
「♪おりお~、めいぶつ~、♪かしわめし弁当~♪」。JR折尾駅に列車が停車するたびにホームにこだまする “弁当売り”の呼び声。大正10年(1921年)の創業以来、今も「立ち売り」を続けていることで有名な駅弁、東筑軒の「かしわめし」だ。
北九州市八幡西区のJR折尾駅は、明治24年(1891)の開業以来、鹿児島本線と筑豊線の交差する駅で、列車の停車時間が長く、駅弁が売りやすい駅だったという。

そんな名物の駅弁のかしわめしが、コメの高騰を受け、ヘルシーに生まれ変わった。
創業以来変100年続く秘伝の味
九州地方では鶏肉のことを「かしわ」と呼ぶ。特に福岡では、炊いたご飯に、かしわやごぼうなどの具材を詰めたものを混ぜた「かしわめし」が、郷土料理として馴染み深い。元々、国鉄の門司運転事務所所長を務めていた東筑軒の創業者が、客のもてなしにも鶏肉を使う福岡の食文化に目を付け、独自の駅弁を開発したのだという。

かしわめしは、鶏肉とガラでとったスープに秘伝の調味料を加えて炊いた国産うるち米のご飯に、甘く煮た鶏そぼろや錦糸卵、刻みノリをあしらっている。100年以上にわたり庶民や観光客に愛されてきた人気商品だ。年間40万個あまりが売れる大人気の駅弁だが、3月1日、遂にリニューアルを余儀なくされた。コメの価格高騰だ。
コメの価格高騰で大麦ブレンド決断
農水省が、コメの流通を円滑にするために初めて行う備蓄米の入札を3月10日から実施する。しかし、いつから、どれくらい値下がりするかは不透明だ。原料である国産うるち米の仕入れ値が、この半年で約2倍に跳ね上がった。東筑軒では、これまでも食材などの価格高騰を受け、小刻みに値上げしてきた。2024年9月には、サイズの大きな弁当「大」の値段が970円となっていたが、それも限界に達したのだという。

なんとか1000円を超えない方法を模索した結果、辿り着いたのが、コメより安い国産大麦を1割ブレンドすること。大麦がふっくらとなるよう炊き方を工夫し、これまでより、もっちりした食感になった。

気になる客の反応だが、いざ提供してみると「大麦ですか?全然気づきませんでした」と常連客も満足そうな表情。東筑軒の佐竹真人社長も、創業以来初の試みに、ほっと胸を撫で下ろしていた。試行錯誤の末、大麦を混ぜる決断をした。健康面にプラスの要素も加わるのではと期待している。「大麦は、腸内環境が良くなることもあるし、カロリー的にも高くはないと聞いているので、ぜひ新しい食感の『かしわめし』を試して頂きたい」と佐竹社長は、笑顔で語る。

ヘルシーに進化した伝統の「かしわめし」。地元の常連客や鉄道ファンはもとより、今後も多くの人に愛され続けることになりそうだ。
(テレビ西日本)

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