2025年、リテールメディアは新たな成長の波とともに、大胆なイノベーションを展開していきます。これは憶測ではありません。Criteo の提供により Coresight Research が行った最新レポート「Retail 2025: 10 Trends Shaping the Retail Media Market（リテール 2025：リテールメディア・マーケットを形作るトレンド10選）」に基づいた、詳細な分析結果です。AI を活用したパーソナライゼーションから、新しい広告フォーマットの登場まで、業界は広告主のニーズや消費者の期待にこたえる形で進化を続けています。
2025年、リテールメディアはどこまで成熟し、発展するのでしょうか？トレンドを探る前にまず、市場の現状と背景を確認しておきましょう。
Coresight の分析によると、世界のリテールメディア市場は2025年に1,795億ドルの規模に到達する見込みで、前年比15.4%の成長が見込まれています。2028年には成長速度こそ落ちるものの、2桁前半の成長率を維持することが予測されています。また、リテールメディアが広告市場全体に占めるその割合も拡大し続けています。Coresight は、電通のデータをもとに、2025年にはリテールメディアの割合が23.3%まで増えると予想しており、7724億ドルの広告市場の中で存在感を増していくと推計しています。
市場でのリテールメディア・ネットワーク（RMN）の成長を今後も助長する追い風には主に3つあります。1つ目は、購買行動におけるデジタルチャネル使用が増加したことにより、ファーストパーティの消費者データが豊かになったこと。これがテクノロジーの発展と相まって、ブランドがターゲットを絞った広告キャンペーンの作成に使用できるRMNの拡大につながっています。2つ目に、AI と機械学習の進化により、こういったデータの分析がしやすくなり、広告在庫とターゲティングを最適化できるようになったことが挙げられます。AI は、キャンペーンの自動化やセグメンテーション、パーソナライゼーションに至るまで、リテールメディアのエコシステムの全方向にメリットをもたらします。3つ目は、クローズドループ型のアトリビューションです。これにより、広告主は売上とマーケティング施策を直接つなげることができ、キャンペーンの効果をより正確に計測できるようになります。この3つが合わさることで、リテールメディアの成長スピードと規模に相乗効果が生まれます。
AI は価格設定やマーチャンダイジング、在庫管理といった機能を強化し、小売業界に革命を起こします。リテールメディアにおいて、AI は大量の取引データや行動データを活用して大規模なパーソナライゼーションを可能にします。顧客プロフィールを構築し、最適化された広告でさまざまな消費者セグメントに対しh手最適化された広告を提供することができます。さらに、生成 AI の進化により、検索トレンドに基づいたダイナミックな広告のカスタマイズなど、リアルタイムのパーソナライゼーションが可能になります。
リテーラーは、ROAS の大幅な向上、サイト訪問者数や売上増加など、AI を活用したメディアの恩恵をすでに受けています。AI は今後もデータ分析の改善や顧客のセグメンテーションを通して、パーソナライズされた広告の配信を改善していくと予想されています。
このトレンドの背景にあるのは？
生成 AI やデータ処理、洗練された機械学習アルゴリズムのような AI の進化により、
リテーラーによるファーストパーティ・データの活用方法が大きく変わりつつあります。また、アドテクノロジー企業も AI の活用範囲を広げ、次世代のオーディエンス・ターゲティングに向けた消費者データの分析や商品のレコメンド、予測入札に AI を活用しています。
プログラマティック広告は、広告購入プロセスの自動化や効率の向上、データ分析を活用した広告の関連性の最大化を通じて、リテールメディアの世界を変えつつあります。
このトレンドの背景にあるのは？
ターゲティング広告効率の追求：ブランド広告主にとって、リテールメディアの効率性はROASを証明する重要な要素です。プログラマティック広告は、正確なターゲティングからリアルタイムのキャンペーン最適化まで、ブランド広告主が広告キャンペーンを最適化し、自動化する上で役立ちます。
テクノロジーは消費者の行動や好みに大きな影響を与え続け、リテーラーはより効率的に消費者にアピールするために広告フォーマットを拡充する必要に迫られています。スポンサード広告やオンサイト・ディスプレイ広告などの従来の広告フォーマットだけにとどまらず、リテールメディア市場で成長し続けるために新たな広告フォーマットへのニーズが高まっています。ブランド広告主は、RMN におけるサービスの一環として、デジタルクーポンやソーシャルメディアでのプロモーションなど、さまざまなプロモーションツールが提供されることに期待を寄せています。また、デジタルプロモーション・ツールは、店頭でのプロモーションやデジタルサイネージなど、物理的なチャネルにも広がっています。
このトレンドの背景にあるのは？
消費者行動の変化：ユーザー生成コンテンツ（UGC）やインフルエンサーによるコンテンツなど、買い物中のオンラインのタッチポイントは増え続けています。この変化は、 RMN が新たな広告フォーマットを模索するチャンスでもあります。ゲーミフィケーションやソーシャルプロモーションなどの新しいフォーマットを活用することで、ブランドは広告キャンペーンの投資対効果を最大化することができます。
オフサイトのリテールメディアは数年先にリテールメディアのエコシステムに大変革を起こすと予測されています。2025年はその転換点となる見込みです。従来型のメディアやソーシャルメディア・プラットフォームとの戦略的パートナシップは、リテーラーが保有するのメディアの枠を超えてカテゴリーを拡大し、ファーストパーティ・データによるクローズドループ型のアトリビューションをオープンインターネットにもたらしています。これにより多くの広告枠とエンゲージメントの機会が増え、（利益率は低いものの）新たな収益源が生まれています。 Instacat と Google の提携や Walmart による Vizio の買収など、2024年に結ばれた重要なパートナシップが子のトレンドを牽引しています。Coresight は、小売業者が広告のリーチを拡大し、より広範かつ独自のオーディエンスにアプローチするために、大手メディア企業との戦略的パートナーシップを積極的に推進すると予測しています。
このトレンドの背景にあるのは？
新たな収益源の可能性：オンサイトのリテールメディア市場はひっ迫しており、競争も激しくなっています。ブランド広告主の予算は無制限ではなく、広告在庫に対する需要が頭打ちになることも考えられます。つまり継続的な成長のためには RMN の変革と競争力のある差別化が欠かせないということです。一方、オフサイトのリテールメディアは、ブランド広告主に大規模なオーディエンスを提供することでリーチを拡大し、リテーラーの収益の多様化に貢献しています。
フルファネル戦略：ブランド広告主は、フルファネルの展開を実現するリテールメディアの価値を認識しつつあります。オフサイト広告は、オープンインターネットでの買い物全体において、ブランドが消費者をターゲティングすることを支援します。
店頭のリテールメディア広告は、依然として、リテーラーにとって重要でありながら進化の余地があるチャネルです。Coresight Research によると、2025年のオフラインチャネルのシェアは米国の小売店全体で77%を占めると予想されています。リテーラーはスマートカートやデジタル・エンドキャップ、ストアラジオ、クーラースクリーンなどのデジタル技術革新に投資し、ファーストパーティ・データを活用した、店内での買い物体験の強化を図っています。現段階では測定の課題があるため、リテールメディア広告が店舗にもたらす収益は限られていますが、リテーラーは今年も店頭のリテールメディア広告を検証用のチャネルとして活用し、戦略を試しつつ、改良していくと予想されます。
このトレンドの背景にあるのは？
店頭広告のパーソナライゼーション：スマートカートやセルフスキャナーなどの革新的なデジタルツールを活用し、リテールメディア広告と組み合わせることで、広告を店内の各消費者に合わせてパーソナライズすることができます。さらに消費者の購入意欲が高まっているタイミングで配信し、消費者にアプローチできます。
高まる消費体験向上のニーズ：Walmart の「ライブイベント」や店頭での実演販売のような新しい方法の店頭広告を実施することで、消費者にアプローチし、見込み客との関係を深めることができます。また、店舗の売上データを活用して消費者のプロフィールを特定し、各個人により適した体験を提供できます。
小売企業がパートナーシップを通じてオープンウェブへのメディア提供範囲を拡大するにつれ、リテールメディアはフルファネル広告ツールへと進化しています。これにより、ブランド広告主は、購入までの道のりの全行程において消費者の意思決定に影響を与えることができます。
現時点では、リテールメディア広告ではオンサイトに重点が置かれています。しかし、Coresight では、フルファネルのマーケティング目標を達成するため、リテーラーが広告インベントリをオフサイトに移行していくと予測しています。また、ブランド広告主は、ショッピングジャーニーの全段階で消費者にアプローチできる一元化された広告体験を提供し、投資対効果（ROAS）の最大化を期待するようになりました。リテールメディア広告は、オフサイトに拡大されることで、新規顧客の獲得や既存の顧客維持に加え、ソーシャルメディアや CTV など、複数のチャネルやプラットフォームにわたり売上を向上させます。また、ブランドがフルファネルに重点的に取り組むことで、オフサイトのリテールメディア広告が推進されていきます。
このトレンドの背景にあるのは？
幅広いプロモーションツールを RMN の一環として提供することに対するブランド広告主の需要はますます拡大しています。リテールメディア広告をフルファネル広告ツールとして使用したい意図が読み取れます。Coresight Research がリテールメディア広告に関して行ったアンケートによると、ブランド広告主が RMN に期待するプロモーションツールの数は平均で3.4となっています。
新規顧客獲得コスト（CAC）が上昇していますが、これは高価な広告に起因していると言えるかもしれません。たとえば、マーケティング企業 LocaliQ によると、2024年の第一四半期における米国のクリック単価（CPC）は、前年比で10％高くなっており、その前の年の2%上昇に比べて急上昇しています。CAC の高騰により、広告予算をリテールメディア広告に寄せ、ターゲットを絞った、関連性の高い広告キャンペーンを行うブランド広告主が増えています。効果的なマーケティングによるコンバージョンの可能性が高まり、CAC の上昇によるプレッシャーの緩和に役立つからです。
ファーストパーティの消費者データは RMN における成功の基礎となるものです。リテーラーには、効果的な広告キャンペーンを行うための、安定的で整理された、実用的なデータが必要です。ブランド広告主と提携しデータやインサイトを強化することは、広告キャンペーンが最適化され広告費を増やす上で役立つでしょう。Coresight の調査で、リテールメディア広告への支出にポジティブな影響を与えているものについてブランド広告主に尋ねた結果、40%が信頼とコラボレーションと回答しており、ブランドの広告支出に最もポジティブな影響を与えていることがわかりました。次いで、レポート指標の数やオリジナル性といったデータの幅広さが37%という僅差で追いかけています。
このような状況を鑑み、リテーラーは、ファーストパーティ・データを強化し、より多くの広告主を取り込むため、AI を活用した顧客データプラットフォーム（CDP）やデータレイク、データクリーンルームに投資することが予想されます。
このトレンドの背景にあるのは？
AI の進化によって、リテーラーはファーストパーティ・データをこれまで以上に効果的に連携させられるようになりました。データが構造化されているか否かに関わらず、リテーラーはAIを活用して膨大なデータからインサイトやトレンドを発見しやすくなります。このようなインサイトにより、リテーラーはワンランク上のパーソナライゼーションとターゲティングを実現でき、消費者の体験やコンバージョン率を改善できます。
RMN ごとのレポート指標にばらつきがあると、ブランド広告主によるキャンペーン・パフォーマンスの比較が難しくなり、透明性の向上が求められるようになります。Coresight Research が行ったアンケートによると、ブランドは RMN と連携する際のコントロールと透明性の向上を求めていることが分かっています。これを叶えるには、リテーラーがサイロを解消し、明確でチャネルに特化した、わかりやすいパフォーマンス指標を確実に提供することが必要になります。
このトレンドの背景にあるのは？
限定的な広告キャンペーンにおけるブランドのコントロール：RMN はリテーラーのファーストパーティ・データをもとに構築されており、データやレポート指標に加え、広告を配信する場所などの運用の側面においても、リテーラーが高度な管理を行えます。今後、テクノロジーの進化やブランド広告主とテック企業との提携が進むにつれ、キャンペーン管理はますます自動化され、ブランド広告主がより高度な可視性とコントロールを得ることになるでしょう。
ブランド広告主が RMN 全体にわたる指標を比較し、投資対効果を評価するには測定基準の標準化が欠かせません。しかし、インタラクティブ・アドバタイジング・ビューロー（IAB）およびメディア測定評議会（MRC）が2024年にガイドラインを発表したにもかかわらず、多くのリテーラーがまだこのような標準基準を導入していません。
標準的な基準の欠如は広告主にとって大きな懸念です。調査対象となった米国のブランド広告主のうち52%が最大の課題として挙げています。広告の買い付けや広告フォーマット、チャネルの普及といった分野におけるリテールメディア市場の進化が進む2025年も、基準に関する議論は続くでしょう。
このトレンドの背景にあるのは？
複雑化する測定：複数の RMN にわたり広告キャンペーンを行い、管理することはブランド広告主にとって、ますます難しくなっています。さまざまな規模のリテーラーや一貫性のないメディアタイプに合わせてメディア支出を多様化しなければならないことが複雑性に拍車をかけているにもかかわらず、標準的な基準がないため、リテーラーやプラットフォーム間でのキャンペーンの効果が比較できていません。
リテールメディアはひっ迫していますが、戦略的アドテックとのパートナーシップを活用した新たな RMN の台頭が呼び水となり、リーチやオーディエンス・ターゲティング、測定機能を強化することで有意義な競争が展開されていくでしょう。このようなパートナーシップにより、RMN は Amazon や Walmart など、大手リテールメディア企業の規模やデータを必要とせずに存在感を高め、予算を勝ち取ることができます。
また、新興 RMN はニッチなオーディエンスや革新的な広告フォーマット、パーソナライズされたパフォーマンス重視のキャンペーンを提供することで差別化を図ることができます。リアルタイムのクロスチャネル・キャンペーン管理などで機能で RMN をカスタマイズすることで、価値提案をさらに強化することができ、2025年以降の市場への影響を大幅に拡大することができます。
このトレンドの背景にあるのは？
求められるイノベーション：ここ数年、複数の RMN がリリースされており、より小規模で地域に特化した RMN の台頭は、柔軟性やカスタマイズの可能性の向上が市場の成長をけん引しています。しかし、リテーラーはこのニーズに限りがあることを認識し始めています。差別化や成長の継続を実現するには業界の代表的な DSP と連携し、安定した広告インベントリを提供しつつ、透明性と包括的な基準を備えた API パートナーシップを築く必要があります。
AI、プログラマティック広告、戦略的パートナーシップが牽引するかたちで、リテールメディアの世界は2025年に大きな転機を迎えます。より正確なパーソナライゼーションからスムーズなオペレーション、新たな広告フォーマットまで、ワクワクするような機会が目白押しです。また、リテーラーによるファーストパーティ・データや最先端テクノロジーへの投資が増える中、リテールメディアがフルファネル広告の原動力へと進化する可能性は日増しに高まっています。 本レポートのトレンドは、その変化のスピードが非常に速いことを示しています。そして、次の展開に向けて先手を打つことの重要性を示唆しています。
ブランド、リテーラー、テクノロジーパートナーへの影響や企業の導入事例など、各トレンドの詳細を見るには、レポート「リテールメディア・マーケットを形作るトレンド10選」の全文をダウンロードしてください。 ※レポートは英語版のみとなります。
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