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野田努  Jan 07,2015 UP

 年末年始は、妻子が実家へとさっさと帰るので、ひとりでいる時間が多く持てることが嬉しい。本当は、ひとりでいる時間を幸せに感じるなんてこと自体が幸せで贅沢なことなのだろう。そんなことを思ってはいけないのかもしれないが、年末年始、僕は刹那的なその幸せを満喫したいと思って、実際にそうした。
 たいしたことをするわけではない。ひたすら、自分が好きなレコードやCDを聴いているだけ。聴き忘れていた音楽を聴いたり、妻子がいたら聴かないような音楽を楽しんだり、しばらく聴いていなかった音楽を久しぶりに聴くと自分がどう感じるのかを試したり。もちろん片手にはビール。お腹がすいたら料理したり。たまにベランダに出たり。たまに読書をしたり。たまにネットを見たり。寝る時間も惜しんでひとりの時間を満喫した。
 そんな風に、ひたすら音楽を聴いているなかで、僕はディーン・ブランドの新作を気に入ってしまった。
 最初に聴いたときは、このところの彼のソロ作品の「歌モノ」路線だなぁぐらいにしか思わなかったのだけれど、家の再生装置のスピーカーでしっかり聴いていると、正直な話、この作品を年間ベストに入れなかったことを悔やむほど良いと思った。僕には、ハイプ・ウィリアムス時代の衝撃が邪魔したとしか言いようがない。

 たしかに、『ブラック・メタル』という(北欧のカルト的ジャンルとは無関係。むしろ人種的ジョークさえ含むかのような、深読みのできる)作品タイトルも、真っ黒なスリーヴケースも、そして、意味ありげで意味がない曲名も、ディーン・ブランドの調子外れの歌も、まあ面白いのだが、ハイプ・ウィリアムス時代から聴いているリスナーにとっては相変わらずといえば相変わらずで、「ああー、いつものディーン・ブランドだなー」で済んでしまう話だ。実際、僕もそう済ませていたきらいがある。

 ところが、年末年始のひとりの時間のなかで『ブラック・メタル』をじっくり聴いたときには、何か特別な作品に思えた。家にある、いろいろなジャンルの音楽を聴いているなかで再生したのが良かったのだろう。松山晋也さんが『ミュージック・マガジン』でこの作品を個人のベスト・ワンにしていた理由も、僕なりに納得できた。これは……言うなれば、セルジュ・ゲンズブールなのだ。もしくは、(他から盗用した)おおよそ全体にわたるギター・サウンドの暗い透明感からしてドゥルッティ・コラム的とも言える。


 
 これだけ世の中でEDMが流行れば、その対岸にある文化も顕在化するはずだ。ヒューマン・リーグがヒットした反対側ではネオアコが生まれ、ユーロビートが売れた時代にマンチェスター・ブームがあったように。
 ディーン・ブランドがこのアルバムの前半で、ギター・サウンドにこだわり、パステルズをサンプリングしていることも、そうした時代の風向きとあながち無関係ではないだろう。夕焼けを見ながら『ブラック・メタル』を聴いていると、えも言われぬ哀愁を感じる。ディーン・ブランドのくたびれた歌声と女声ヴォーカルとの掛け合いは、僕のブルーな気持ちをずいぶん和らげてくれる。ハイプ・ウィリアムスという先入観なしで聴くべきだった。
 とはいえ、ムーディーなまま終わるわけではない。『ブラック・メタル』は後半からじょじょに姿を変えていく。ダブがあり、ノイジーなビートがあり、最後のほうには最高のテクノ・ダンストラックも収録されている。


野田努

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