このレビューはネタバレを含みます▼ガッツリネタバレです。
略奪をアイデンティティとする戦闘民族、レイヴェダ。その始祖の血を受け継ぐ次期族長ジズとジズに拾われ右腕となった流れ者ツァドの、部族の在り方をめぐり繰り広げられる激しい恋の物語。
まずレイヴェダの内情を知って思ったのは、「なんという単細胞集団」…同じ戦闘民族でもサ○ヤ人だってこんなに下衆じゃない。そういえば女性が一切出てこないのですが、どんな扱いを受けているのかはなんとなくお察し…
そんな人権蹂躙気味な家訓に疑問を抱くジズだが因習に独り抗うことは難しく、志を共にするツァドと2人、新時代を夢見て下克上の機会を伺っていたのですが…戦場で負傷した美しきツァドが、族長(ジズの父親)の命で男たちの慰み者となり事態は一変。しかもその延長線上で計画を知られ(チョロすぎる…)、ツァドは忠誠と愛を捧げたジズを守るため重鎮を殺害、見せしめに自分の命を差しだそうとする。
この局面、もしそこでジズが地位や部族を取ったなら今までと同じで何も変わらないよな…とハラハラしたけれど、大丈夫、ちゃんと信念を貫いてくれました。次世代も2人の背中を見てそれに続くようで、争いから共生へと移り変わる新時代が感じられ心底安堵。かといって無傷で納得してくれるような相手方ではないので多少の犠牲は払ったにしろ(もうほとんどヤクザの指詰めよね)、ジズは愛するツァドを伴い生き直すことに。
わたしがこの作品に満点をつけた理由…それは、部族の一員である前に個人であることを選んだ2人へのリスペクト。個人をないがしろにする集団が平和のうちに存続できるとは思えないし、しがらみのある中で勇気ある決断だったと思います。
なので、身分差ロミジュリというか…帯を読むと色ボケ暴走したようにも取れてしまうのだけど、一貫して冷静な2人でした。
控えめとはいえ結ばれる描写もあるというのに、とにもかくにも修正がキツい…ヘイヘイどうした海王社さん。近年は他作者さまの作品も修正がキツくなっているし、全体的にチェックが厳しくなったのかも??
完結マークが付いていないので購入を迷いましたが、いちおう完結といってもいいであろう穏やかな幕引きでした。
お世辞にも五体満足とはいえない2人がたくましくラブに生きる様、そして次世代の手引きにより部族を導くその後を、番外編なりでこってりと拝みたいものです。