2016/3/10 Thu
Instagram広告の活用と今後の戦略(前編)
小関 悠 氏
Instagram マーケティング サイエンス リード
田中 徹 氏
Instagram クリエイティブ ストラテジスト
増田 光恵
株式会社サイバーエージェント インターネット広告事業本部 インフィードコンサルティング局 局長
舟橋 大樹
株式会社サイバーエージェント インターネット広告事業本部 インフィードコンサルティング局 マネージャー
写真・動画共有SNSとして急成長したInstagramは、グローバルでの利用者数が4億人(2015年9月時点)を超え、日本国内でも拡大を続けています。またインターネット広告市場においても、2015年10月にセルフサーブ(運用型)広告がローンチしたことで、さらに注目度が高まっています。
本日はInstagramのマーケティング サイエンス リード 小関氏、クリエイティブ ストラテジスト田中氏をお迎えし、当社インターネット広告事業本部 増田、舟橋と対談を実施。Instagramのサービス方針と広告展開について、現状と今後の戦略を伺いました。
前編と後編に分けてお伝えします。
Instagramの特性と利用者の繋がり
CA増田: まずはメディアとしてのお話を伺いたいのですが、私もいち利用者として、InstagramとFacebookを利用しており、両者で使い方も友達との繋がり方も違うと実感しています。Facebookと比較して、Instagramならではの利用者層や利用者の特性は、どのようなことがありますか?
小関氏:Instagramの利用者数は、国内では2015年6月末時点で810万人を超えています。それだけ増えてくると、前提として、様々な属性や使い方があると思っています。なので、よく「女性が多いでしょう」とか「若い人が多いでしょう」などと聞かれますが、実際は男性も女性も、幅広い年齢層の方にご利用いただいています。
その中でも、いくつかの特徴はあると思っています。ひとつは、SNSとして、リアルの友達だけでなく、知り合いではない利用者とも繋がる傾向があることです。友達でなくても、写真が綺麗だからとか、自分の趣味に関連する写真をたくさんアップしているからなどといった理由でフォローしますし、さらに日本の利用者に限らず海外の利用者でもどんどん繋がっていける。これは、今までの、リアルの友達でないと繋がりにくいというメディアとは、違う特性だと思っています。
CA増田:そうですね。人との繋がり方については、著名人も含めてFacebookよりInstagramの方が距離は近いと感じます。
小関氏:あと、昨年の調査で明らかになったのは、Instagramは他のメディアと比較して、利用者にとって特に心地のいい、落ち着く場所と認識されているようです。それは、自分の好みの写真がタイムラインに流れていて、ネガティブな話題があまりないからだと思います。
田中氏:私も、両者にはきちんとした違いがあると思っています。雑誌でいうと、Instagramの方が、例えば「GQ」や「VOGUE」のような高級誌や、趣味の雑誌に近いイメージです。別の例えで言うと、Facebookはどちらかというとテレビに近くて、Instagramは映画に近いと思います。
あとInstagramはFacebookに比べて人物の画像が少ないんですよね。自分の写真をアップするよりは、非日常の特別な写真をアップする傾向にあると思います。
小関氏:そうですね。でも一方で海外を見てみると、面白い写真や動画もすごく多くて、決して格好をつけているものばかりではないんです。なので、日本でももっと、いろいろな使い方が増えていくのではないかなと思っています。
ユーザーアクションと独自の利用方法
CA舟橋:Facebookと比べて、Instagramのユーザーアクションの特徴はありますか?Facebookではリアクションボタンの多様化など、コメント以外でもアクションの幅が増えましたが、Instagramでは、ハートマークのいいね!のみ、という特徴もありますね。
小関氏:調査によると、Instagramはコメントやいいね!を含めたエンゲージメント率がすごく高く、利用者の楽しみ方にも特徴があります。例えば、投稿の際に面白いハッシュタグをつけたり絵文字を入れたりして、より面白いビジュアルでコミュニケーションをしようとする傾向があります。Facebookや他のSNSだと、ひとつの話題があってそれに対して会話をする感じだと思いますが、Instagramは、もう少しいろんな意味でゆるい。会話ではない、もっと新しいコミュニケーションになっています。
CA舟橋:ハッシュタグ検索もよく利用されていますよね。
小関氏:検索については私も調査して驚きました。まだInstagramに対して「単純に写真をアップするためのアプリだろう」と思われる方もいらっしゃるのですが、実は写真をアップしない利用者も、何か面白いことがないかとInstagramを利用することが多いんです。例えば、良いお店を探すために検索をしたり、最近では私物の写真をアップしてフリマのように活用する方も多いのでそれを見に来ることもあります。
CA増田:私もアクセサリーを探している時に、Instagramであるクリエイターの方を見つけてコンタクトを取ったところ、その方のアカウントが作品集のようになっていました。コメントやハッシュタグもたくさんついていましたね。
小関氏:そんな活用の仕方があるとは、嬉しいですね。
CA舟橋:ハッシュタグは、Instagram独自の文化が既にできていますよね。料理の写真をアップする際に「#おうちごはん」など関連するタグをつけるといいね!数が倍以上になり、タグ検索をして写真を見に来る人が多いのだと実感しました。「#写真好きな人と繋がりたい」などハッシュタグでコミュニティを作っている利用者もいます。
小関氏:もう我々でも知らないような利用者独自の使い方も、世の中にたくさんあると思います。ファッションや献立など、別の発想を得るためにInstagramを使うことがよくあるようですね。
CA増田:御社では、FacebookとInstagram、それぞれこういうふうに使い分けてほしいなどの意図はあったりしますか?
小関氏:意図は特になく、自由に使ってほしいなと思いますし、おそらく自由に使っているうちに自然と使い分けると思うんですよね。基本的にはFacebookは日常の会話で、Instagramは日常を飛び越えて知らない人とも気軽に繋がれて、新しい情報が見つかるということだと思います。
広告メディアとしてのInstagram
CA増田:次に、広告メディアとしてのお話も伺いたいと思います。セルフサーブ広告によって広告の掲載数もすごく増えましたが、実際にローンチしてみていかがでしょうか?
小関氏:ひとつは、想定より様々な形で広告を活用していただいていることですね。例えば多くの方がファッション系の広告はInstagramに合いそうだと思っていたと思いますが、それだけではなくて、旅行、家電、日常品、自動車、ゲーム・・様々なジャンルの商品で効果が出ています。特にゲームは、最初はInstagramに広告が出てきて、「え?合うのかな?」と思われた方も多いと思いますが、実際にやってみると、非常に多くの利用者がゲームをインストールしたという結果になりました。
広告とは言っても、いろいろなバリエーションがあって、ブランディングを目的にした広告もあれば、ダイレクトレスポンスを目的にしたものもある。始めてみると各社いろいろな使い方をされていて面白いなと感じています。
Instagramは、たくさんアカウントをフォローしていただくと様々な投稿がバーッと流れてくるので、利用者からすると「これは友達」、「これは芸能人」、「これは広告」といった意識があまりなくて、良いものだったら止まって見てみるという感じだと思います。なので、広告主企業もやはり、良い投稿、質の高い広告を作っていただくと、利用者もきちんと立ち止まって「じゃあ、ここから商品を買ってみよう」とか、「今度この商品を店舗で見てみよう」という行動が起こせるんじゃないかなと思います。
Instagramの広告クリエイティブの特性
CA増田: Instagramの広告クリエイティブの特性として、どのようなことが挙げられますか?
田中氏:基本的には、Instagramは広告として考えると一見制限があるメディアなんですよね。まず、音声に頼れない。それから、あまり文字も入れない方が良い。そういう制限の中でも、上手く使うと高い効果を出すことができます。セルフサーブ広告が始まったことで、広告出稿企業の間口が広がりましたが、僕らの役割は、クリエイティブにおける良い事例やノウハウを増やしでいき、クライアントの皆様や利用者の皆様にも提示していくことだと思っています。
CA増田:Instagramの広告は画像が大きいですし、フィードを流して見るというメディア特性からも、視認率が非常に高いですよね。
田中氏:視認率は高いのですが、その分すごく厳しいです。タイムラインにバーッと流れてくる中で、指を止めさせるようなクリエイティブにしないとなりません。
動画広告は最初の3秒が重要
小関氏:Instagramの動画広告は強制視聴ではないので、クリエイティブが非常に重要です。3秒以内に止めることができないと流されてしまうので、社内では「3秒オーディション」と言うこともあります。
田中氏:テレビは、観ている限りずっとコンテンツが流れていますよね。でも、Instagramはそうではありません。特に若い人はスマホに慣れていて自分の好みのクリエイティブにすぐに止まるわけです。流されてしまうとスコアにならず、ダメでしたという結果になります。
テレビCMでは、全体が30秒のコマーシャルの場合、20秒くらいに「これは何だろう」と興味を持たせ、最後に「そういうことだったのね」とオチをつけるやり方もありましたが、Instagramでそれはありえない。3秒で「え!?」と興味を持ってもらわなくてはなりません。
CA増田:もともとInstagramの動画広告は、30秒までのショートムービーしか出せませんでしたが、60秒まで拡大したのは、どのような意図があったのでしょうか?
田中氏:60秒の方が良いということではなく、長い尺の方が向いているものと、向いていないものがあるからです。現状は、大体平均すると20〜30秒くらいが最も、利用者が最後まで動画を観きってくれてスコアが良いです。ただ、ブランドのメッセージを伝えるために、きちんと起承転結のある動画を制作する際には、60秒の動画がすごく有効だと思っています。ダイレクトな利用者の獲得だけでなく、ブランド認知など、目的に応じて動画のバリエーションを増やすために、秒数の制限を伸ばしました。
小関氏:あと、Facebookも同じですが、動画広告を3秒観てくれた人は、30秒でも60秒でも最後まで観る人が多いんですよね。特にInstagramは、忙しい時よりは余裕がある時に観る方が多いと思うので、ゆっくり動画を観る余裕もあるんじゃないかなとは思っています。
ですので、ぜひ自信作があれば、長い尺のものを使っていただきたいです。ただ、15秒でも60秒でも、最初の3秒がすごく重要というのは変わらないと思っています。
小関 悠 氏
Instagram マーケティング サイエンス リード
前職ではインターネットをはじめとする情報技術分野の調査研究、コンサルティングに従事。2012年よりFacebookに入社、Instagramの利用調査やInstagramの広告効果検証を担当。
田中 徹 氏
Instagram クリエイティブ ストラテジスト
FacebookやInstagram広告のクリエイティブのサポートをするための専門チームである、クリエイティブショップに所属。企業の目的をInstagram広告で実現するため、Instagramに最適のクリエイティブを提案、アドバイスする。
増田 光恵
株式会社サイバーエージェント インターネット広告事業本部 インフィードコンサルティング局 局長
2007年に株式会社サイバーエージェントに入社し、インターネット広告事業本部にてアカウントプランナーとして従事。2013年に、SEMコンサルティング局の局長に就任。2015年にソーシャルメディア広告のコンサルティング業務を行うインフィードコンサルティング局の局長に就任。
舟橋 大樹
株式会社サイバーエージェント インターネット広告事業本部 インフィードコンサルティング局 マネージャー
2012年に株式会社サイバーエージェントに入社し、インターネット広告事業本部にてアカウントプランナーとして従事。2015年にソーシャルメディア広告のコンサルティング業務を行うインフィードコンサルティング局のマネージャーに就任。
この記事が気に入ったら
いいね!しよう
の最新情報をお届けします