしない。軽さも相まって「着ていることを忘れる」っていうのは、こういうことなんですね。
ちなみに僕が着ているのは5年前のモデルですが、公式サイトによると、最新モデルはさらに「肩と腕まわりのフィット感」が改良されているとのこと。現行でも十分快適なのに、これ以上動きやすくなってどうするんだ、と逆に心配になるレベルです。
「雑に扱える」という、最高の機能性
肝心の耐久性についても、そこはパタゴニア。 心配するだけ野暮というもの。
ナノ・パフ特有の「レンガのようなキルトパターン」は、中綿のズレを防ぎ、糸のほつれを最小限に抑えるための機能美。 そして素材には、軽量ながら引き裂きに強いリサイクル・ポリエステル100%のリップストップを採用しています。
だからこそ、このジャケットを過保護に扱う必要はありません。
マウンテンバイクで泥を跳ね上げ、キャンプで煙に巻かれ、登山では岩肌に擦りつけ……。そんなハードな使い方にも音を上げないタフさがあり、汚れたらネットに入れて洗濯機へ放り込めばOK。このメンテナンスの楽さも、一般的なダウンにはない魅力です。
……とは言ったものの、実はむかし、焚き火の火の粉で袖口に小さな穴をたくさん開けてしまいました。
でも、心配はいりません。パタゴニアの補修用シール「ウォーンウェア(Worn Wear)・パッチ・キット」をペタリと貼れば、すぐに補修完了です。
むしろ、つるつるの新品よりも、パッチで継ぎ接ぎされ、日に焼けて色あせた今の姿のほうが「自分のギア」感があって愛おしいとさえ思うんですよね。
100%リサイクル素材で作られたウェアを、直しながら長く着る。価格は3万円弱と決して安くはないですが、春・秋・冬と3シーズン着倒せて、ラフに扱ってもへこたれない。日割り計算したら、実質タダみたいなもんです。
クローゼットに一着あるだけで、この冬の「安心感」がガラッと変わるはずですよ。
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