教師のなり手がいなくなる…「処遇改善」と言いながら、基本給を引き下げるような改革は止めて下さい! #主務教諭に反対します


教師のなり手がいなくなる…「処遇改善」と言いながら、基本給を引き下げるような改革は止めて下さい! #主務教諭に反対します
署名活動の主旨
私は現職教員です。
全国の教室で担任教師のなり手が見つからない、「教員不足」が深刻化しています※1。
しかし、教育を立て直すべくまとめられた国の提案によって、教諭の給料が下がり、今後ますます教師のなり手が減ってしまうのではないか…そんな危機感を抱きます。
【この署名で訴えたいこと】
2024年8月、国の中央教育審議会が提言をまとめました。
それに沿う形で、2025年1月から開かれる通常国会において、制度改革が議論される見通しとなっています。
大きな問題だと感じるのは、その中にある「新たな職」「新たな級(給料表)」を作るという改革案です。
先行導入した自治体の例を見れば、これにより教諭の基本給が下げられてしまう可能性があるのです。
国は教職の重要性を踏まえて給料の上乗せ分を数%増やすと言っていますが、その裏で基本給が下がりましたということになれば、公立学校は「官製ブラック企業」との非難を免れません。
また、これは子どもや教師のためを思った改革ではなく、「『定額働かせ放題』はおかしい」というような教師からの声を封殺するなど、職員室を管理しやすくするための改革に思えます。
法改正まであとわずか。
制度の再考を求めるために、どうか署名への賛同とコメントにご協力をお願いいたします。
【教師の現状、「定額働かせ放題」】
国の中央教育審議会は、2024年8月の提言において「処遇改善」を掲げ、教師に支払う月給の上乗せ分を4%から10%以上に引き上げる方針を掲げました。
一方で、このわずかな上乗せ分と引き換えに公立教員には残業代を一切支払わなくてよいという法律(給特法)があり、この枠組みを維持することには多くの批判もありました。
現在支払われている「4%」とは月8時間分の残業代に相当し、これから支払うという「10%」とは月20時間分の残業代に相当します※2。
しかし、2022年度に行われた国の調査では、小学校教員の授業期間中の月平均残業時間は約82時間、中学校は約100時間、高校は約81時間で(持ち帰り仕事を含む)、この実残業時間からは本来であれば40%ほどを上乗せして支払わなければなりません。
40%支払うべきところを、10%程度に切り下げる。
そして、それ以上の残業がどれだけ発生しようが、追加の残業代は一切認めない。
このような、他職にはない公立教員のみの特殊な待遇引き下げ「定額働かせ放題」が、教員志望者を減少させる一因と指摘されています。
【さらに基本給が下がる恐れ…「新たな職・級」の問題】
「定額働かせ放題」もさることながら、この署名で訴えたいのは、今後の制度改革にパッケージ化されている、あまり知られていないもう一つの問題についてです。
それが、「新たな職」「新たな級(給料表)」を作るというものです。
これは、東京都において2009年度に「主任教諭」制度として先行導入されたものであり、そのような制度を全国展開しようという提案です。
東京都ではそれまで全体の85%を占めていた「教諭職」を、上位の「主任教諭」と下位の「教諭」に分化し、給料に差をつけることとしました(トップ画像参照)。
その額は、月に1〜3万円程度です(給料は手当や退職金にもはね返るため、主任教諭と教諭の生涯賃金の差は1,800万円以上という試算もあります※3)。
問題は、東京都でこの制度が導入された際に、主任教諭となる教師の給料をただ引き上げたのではなく、教諭にとどまる教師の給料を引き下げたということです。
この制度を全国展開するにあたっても、「処遇改善」を行うと言いながら、月給上乗せ分(「10%以上」)の財源を確保するためにも、教諭の基本給を引き下げてしまう。
自治体によっては、そのような運用が行われるのではないかと危惧しています。

【制度の導入に反対します】
給与面以外にもこの制度が、給特法を維持する口実であった教師の自律性や裁量を奪い取ってしまうのではないかというリスクを感じます。
東京都で主任教諭になるためには、職務レポートなどの選考試験が課されます。
そこでは、「校長のリーダーシップに従います」というような模範解答を書くことが求められます※4。
それに従えない教師は、基本給の引き下げを余儀なくされるのです。
そのような中、仮に校長の方針が少し違うのではと思うことがあっても、異を唱えることが難しくなるのではないでしょうか。
理不尽な無賃の無限残業にも、一層抗いにくくなるはずです。
教育委員会や校長のトップダウンで物事が決められていく、それこそが制度導入の真の目的なのかもしれません。
しかし、それは本当に子どものためのより良い教育に繋がるものでしょうか。
東京都で制度が導入された2009年度に行われた調査では、小・中学校教諭のうち賛成はわずかに10.7%、反対は72.4%でした※5。
現場からこのような反応が示されていた制度を、果たして全国展開すべきなのでしょうか。
【最低でも基本給は下げないと明言を】
仮に導入が不可避となったとしても、これまで「処遇改善」をうたってきたわけですから、誰かの基本給を下げるようなことは絶対にしないと明言することを求めます。
教諭の大幅な待遇引き下げは、もの言えぬ職員室を作ることにも繋がります。
新聞紙上では上記の懸念に対して、「処遇改善の趣旨を踏まえれば基本給が下がることは考えられない」という文部科学省の見解が紹介されています※6。
この言葉が真実ならば…教員給与をどうするかということは最終的には各自治体が判断することになりますが…これを進めてきた文部科学省の責任として、「自治体において基本給を下げて対処するようなことは決して許さない」ということを公式に表明してください。
加えて、東京都の現行制度についても再検討し、失われた基本給を引き上げるなど、より望ましい制度となるよう条例改正の機会を作ってください。
最後になりますが−。
本当は、かような給与面をいじくるような改革ではなく、過労死ラインを超えて働かざるを得ないような働き方の問題を直視し、それをいち早く解決することこそが、教員志望者が安心して教職を選べるようになる最善の道です。
「定額働かせ放題」と呼ばれるような働き方を根本から変えていただきたい。
国会議員や文部科学省、教育委員会の皆様に、心よりお願いいたします。
(文責:現職教員 西村祐二)
【署名の主催団体】
給特法のこれからを考える有志の会
【署名の呼びかけ人】五十音順
・宇惠野珠美(教員志望学生)
・内田 良 (名古屋大学教授)
・小室 淑恵(株式会社ワーク・ライフバランス代表取締役社長)
・嶋﨑 量 (弁護士)
・嶋田富士男(教員長時間労働の被害者家族)
・西村 祐二(岐阜県立高校教諭/筆名 斉藤ひでみ)
・室橋 祐貴(日本若者協議会代表理事)
【賛同人】
・五十嵐夕介(東京都公立中学校主任教諭)
・市橋 耕太(弁護士)
・工藤 祥子(過労死家族/元教員)
・河野 晃 (東京学芸大学附属世田谷中学校教諭/元東京都公立中学校主任教諭)
・齋賀 裕輝(川崎市立小学校教諭)
・鈴木 雅博(明治大学准教授)
・たかまつなな(時事YouTuber)
・新田 龍 (働き方改革総合研究所株式会社 代表取締役/ブラック企業アナリスト)
・福嶋 尚子(千葉工業大学准教授)
・本田 由紀(東京大学教授)
・吉井 広人(市川市立小学校教諭)
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【追加の解説:「新たな職」「新たな級」とは何か、その疑問と対案】
●「新たな職」「新たな級」とは何か
2024年8月の中央教育審議会の答申※7では、「近年、学校では、教育相談や特別支援教育に関する連絡調整などの子供の抱える課題への対応や、校内研修、情報教育、防災・安全教育、道徳教育といった(中略)学校が組織的に対応すべき事象が多様化・複雑化している」とし、それに伴い、「スクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカーをはじめとした多様な支援スタッフ(中略)地域や様々な関係機関との協力が重要となっており、学校内外との連携・調整に関する業務が増加している」としています。
加えて、「若手教師へのサポート機能を抜本的に強化」する必要性を挙げ、そうした仕事を「新たな職」として位置づけることとしています。
そして、この「「新たな職」が制度上位置付けられ、配置される場合には(中略)都道府県等において、給料表上、教諭とは異なる新たな級を創設することが必要である」という提言を行っています。(前掲答申42〜43頁)
また、「心理や福祉等の専門性を有する教師が教育相談や特別支援教育コーディネーター等を担当する場合」も新たな級として処遇することができるとしています。(前掲答申55頁)
●疑問と対案
これについて、3点述べます。
一つ目は、時代の変化に合わせて新たな業務が発生しているとして、本来はそれを教師の職務として追加するのではなく、可能な限り教師以外が担うべき業務として切り分けるべきではないかということです。2019年の答申※8以来、学校業務の分類と外部化を進めることは既定路線だったはずです。
二つ目は、教師が担うにせよ教師以外が担うにせよ、「新たな職」を学校の業務に追加するのであれば、組織体系を変える前に、人を増やすことが提案されて然るべきだということです。
特に、若手へのサポートが不十分であるとしたら、それは他の教師に時間的余裕がないからであり、一人一人に余裕ができれば、学校全体で若手をサポートすることができます。
三つ目に、この「新たな職」に対してなぜ給料表を作り直さなくてはならないのかということが理解できません。新たな級ではなく、新たな主任を増やして主任手当を支給するということでよいはずです。仮に、現在支給されている主任手当の額が不十分であるならば、手当を倍増するなどして褒賞すればよいのです。
制度が先行導入されている東京都では、学校内に主任教諭の数が足りない等で、教諭職のまま主任教諭の仕事を担わざるを得ない教師がいるとも言われています。
新たな級創設に伴い主任手当が廃止されたことから、手当もなく低い給料表のままで、過大な仕事を担わなければならないという不公平感が生じてしまいます。
そんなことが起こりうるのであれば、現状の通り年度ごとに新たな主任を任命することとし、主任手当を確実に支給する方がよりよいのではないかと考えます。
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※1:教育新聞「4割以上の教委、今年度は教員不足が「悪化」 文科省調査」2023年6月20日
※2:教育新聞「時間外勤務「月20時間」、教職調整額「10%」 自民特命委提言」2023年5月10日
※3:髙橋哲『聖職と労働のあいだ』岩波書店、2022年
※4:佐藤正志編著『令和5年度改訂版 東京都主任教諭選考 職務レポート合格対策集』教育開発研究所、2023年
※5:藤田博・高野(葛西)耕介・勝野正章「東京都の教員は主任教諭制度をどう受け止めたか−アンケートの分析を中心に−」2010年
※6:毎日新聞「クローズアップ 教職調整額「最低ライン」 財務省折衝難航か」2024年8月30日
※7:中央教育審議会「「令和の日本型学校教育」を担う質の高い教師の確保のための環境整備に関する総合的な方策について(答申)」2024年8月27日
※8:中央教育審議会「新しい時代の教育に向けた持続可能な学校指導・運営体制の構築のための学校における働き方改革に関する総合的な方策について(答申)」2019年1月25日
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署名活動の主旨
私は現職教員です。
全国の教室で担任教師のなり手が見つからない、「教員不足」が深刻化しています※1。
しかし、教育を立て直すべくまとめられた国の提案によって、教諭の給料が下がり、今後ますます教師のなり手が減ってしまうのではないか…そんな危機感を抱きます。
【この署名で訴えたいこと】
2024年8月、国の中央教育審議会が提言をまとめました。
それに沿う形で、2025年1月から開かれる通常国会において、制度改革が議論される見通しとなっています。
大きな問題だと感じるのは、その中にある「新たな職」「新たな級(給料表)」を作るという改革案です。
先行導入した自治体の例を見れば、これにより教諭の基本給が下げられてしまう可能性があるのです。
国は教職の重要性を踏まえて給料の上乗せ分を数%増やすと言っていますが、その裏で基本給が下がりましたということになれば、公立学校は「官製ブラック企業」との非難を免れません。
また、これは子どもや教師のためを思った改革ではなく、「『定額働かせ放題』はおかしい」というような教師からの声を封殺するなど、職員室を管理しやすくするための改革に思えます。
法改正まであとわずか。
制度の再考を求めるために、どうか署名への賛同とコメントにご協力をお願いいたします。
【教師の現状、「定額働かせ放題」】
国の中央教育審議会は、2024年8月の提言において「処遇改善」を掲げ、教師に支払う月給の上乗せ分を4%から10%以上に引き上げる方針を掲げました。
一方で、このわずかな上乗せ分と引き換えに公立教員には残業代を一切支払わなくてよいという法律(給特法)があり、この枠組みを維持することには多くの批判もありました。
現在支払われている「4%」とは月8時間分の残業代に相当し、これから支払うという「10%」とは月20時間分の残業代に相当します※2。
しかし、2022年度に行われた国の調査では、小学校教員の授業期間中の月平均残業時間は約82時間、中学校は約100時間、高校は約81時間で(持ち帰り仕事を含む)、この実残業時間からは本来であれば40%ほどを上乗せして支払わなければなりません。
40%支払うべきところを、10%程度に切り下げる。
そして、それ以上の残業がどれだけ発生しようが、追加の残業代は一切認めない。
このような、他職にはない公立教員のみの特殊な待遇引き下げ「定額働かせ放題」が、教員志望者を減少させる一因と指摘されています。
【さらに基本給が下がる恐れ…「新たな職・級」の問題】
「定額働かせ放題」もさることながら、この署名で訴えたいのは、今後の制度改革にパッケージ化されている、あまり知られていないもう一つの問題についてです。
それが、「新たな職」「新たな級(給料表)」を作るというものです。
これは、東京都において2009年度に「主任教諭」制度として先行導入されたものであり、そのような制度を全国展開しようという提案です。
東京都ではそれまで全体の85%を占めていた「教諭職」を、上位の「主任教諭」と下位の「教諭」に分化し、給料に差をつけることとしました(トップ画像参照)。
その額は、月に1〜3万円程度です(給料は手当や退職金にもはね返るため、主任教諭と教諭の生涯賃金の差は1,800万円以上という試算もあります※3)。
問題は、東京都でこの制度が導入された際に、主任教諭となる教師の給料をただ引き上げたのではなく、教諭にとどまる教師の給料を引き下げたということです。
この制度を全国展開するにあたっても、「処遇改善」を行うと言いながら、月給上乗せ分(「10%以上」)の財源を確保するためにも、教諭の基本給を引き下げてしまう。
自治体によっては、そのような運用が行われるのではないかと危惧しています。

【制度の導入に反対します】
給与面以外にもこの制度が、給特法を維持する口実であった教師の自律性や裁量を奪い取ってしまうのではないかというリスクを感じます。
東京都で主任教諭になるためには、職務レポートなどの選考試験が課されます。
そこでは、「校長のリーダーシップに従います」というような模範解答を書くことが求められます※4。
それに従えない教師は、基本給の引き下げを余儀なくされるのです。
そのような中、仮に校長の方針が少し違うのではと思うことがあっても、異を唱えることが難しくなるのではないでしょうか。
理不尽な無賃の無限残業にも、一層抗いにくくなるはずです。
教育委員会や校長のトップダウンで物事が決められていく、それこそが制度導入の真の目的なのかもしれません。
しかし、それは本当に子どものためのより良い教育に繋がるものでしょうか。
東京都で制度が導入された2009年度に行われた調査では、小・中学校教諭のうち賛成はわずかに10.7%、反対は72.4%でした※5。
現場からこのような反応が示されていた制度を、果たして全国展開すべきなのでしょうか。
【最低でも基本給は下げないと明言を】
仮に導入が不可避となったとしても、これまで「処遇改善」をうたってきたわけですから、誰かの基本給を下げるようなことは絶対にしないと明言することを求めます。
教諭の大幅な待遇引き下げは、もの言えぬ職員室を作ることにも繋がります。
新聞紙上では上記の懸念に対して、「処遇改善の趣旨を踏まえれば基本給が下がることは考えられない」という文部科学省の見解が紹介されています※6。
この言葉が真実ならば…教員給与をどうするかということは最終的には各自治体が判断することになりますが…これを進めてきた文部科学省の責任として、「自治体において基本給を下げて対処するようなことは決して許さない」ということを公式に表明してください。
加えて、東京都の現行制度についても再検討し、失われた基本給を引き上げるなど、より望ましい制度となるよう条例改正の機会を作ってください。
最後になりますが−。
本当は、かような給与面をいじくるような改革ではなく、過労死ラインを超えて働かざるを得ないような働き方の問題を直視し、それをいち早く解決することこそが、教員志望者が安心して教職を選べるようになる最善の道です。
「定額働かせ放題」と呼ばれるような働き方を根本から変えていただきたい。
国会議員や文部科学省、教育委員会の皆様に、心よりお願いいたします。
(文責:現職教員 西村祐二)
【署名の主催団体】
給特法のこれからを考える有志の会
【署名の呼びかけ人】五十音順
・宇惠野珠美(教員志望学生)
・内田 良 (名古屋大学教授)
・小室 淑恵(株式会社ワーク・ライフバランス代表取締役社長)
・嶋﨑 量 (弁護士)
・嶋田富士男(教員長時間労働の被害者家族)
・西村 祐二(岐阜県立高校教諭/筆名 斉藤ひでみ)
・室橋 祐貴(日本若者協議会代表理事)
【賛同人】
・五十嵐夕介(東京都公立中学校主任教諭)
・市橋 耕太(弁護士)
・工藤 祥子(過労死家族/元教員)
・河野 晃 (東京学芸大学附属世田谷中学校教諭/元東京都公立中学校主任教諭)
・齋賀 裕輝(川崎市立小学校教諭)
・鈴木 雅博(明治大学准教授)
・たかまつなな(時事YouTuber)
・新田 龍 (働き方改革総合研究所株式会社 代表取締役/ブラック企業アナリスト)
・福嶋 尚子(千葉工業大学准教授)
・本田 由紀(東京大学教授)
・吉井 広人(市川市立小学校教諭)
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【追加の解説:「新たな職」「新たな級」とは何か、その疑問と対案】
●「新たな職」「新たな級」とは何か
2024年8月の中央教育審議会の答申※7では、「近年、学校では、教育相談や特別支援教育に関する連絡調整などの子供の抱える課題への対応や、校内研修、情報教育、防災・安全教育、道徳教育といった(中略)学校が組織的に対応すべき事象が多様化・複雑化している」とし、それに伴い、「スクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカーをはじめとした多様な支援スタッフ(中略)地域や様々な関係機関との協力が重要となっており、学校内外との連携・調整に関する業務が増加している」としています。
加えて、「若手教師へのサポート機能を抜本的に強化」する必要性を挙げ、そうした仕事を「新たな職」として位置づけることとしています。
そして、この「「新たな職」が制度上位置付けられ、配置される場合には(中略)都道府県等において、給料表上、教諭とは異なる新たな級を創設することが必要である」という提言を行っています。(前掲答申42〜43頁)
また、「心理や福祉等の専門性を有する教師が教育相談や特別支援教育コーディネーター等を担当する場合」も新たな級として処遇することができるとしています。(前掲答申55頁)
●疑問と対案
これについて、3点述べます。
一つ目は、時代の変化に合わせて新たな業務が発生しているとして、本来はそれを教師の職務として追加するのではなく、可能な限り教師以外が担うべき業務として切り分けるべきではないかということです。2019年の答申※8以来、学校業務の分類と外部化を進めることは既定路線だったはずです。
二つ目は、教師が担うにせよ教師以外が担うにせよ、「新たな職」を学校の業務に追加するのであれば、組織体系を変える前に、人を増やすことが提案されて然るべきだということです。
特に、若手へのサポートが不十分であるとしたら、それは他の教師に時間的余裕がないからであり、一人一人に余裕ができれば、学校全体で若手をサポートすることができます。
三つ目に、この「新たな職」に対してなぜ給料表を作り直さなくてはならないのかということが理解できません。新たな級ではなく、新たな主任を増やして主任手当を支給するということでよいはずです。仮に、現在支給されている主任手当の額が不十分であるならば、手当を倍増するなどして褒賞すればよいのです。
制度が先行導入されている東京都では、学校内に主任教諭の数が足りない等で、教諭職のまま主任教諭の仕事を担わざるを得ない教師がいるとも言われています。
新たな級創設に伴い主任手当が廃止されたことから、手当もなく低い給料表のままで、過大な仕事を担わなければならないという不公平感が生じてしまいます。
そんなことが起こりうるのであれば、現状の通り年度ごとに新たな主任を任命することとし、主任手当を確実に支給する方がよりよいのではないかと考えます。
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※1:教育新聞「4割以上の教委、今年度は教員不足が「悪化」 文科省調査」2023年6月20日
※2:教育新聞「時間外勤務「月20時間」、教職調整額「10%」 自民特命委提言」2023年5月10日
※3:髙橋哲『聖職と労働のあいだ』岩波書店、2022年
※4:佐藤正志編著『令和5年度改訂版 東京都主任教諭選考 職務レポート合格対策集』教育開発研究所、2023年
※5:藤田博・高野(葛西)耕介・勝野正章「東京都の教員は主任教諭制度をどう受け止めたか−アンケートの分析を中心に−」2010年
※6:毎日新聞「クローズアップ 教職調整額「最低ライン」 財務省折衝難航か」2024年8月30日
※7:中央教育審議会「「令和の日本型学校教育」を担う質の高い教師の確保のための環境整備に関する総合的な方策について(答申)」2024年8月27日
※8:中央教育審議会「新しい時代の教育に向けた持続可能な学校指導・運営体制の構築のための学校における働き方改革に関する総合的な方策について(答申)」2019年1月25日
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意思決定者
賛同者からのコメント
オンライン署名に関するお知らせ
2024年10月4日に作成されたオンライン署名
