Movatterモバイル変換


[0]ホーム

URL:


ele-king Powerd by DOMMUNE
ele-king Powerd by DOMMUNE

MOST READ

  1. Stereolab ——日本でもっとも誤解され続けてきたインディ・ロック・バンド、ステレオラブが15年ぶりに復活
  2. Conrad Pack - Commandments | コンラッド・パック
  3. Eyed Jay - Strangeland | イアン・ジックリング
  4. Columns Stereolab ステレオラブはなぜ偉大だったのか
  5. Bon Iver ──ボン・イヴェール、6年ぶりのアルバムがリリース
  6. Chihei Hatakeyama & Shun Ishiwaka ――畠山地平と石若駿による共作、フィジカル盤の発売が決定。リリース記念ライヴには角銅真実も
  7. LA Timpa - IOX | LAティンパ、Christopher Soetan
  8. interview with Black Country, New Road ブラック・カントリー・ニュー・ロード、3枚目の挑戦
  9. Columns Special Conversation 伊藤ガビン×タナカカツキ
  10. ele-king vol.22
  11. GEZAN ──全国47都道府県と中国・上海などを巡るツアー・〈47+TOUR『集炎』〉の詳細を発表、ファイナルは日本武道館
  12. 恋愛は時代遅れだというけれど、それでも今日も悩みはつきない
  13. DREAMING IN THE NIGHTMARE 第2回 ずっと夜でいたいのに――Boiler Roomをめぐるあれこれ
  14. Stereolab ──ステレオラブが11年ぶりに来日  | ステレオラブ
  15. 釈迦坊主 - CHAOS
  16. Columns Special Conversation 伊藤ガビン×タナカカツキ | 『はじめての老い』刊行記念対談(前編)
  17. interview with Lawrence English 新しい世紀のために  | ローレンス・イングリッシュ
  18. すべての門は開かれている――カンの物語
  19. Stereolab ──再始動中のステレオラブが23年ぶりにシングル集をリリース
  20. Lust For Youth & Croatian Amor - All Worlds | ラスト・フォー・ユース&クロアティアン・アモール

Home > Reviews > Album Reviews > Hercules and Love Affair- Blue Songs

Hercules and Love Affair

Hercules and Love Affair

Blue Songs

Moshi Moshi

AmazoniTunes

野田 努  Feb 22,2011 UP

 前にも書いたことだが、今年の正月に静岡でデリック・メイのDJを聴いた。彼は、ロバート・オウェンスが歌う、あのたまらなくセクシャルなクラシック"ブリング・ダウン・ザ・ウォールズ"をスピンした。なんといってもあの曲は、オウェンスの喘ぎ声にも似た歌い方もさることながら、ベースラインがきまっている。ものの10秒でアドレナリンがこみ上げてくる、1986年あたりのシカゴ・ハウスのグルーヴ。2008年にハーキュリーズ&ラヴ・アフェアが〈DFA〉からリリースしたデビュー・アルバムにはそれがあった。"ブラインド"におけるアントニー・ヘガティの歌とアンディ・バトラーのトラックは、われわれを危険な領域に持ち上げた。そしてフランキー・ナックルズのリミックスがそのグルーヴを完璧なものにした。快楽の館、美しき蕩尽の世界、ようこそ、ディスコ/ハウスの楽園へ!

 ハーキュリーズは確信犯的なリヴァイヴァリストだ。2年前に登場したとき、彼らははっきりとクラブ・カルチャーにおける最良の場所にはドラッグとセックスがあると話し、その文化の復興について説いた。それはニューヨークのディスコ・アンダーグラウンドがエイズによって長いあいだ言えなくなっていた言葉でもあった。音楽におけるエロティシズムの追求は、最高のカリスマ性を備えたヴォーカリストとティム・ゴールドワーシー(DFA)の力を借りて走り出した。バトラーは70年代のディスコと80年代のハウス・ミュージックを研究して、強い曲をいくつも作った。それら結実が2008年の素晴らしいデビュー・アルバムだった。この度発表した『ブルー・ソングス』は2年ぶりのセカンド・アルバムである。

 そしてそれは......僕には凡庸なセカンド・アルバムに思える。ヘガティの声とゴールドワーシーのドラム・プログラミングはたしかに強力だったけれど、彼らの不在だけがアルバムのグレードを落としているとは思わない。単純な話、新作にはデビュー・アルバムにあった強さがないのだ。中途半端にポップを志向しているうえに、説得力の乏しいバラードまでやっている。その凡庸な展開が前作にあった危うさを水で薄めている。がっかりしたが、それだけ僕は楽しみにしていたのだ。
 まったく魅力を欠いたアルバムというわけではない。"マイ・ハウス"は1986年あたりのシカゴ・ハウスのベースラインを持った曲で、間違いなくベスト・トラック。シングル・カットするとしたらこれだろう(12インチで出たら買うだろう......)。ディスコのベースとドラマティックなストリングスが掛け合う"ペインティッド・アイズ"も、ミディアムテンポの綺麗なラヴ・ソング"レオノラ"も、あるいは"ボーイ・ブルー"のようなチルなバラードも悪くはないのだけれど、まあとにかく"ブラインド"のように感情を釘付けにするような強さがない。ただ、そのまま、ぼーっと聴き流してしまうのだ......ドナ・サマーのシングルのB面のように。

 楽しみにしていた作品がいまひとつだったときは悲しいものだが、考えてみればこの2月はインパクトの強いアルバムが重なっていた。ジェームス・ブレイクトロ・イ・モアをはじめ、ワイアーの新作も良かったし、ザ・ストリーツの最後のアルバムも実はこっそり聴いていた。今日は自転車で下高井戸まで行ってスラックの新しいアルバムを買ってきた。同じ時期に競合が多すぎたというのはある。時間をおいてまた聴いてみればもうちょっと好きになれるかもしれないけど......。

野田 努

Facebook  TWITTER  PAGETOP

ele-king™ © 2025 All Rights Reserved.


[8]ページ先頭

©2009-2025 Movatter.jp