甘い飲み物が肝臓を殺す


- 発行形態 :新書
電子書籍 - ページ数:248ページ
- ISBN:9784344987500
- Cコード:0295
- 判型:新書判
作品紹介
脂肪肝の原因は揚げ物ではなく“糖”!
日本人の3人に1人は脂肪肝
人体に欠かせぬ臓器は多いが、なかでも肝臓は代謝、免疫、解毒など何百もの仕事をこなす超重要臓器だ。
ところが日本人の3人に1人は肝臓に脂肪がたまった「脂肪肝」になっている。
その〝主犯〟は、じつは甘い飲み物だった!
液状の糖は肝臓に脂肪を猛スピードで蓄積させ、放置すれば「死」に至ることも――。
だが本書のメソッドなら3か月で改善できる。
生体肝移植のプロフェッショナルが最新研究と現場での知見をもとに、肝臓から確実に脂肪を落とす方法を伝授。
元気な肝臓を取り戻せるチャンスは今しかない。
●肝臓の60%が脂肪になっていても自覚症状はゼロ
●日本人に多い、BMI 25未満の「やせの脂肪肝」
●糖は液体で摂ると肝臓破壊スピードが加速する
●肝臓が喜ぶ飲み物「水・お茶・ブラックコーヒー」
●果物はスムージーにせず固形のまま食べるのがベター
●コーラなど甘い飲み物への規制が世界中で強まっている
●たった7%減量するだけで肝機能は大幅改善!
●筋肉をつければ、脂肪肝も糖尿病も怖くない
はじめに
日本人の3人にひとりが脂肪肝
肝臓は生命力の源泉です。人が活動する生命エネルギーはすべてここから生み出されると言っても差し支えありません。
そのハンパない生命力を物語るうえでいちばん分かりやすいのは、肝臓の「再生能力」でしょう。生体肝移植ではドナーの肝臓を最大で7割も切除しますが、残った3割の肝臓がたった3か月で元の大きさに再生するのです。これは肝細胞の量が30%から100%へと一気に回復して、なおかつさまざまな肝機能もすべて元通りに復元するということ。こんな劇的な再生回復力を備えた臓器は肝臓以外にありません。
おそらく、人間が生きていくために絶対に欠かせないエネルギーを生み出している超重要臓器だからこそ、肝臓だけがスピーディーに再生回復する「特別な力」を与えられたのでしょう。
肝臓は常時何百という仕事をこなしていて、とくに重要なものを3つ挙げるなら、「代謝」「免疫」「解毒」の役目を担っています。どれをとっても人の生命維持に必要不可欠な役目であり、どれが欠けても生きるのが困難になってしまう機能ばかり。
「肝心かなめ」「肝腎かなめ」の言葉通り、肝臓は生命活動のかなめとなる臓器であり、わたしたちがいつも通りに生きて、いつも通りに活動していくためには、肝臓がいつも通りに機能している状況が欠かせないのです。
ところが、現代においては、この肝臓の機能をじわじわと低下させてしまっている人がたいへん増えています。自分でも気がつかないうちに肝臓の機能を弱らせ、いつの間にか日々を生きていく活力や免疫力を低下させてしまい、そのせいで多くの不調や病気を呼び込んでいる人が増えているのです。
なぜ、肝臓の機能がそんなに低下してしまっているのか。じつは、「生命活動のかなめとなる臓器」をじわじわと追い込んで弱体化させているもっとも厄介な“犯人”こそ、「脂肪肝」なのです。
みなさんもきっと聞いたことがあるはず。脂肪肝は日本人の約3人にひとりがかかっていると言われるほど世間一般に蔓延している病気です。中高年はもちろん若い人にも増えていますし、太った人だけではなく、やせた人にも増えています。
しかし、ありふれた病気だからといって、決して脂肪肝を甘く見てはいけません。後ほどくわしく紹介しますが、脂肪肝はあらゆる生活習慣病の入口となる疾患です。肝臓にたまった脂肪が炎症を起こすと進行してしまう可能性もあり、何もせずに放置していたら「死」につながることもある怖い病気だと思ってください。
そして、これからが本題なのですが、この脂肪肝を「ここまで多くの人々に蔓延させてしまった原因」はいったい何なのでしょう。
何を隠そう、その原因こそ「甘い飲み物」なのです。
たぶん、意外に思われる方が多いかもしれません。
肝機能低下の原因と言えば、多くの人が真っ先に思い浮かべるのがアルコールです。もちろん、アルコールの飲み過ぎも肝臓にとってよくはないのですが、「甘い飲み物がもたらすリスクの大きさ」に比べれば、アルコールのもたらすリスクは〝まだかわいいほう〟と言っても差し支えありません。
また、脂肪肝を招く要因として「脂肪分の多い油っこい食事」をイメージする人も多いかと思いますが、それもだいぶお門違いです。脂質の摂取は肝機能にはそれほど大きな影響をもたらしません。
脂肪肝を引き起こす栄養面でのもっとも重大な問題は「糖質の摂り過ぎ」です。さらに、日々さまざまな糖質を摂取している中でも、甘い飲み物を野放図に飲んでしまう習慣が肝臓への脂肪蓄積につながり、肝機能に大ダメージを与えることになるのです。
加糖炭酸飲料、スポーツドリンク、100%果物ジュース、乳酸菌飲料、加糖コーヒー飲料、野菜ジュース、エナジードリンク、甘いアルコール飲料……わたしたちの身近には常に甘い飲み物があふれています。
普段から無意識にこういった飲料を飲んでいる人は多いでしょうし、なかには「健康によかれ」と思って野菜ジュースや果物ジュース、乳酸菌飲料などを飲むのを習慣にしている人も多いでしょう。しかし、その日々の習慣が肝臓の生命力をじわじわと低下させ、多くの病気や不調を呼び込むことにつながってしまっているわけです。
本書ではこれから、「脂肪肝の怖ろしさ」や「甘い飲み物がどんなに危険か」を深掘りしつつ、わたしたちが肝臓をよみがえらせ、日々の生命力をよみがえらせていくには何をすればいいのかを紹介していきたいと思います。
わずか3か月で改善できる独自メソッド
私は「生体肝移植」を専門としている肝臓外科医です。「肝切除術」をはじめとした手術や術後管理を行なうほか、週に1回、「スマート外来」を担当し、肥満や脂肪肝の患者さんのためのダイエット指導を行なっています。
なぜ、肝臓外科医の私がダイエット指導を掛け持ちしているのか。それが「脂肪肝」や「甘い飲み物」とどうつながってくるのか。ここでちょっと、その経緯や事情をお話ししておきましょう。
ご存じの方もいらっしゃると思いますが、生体肝移植とは、健康なドナー(臓器提供者)から肝臓の一部を切除して、レシピエント(肝不全患者)に移植する外科治療法です。先述したように、肝臓は全体積の7割を切除しても3か月で元の体積に戻るという驚異的な再生能力を備えています。ドナーの肝臓を切除してレシピエントに移植しても、ドナー側の肝臓もレシピエント側の肝臓も早期に機能回復するため、こうした手術法が可能になったわけです。
ところが、この治療法に立ちはだかった問題が「脂肪肝」でした。
それというのも、ドナー側の肝臓に脂肪肝があると、移植した際にレシピエント側が肝臓に機能不全を起こしてしまうため、移植できなくなってしまうのです。生体肝移植のドナーになる条件は、「肝生検をしたときの肝脂肪率が10%以下」。通常、エコー検査などで脂肪肝と診断されるのは肝脂肪率が30%以上ある場合であり、この「10%以下」はけっこう厳しい条件となります。
その結果、脂肪肝があるために、ドナーになりたくてもなれないという方が大勢現われるようになりました。
生体肝移植は、末期肝硬変などがあって、移植を受けなければ6か月以内に亡くなってしまう患者さんのための治療法です。家族など、大切な人を救うためにドナーになろうと決意したのに、「あなたは脂肪肝があるのでドナーになれません」と言われたときの心中は察するに余りあります。
ドナーがいなければ、もうレシピエントの死は避けられないわけで、外来で脂肪肝を伝えた際に、ドナー候補の方やレシピエントの方に泣かれてしまったことも数えきれません。
つまり、こういった経緯から、私は「ドナー候補者が短期間で脂肪肝を改善させられる方法」を何とか編み出そうとするようになったわけです。
脂肪肝を治すには、とにかくダイエットです。ドナーの健康を損ねることなく着実に減量をすることが、肝臓から脂肪を追い出すいちばんの近道となります。私は、最新の文献をあさり、研究や実地指導を重ね、「脂肪肝をわずか3か月で改善できる独自の治療メソッド」を確立しました。
その結果、私がダイエット指導をしたドナー候補の方々は、みなさん短期間で脂肪肝を完全克服し、自身の肝臓を提供できるようになりました。すなわち、肝臓の脂肪を落としてやせたことで、レシピエントの方の命を助けることができた──そういうドナーの方々が増えていったわけです。
そして、その後、こうしたドナーへのダイエット指導で培ったノウハウを脂肪肝に悩む一般の方々にも広く提供しようということになり、2017年、同僚の糖尿病専門医・西森栄太医師とともに「スマート外来」と銘打った肥満・脂肪肝専門外来を立ち上げるに至ったのです。
私は、「肝臓から脂肪を追い出す」という視点なしには、ダイエットは語れないと考えています。言い換えれば、「肝臓にいいやせ方」こそが「健康にいい正しいやせ方」。体調を崩すことなく健康にやせたいのであれば、まずは肝臓の機能を正常化することからスタートしなくてはなりません。
こういった「肝臓からやせる」というダイエットのスタンスは多くの方々に支持され、いつしか「短期間で健康的にやせられる外来」という評判が口コミやネットを通して世間に広がるようになり、いまやスマート外来は全国各地からいらっしゃる患者さんでいつも混み合うような状態になっています。具体的にどういう方法をとってやせるのかについては、後ほどくわしくご紹介することにしましょう。
ただ、この場で1点だけ強調しておくと、スマート外来においていちばんの柱になっているルールが、「甘い飲み物をやめる」ということなのです。
スマート外来にいらっしゃる脂肪肝や肥満の患者さんは、ほぼ例外なく、これまで甘い飲み物を習慣的に摂ってきた方々で占められています。そういう方々の肝臓には甘い飲み物によるダメージが蓄積しているので、まずは原因である甘い飲み物をやめてダメージを取り除いていかなくてはなりません。
実際、甘い飲み物をやめると、それだけで肝機能の数値がてきめんに改善し、肝臓や内臓にたまった脂肪が着実に落ちてやせていくようになります。逆から言えば、わたしたちが普段何の気なしに飲んでいる甘い飲み物は、それくらい甚大なダメージを体にもたらしていたというわけです。
よけいな脂肪を振るい落として生命力を取り戻そう
肝臓が元気に働いているか、弱って働きが落ちてきているかは、わたしたちの日々の健康コンディションに非常に大きい影響をもたらしています。太ってしまうかどうか、糖尿病になるかどうか、病気になるかどうか、疲労しやすいかどうか、老化しやすいかどうか──これらはすべて肝臓の働き具合によって決まると言ってもいいでしょう。
もっとも、自分の肝臓の働き具合がいいか悪いかに気づく人は滅多にいません。肝臓は「沈黙の臓器」。〝今日は調子がいいな〟とか、〝このところ調子が悪いな〟とか、〝もう疲れてヘトヘトだよ〟とかについては、肝臓は一切口に出しません。どんなに苦しくても愚痴も言わず弱音も吐かず、日々黙々と働き続けます。
実際、肝臓全体の60%以上が脂肪化している状態になってもまったく自覚症状が現われません。そのため、肝臓の力が弱っていることに気づかないまま、どんどん肝機能を悪化させてしまう人が後を絶たないのです。
しかしみなさん、肝臓が弱り切ってしまう前にできることはたくさんあります。「甘い飲み物をやめること」をはじめ、やるべきことをやって日々の生活習慣を改めていけば、脂肪肝を治し、よけいな脂肪を振るい落として、健康をよみがえらせていくことができるのです。
繰り返しますが、肝臓はわたしたちの生命力の源泉です。
肝臓の大いなる力を生かすも殺すも、これからの行動次第です。このまま甘い飲み物を摂り続けて肝臓を死に追いやるか、それとも甘い飲み物を摂るのをやめて肝臓をよみがえらせていくか。それによって、みなさんがこれから先の人生を健やかに生きられるかどうかが決まってくると言っていいでしょう。
「甘い飲み物くらいで、何もそんな大げさな……」と思う方もいらっしゃるかもしれません。でも、本書をひと通り読み終わる頃には、その考え方は大きく変わっているはずです。
私は、本書によって「肝臓の大切さ」や「甘い飲み物の怖さ」に目覚めてくれる方が増えてくれることを願ってやみません。
ぜひみなさんも、しっかり目を覚まして肝臓を復活させるようにしてください。これからでも十分間に合います。肝臓から自分の体を変え、日々の健康をよみがえらせていきましょう。肝臓の大いなる生命力を味方につけて、この先の自分の人生を存分に輝かせていこうではありませんか。
目 次
はじめに
日本人の3人にひとりが脂肪肝
わずか3か月で改善できる独自メソッド
よけいな脂肪を振るい落として生命力を取り戻そう
第1章 早死にするのが嫌ならいますぐ脂肪肝を治しなさい
内臓脂肪よりはるかにヤバイ「肝臓にたまる脂肪」
肝臓の3大重要機能「代謝」「免疫」「解毒」
巨大カンパニー「肝臓」の従業員がみんな肥満に!?
非アルコール性脂肪肝はアルコール性の3倍多い
お酒を1滴も飲まない人も無関係ではいられない
「脂肪肝」の正式名称が2024年8月に変わった
日本人に多い、BMI 25未満の「やせの脂肪肝」
脂肪肝の人は全員「肝硬変の予備群」である
脂肪肝→脂肪肝炎→肝硬変の「線維化のステップ」
マクロファージが脂肪たっぷりの肝細胞を破壊
「修復屋さん細胞」が働くほどに線維化が進む
重度の肝硬変ほど、つらくて苦しい病気はない
脂肪肝こそがすべての病気の始まりになる
放置していると糖尿病発症リスクが2〜5倍高まる
脂肪肝と糖尿病は切っても切れない「悪友コンビ」
「早戻しボタン」のスイッチを入れよう
この世でもっとも効率よく脂肪肝になる方法とは
第2章 甘い飲み物が肝臓を殺す
脂肪肝の原因になる食べ物は「脂肪」よりも「糖」
あなたの肝臓もフォアグラ状態になってはいないか?
糖質は精製されるほど肝毒性が強くなる
砂糖は「ブドウ糖」と「果糖」でできている
「甘いもの依存」は世界中を悩ます大問題
果糖は健康に害を及ぼす「悪玉糖」
肝臓の脂肪蓄積を促進させる果糖の特徴
果糖ドリンクの肝臓攻撃力はまるで「誘導ミサイル」
糖は液体で摂ると肝臓破壊スピードが加速する!
新知見! 体内で果糖がブドウ糖に変換される方法とは
身近な食品は危険な「果糖ブドウ糖液糖」だらけ
ヘルシーな印象のスムージーにも要注意
甘い飲み物はブドウ糖と果糖のダブルパンチになる
「弱いパンチの連続攻撃」が肝臓はもっとも苦手
市販の甘い飲み物のリスクをチェック
「爽やかテレビCM」に騙されてはいけません
世界では甘い飲み物への規制が強まっている
甘い飲み物をやめれば、肝臓は勝手に回復していく
第3章 肝臓から脂肪を落とす スマート・メソッド
ダイエット成功のカギは「肝臓から脂肪を落とす」こと
「S」よりも「L」が高い人は脂肪肝の可能性大
自分の肝臓の状態をチェックする方法
「7%減量」で肝機能が青信号に変わる!
無理なくやせられる「1・2・3の法則」
スマート・メソッド「3つのルール」と「5つの習慣」
〈ルール1〉飲み物は水・お茶・ブラックコーヒー
〈ルール2〉ごはんの量を半分に
〈ルール3〉野菜はいままでの2倍食べる
〈習慣1〉たんぱく質はしっかり摂る(大豆・魚・鶏肉優先)
〈習慣2〉超加工食品を減らす
〈習慣3〉水を1日1.5ℓ飲む
〈習慣4〉夕食を早めに摂って空腹の時間を長くする
〈習慣5〉1日10分以上の運動をする
〈スロースクワット〉
〈インターバル速歩〉
6か月キープして「二度と脂肪肝にならない体」をつくる
アルコールはひとまず減らしてみる
どんなお酒がより太りやすいのか
肝硬変に絶対ならないように、楽しくお酒とつき合おう
第4章 肝臓こそすべて──肝臓から元気になる「9の心得」
肝臓を元気にするための基礎知識
〈心得1〉肝臓のためになるのは「足し算」よりも「引き算」
〈心得2〉「腸活」イコール「肝活」。腸と肝臓は運命共同体
〈心得3〉筋肉をつければ脂肪肝も糖尿病も怖くない
〈心得4〉「やせの脂肪肝」の人は減量よりもまず運動
〈心得5〉70代以上の人はごはんの量を減らさないほうがいい
〈心得6〉注目の「GLP-1」は、脂肪肝の改善薬としても期待大
〈心得7〉「足るを知る」生活こそ肝臓がよろこぶ生活
〈心得8〉肝臓外科医だから分かる、肝臓の驚異的パワー
〈心得9〉肝臓が悪い人は軽く10歳老けて見える
おわりに
肝臓は何歳からでも若返らせることができる