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計画通りにいかなくても大丈夫。子育てをきっかけに「計画を立てすぎる」のをやめた|遠藤光太

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やめたこと・遠藤光太さんエッセイ

誰かの「やめた」ことに焦点を当てるシリーズ企画「わたしがやめたこと」。今回はライターの遠藤光太さんにご寄稿いただきました。

事前に「綿密な計画」を立てることで不安な気持ちをコントロールしていたという遠藤さん。しかし子どもが生まれ、計画通りにいかないことを何度も経験するなかで「計画を立てる」よりも「周囲の状況を観察し、臨機応変に対応すること」の大切さに気づいたといいます。


例えば、高校時代の定期テスト。B5のまっさらな紙に定規で線を引いて、テスト当日までの勉強計画を立てるのがルーティーンだった。

定期テストは出題範囲が定まっていて計画を立てやすい。その通りに勉強をすれば、自ずと良い結果が出た。

「計画を立て、その通りに実行すること」は、私にとって安心して生きるための手段だった。

私は「計画大好き人間」だった。子どもが生まれるまでは。

「計画」で不安を減らしていた

私は子どもの頃から「不安」の強い性分だった。慣れない場所に行くとひどく恐がり、自宅でも「洗濯物が風に飛ばされないか」と不安がった。

だから無意識に、細かな計画を立てるようになっていった。未知の物事でも、立てた計画の通りに進むことで不安を減らすことができた。定期テストの計画的な勉強は、その典型例だ。

やめたこと・遠藤光太さんエッセイ

「計画的に努力を重ねられる」と書けば、「良いことじゃないか」と思われるかもしれない。

しかし、そう簡単な話ではなかった。

私には計画が少しでも狂うと大パニックになり、全てをゼロからやり直してしまう「リセット癖」があった。

例えば、大学生の頃の恋人(現在の妻)とのデートでは、入念に計画を立てるものの、ちょっとした予定の狂いがあると「もう家に帰りたい」とデート自体を投げ出そうとして、恋人を困惑させた。

今になって考えてみると、AIみたいだ。テスト勉強のような閉じたフレームの問題は解ける。

しかし、他者が介在する事象はいつも不安定で、予測不能なことが起こり、計画は必ずどこかで崩れる。開かれた世界へと飛び出した途端に私の計画は力を失い、その解決策として、未熟な私は「リセット」を選択していたのだ。

生後3カ月ではじまった「仕事と子育ての両立」に大パニック

私は社会人になってからすぐに結婚し、娘が生まれて親になった。

「会社員生活と子育ての両方をこなせるだろうか」という不安から、毎日のスケジュールやタスクの管理はもちろんのこと、1年ごとの貯蓄計画まで立てた

大きな模造紙に娘が成人するまでのマス目を書き、生活費や教育費、住宅や車の購入費用を緻密に計算し、そこから逆算して収入と生活費の目標額を設定した。

しかし、赤ちゃんに計画は通用しなかった。腹が減れば、泣く。排便をしたくなれば、出す。生理現象に忠実で、計画なんて知ったことではない。日によって全く異なるのが子育てだった。

さらに保育士の妻は人手不足の職場からの要請に応じて、産後3カ月で仕事に復帰していた。娘は妻が勤務する保育園に預けることになり、共働きをしながら0歳3カ月の娘を育てる毎日が始まった。

妻は激務だったので、私が娘の送り迎えや食事など主な育児を担った。娘が急に入院したときには夫婦交代で付き添うなど、「共働きしながらの育児」は予定通りにいかないことの連続で、大パニックだった。

娘が0歳7カ月になった頃、あまりにハードな毎日に私のメンタルは崩れ、勤務先を休職することになった。「○年後には年収○○円稼げるようになる」と、かつて模造紙に書いた目標は目の前の生活において全く意味をなさず、私の計画は瞬く間に崩れ去っていった。

子育てには「計画」が通用しない

テスト勉強と違い、子育てには「計画」が通用しない。むしろ計画に縛られることで、自分や家族を守れなくなってしまうと悟った私は「やり方を変えなければ」と考えていた。そんなときヒントを与えてくれたのは娘だった。

休職中、家事・育児に専念していた私は、娘をよく観察しながら、自分の動きを娘に合わせるようになった。

例えば、オムツを替えるとき。まずは娘の脚の動きを観察し、それに合わせて脚をキャッチし、シュッとオムツを上げる。無理やりはかせようとするよりも、娘の動きに合わせた方が、スムーズに進むことに気づいた。

やめたこと・遠藤光太さんエッセイ

「今の私に必要なのはこれかもしれない」と思った。私の計画を押しつけるのではなく、家族の動きに合わせて私が動く方がうまくいくのかもしれない、と。

振り返ると、自分の固定観念は強かった。「男は強くあらねばならない」「家族の『主人』にならなければならない」「父・夫として、稼ぎ頭でなければならない」と思い込み、計画を立て、それを実行することが家族を支える唯一の手段だと思っていた。

そんな考え方だから休職中も「少しでも早く復職しなければ」と焦っていたが、妻には「もっと休んでほしい」と言われた。「復職して早く稼ぐことよりも、しばらくの間は家事・育児の主体をあなたが担うことで家庭を支えてほしい」と。

妻の言葉から、自分の計画は独りよがりだったと気づかされた。稼ぎ頭になれなくても、私は私のやり方で家族を支えられればそれでよかったのだ。

そうして、7カ月の休職を経て復職。日々がめまぐるしく進んでいくなかで、娘が5歳になった頃、保育園への「行き渋り」が出てくるようになった。以前の「計画大好き人間」の自分のままだったら、「仕事に間に合わなくなるから」と、無理にでも行かせていたと思う。

でも、家族に合わせて動く構えに変わっていた私は、仕事に融通が効く日は無理に行かせず、一緒に過ごすよう心がけた。

いわゆる「小1の壁」が迫ってきた頃には、早い時間帯の帰宅や学童へのお迎えにも対応できるよう、働き方を見直しフリーランスになった。「不安」が強い性格だからこそ、「計画」で備えるのではなく、柔軟にリアクションできる体制を整えたのだ。

やめたこと・遠藤光太さんエッセイ

「計画」から「応答」へ

人生は想定外のことだらけだ。

赤子は理由もなく泣き喚くし、仕事で成功しようと思っていたのに体調を崩して休職してしまうし、子どもは突然「きょう、ほいくえんにいきたくない」と言い出す。

事前にどれだけ「計画」を立てても、どうせその通りにはいかないし、その都度リセットしたり大幅に見直したりしていては膨大な労力がかかり、かえって燃費が悪い。

ならば、普段は肩の力を抜いて状況を観察しよう。ダラダラしているように見えるぐらいに。そして状況に合わせて、リアクションしていけばいい。

最近読んだ本に、人類学者ティム・インゴルドの『応答、しつづけよ。』(亜紀書房/訳:奥野克巳)がある。

インゴルドは、応答(コレスポンディング)には3つの特徴があるという。それは、プロセスであること。開放系であること。対話的であること。

かつての私は、閉じた世界のなかに自分や家族を押し込めて、一方的なやり方を適用しようとしていた。それはプロセスでもなく、開放系でもなく、対話的でもなかった。

「計画」から「応答」へ。

私はここで原稿を書き終えて、子どもの動きを観察しよう。一人で計画を立てるのではなく、妻の言葉に耳を傾けよう。貯蓄計画の模造紙を捨て、応答に備えてダラダラしておこう。


編集:はてな編集部

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著者:遠藤光太

遠藤光太さんプロフィール

フリーライター。平成元年生まれ。2児の父。執筆分野は、社会的マイノリティ、子育て、福祉、表現、デザイン、地域、学び、コミュニティ、スポーツ、会計など。著書に『僕は死なない子育てをする 発達障害と家族の物語』(創元社)がある。
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