
住民8人の島をイノシシが占拠 カメラの前を“ウリ坊10頭”の行列が…瀬戸内の離島で起きている異変【広島発】
「このままでは島が乗っ取られてしまう…」 わずか8人が暮らす広島・生野島では島民の数をはるかに超えるイノシシに占拠されたような状態になっている。海を渡って移り住むイノシシ。瀬戸内に広がる異変を取材した。
島から島へと移り住むイノシシ
橋でつながっていない有人の離島、大崎上島町の生野島。約20年前まで、島にイノシシは1頭もいなかった。

しかし…
五十川裕明 記者:
あ、いました!いました!建物の陰に逃げ込むイノシシが1頭確認できました

取材班が島に入ると、簡単にイノシシを発見することができる。
兵庫県立大学・栗山武夫 准教授:
瀬戸内海は島と島の距離が近いですから、本州か四国から入ったイノシシがそこで増えて、より良い環境を求めて近隣の島に次々と移ってくると。広島県内の離島ほぼ全域に渡ってイノシシが住んでしまっているというのが現状です

監視カメラに映る“ウリ坊の行列”
9月20日、兵庫県立大学の自然・環境科学研究所の研究グループが調査のため生野島に入った。

瀬戸内で起きている「異変」を聞きつけ、2023年6月から複数の地点にセンサーカメラを設置。イノシシの生息数の把握に乗り出した。

兵庫県立大学・栗山武夫 准教授:
動物が通るとカメラがオンになって撮影が開始されます
夜間、カメラの近くを通るイノシシ。しばらく立ち止まり、カメラを警戒するように見ていたが、そのまま立ち去った。

その後ろに、なんと約10頭のウリ坊が連なって映っていたのだ。

島に上陸した個体はこうして繁殖を繰り返し、昼夜関係なく、あたかも自分たちが島の主かのように動き回っている。
島民より多い生息数 レモン畑にも被害
イノシシが生息する痕跡は住宅地にも及んでいる。
兵庫県立大学・栗山武夫 准教授:
普通は森林だけなんですけど、森林の外にもかなり範囲を広げてしまっているので、もう人が暮らすところはすごく限られてしまっている状況です

島民:
この島に住んでいるの何人だと思っているの?8人しかおらんのやで。そりゃ、イノシシは何十匹もおるわな。100頭では済まないんとちゃう?

島で暮らす8人のうち最年少は58歳の西野道春さん。ほぼ毎日、野生のイノシシと遭遇しているという。

瀬戸内の特産品であるレモンの木がイノシシに折られている様子を見せてくれた。
生野島 島民・西野道春さん:
去年(2022年)まではなかったけど、今年くらいからイノシシが入ってレモンを…。この木も多分、実がなっていたはずだからね

畑のフェンスを乗り越えて農作物を荒らしたり、道端の石垣を崩したりとやりたい放題のイノシシに、高齢化が進む島民は圧倒されている。
生野島 島民・西野道春さん:
抜本的な解決策はもうない。これが10年続くと島民が90歳近くになって、一緒に対策をやりましょうというのも難しくなる

「将来の日本の縮図が起きている」
TSSの調べでは、広島県内には橋でつながっていない有人の離島が15あり、そのすべてにイノシシが生息し、農作物など何かしらの被害をもたらしていた。

兵庫県立大学の研究グループは、まだ報告が上がっていない無人島にもカメラを設置して海を渡るイノシシの実態を解明したいと考えている。

兵庫県立大学・栗山武夫 准教授:
将来の日本の縮図が今、生野島ですでに起きていて、他の島でも次々と起こるんじゃないかと危惧しています

人口減少が進み耕作放棄地が拡大したことで、イノシシが人里に入り込む可能性は離島に限った話ではなくなっている。耕作放棄地や竹林はイノシシにとって格好のエサ場になる。
兵庫県立大学・栗山武夫 准教授:
すべての島で再びイノシシがいない状態に戻すというのはかなり難しい現状なので、生息数を低密度にして被害を抑えつつ、共存の道を探っていくことも1つの手かなと思います

全国に広がるイノシシ問題。中でも、島と島の距離が近く人口減少が進む瀬戸内の離島はイノシシが生息しやすい場になってしまった。繁殖スピードに対策が追いつかない現状…。実態の解明と“低密度に抑える対策”が急がれる。
(テレビ新広島)

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