ハリポタ作者、映画出演者を「無知」と一蹴 性自認に対する意見の違いと友情めぐり

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ポール・グリン文化記者、イアン・ヤングス文化記者
「ハリー・ポッター」シリーズの作者J・K・ローリングさんは、同シリーズの映画に出演した俳優のエマ・ワトソンさんが最近、2人の関係とジェンダー・アイデンティティー(性自認)に対する意見の不一致について発言したことを受け、ソーシャルメディア上で痛烈な反論を展開し、話題となっている。
ワトソンさんは先週公開されたポッドキャスト番組の中で、ローリングさんとは性自認の問題について意見の違いがあるものの、今もローリングさんを愛しており、「彼女をキャンセル」することはできないと語った。
しかしローリングさんは29日、自分がしきりに脅迫されていた時期に、ワトソンさんが公の場で議論の「炎にガソリン」を注いだことで、「かつての友人」だったワトソンさんへの感情が変化したと発言した。
ローリングさんはソーシャルメディア「X」に、「富と名声に守られていない大人の生活を経験したことがないほかの人たちと同様、エマは現実の生活に関する経験がほとんどなく、自分がどれほど無知か理解していないほど無知だ」と投稿した。
ワトソンさんは2001年から2011年にかけ、ローリングさんの小説を原作とした映画8本で「ハーマイオニー・グレンジャー」を演じた。
ワトソンさんや、主役ハリー・ポッターを演じたダニエル・ラドクリフさんらは、ローリングさんがトランスジェンダーの権利擁護に反対して物議をかもした際に、違う立場をとった。ローリングさんは、トランスジェンダーの権利が「生物学的な性の概念を損なっている」と主張している。
ローリングさんの発言はトランスフォビア(トランスジェンダー嫌悪)だと非難されたが、本人はこれを否定。自分は「女性専用スペースでの女性への影響を懸念している」のだと説明している。
ワトソンさんは先のインタビューで、「私の意見に同意しない人たちが私を愛してくれることを、心の底から願っている。そして私自身も、必ずしも同じ意見を持たない人たちを愛し続けられればと思っている」と話していた。
感情の「転機」
ローリングさんは29日の投稿で、「私が創作したキャラクターをかつて演じた俳優が、永遠に私に同意し続ける義務などない。そんなことは、私が21歳だった時の当時の上司に、私は今どんな意見を持つべきでしょうなどと尋ねるのと同じくらいばかげている」と書いた。
一方でローリングさんは、当人が10歳だった頃から知っている相手に対する「ある種の保護者的な感情を振り払うのは難しかった」とも認めた。
「大きくて怖い映画スタジオで、優しくおだてられないとせりふが言えなかった子どもたちの記憶を、私はつい最近まで振り払うことができなかった」と、ローリングさんは書いた。
ローリングさんは、自分の気持ちに「転機」が訪れたのは2022年のことだったとして、ワトソンさんが英映画テレビ芸術アカデミー(BAFTA)賞の授賞式で、自分をかすかに皮肉ったとされる場面を挙げた。
この時の授賞式を司会したレベル・ウィルソンさんは、ワトソンさんを紹介する際、「彼女は誇らしくフェミニストを自認していますが、彼女は魔女なのだと私たちは知っています」と述べた。これに対しワトソンさんは、「私はすべての魔女のためにここにいます」と返した。この発言は、トランスジェンダーの人々への支持を示すものとして広く解釈された。また、多くの人々はワトソンさんがその後、「bar one(ただ一人を除いて)」と口の動きで示したと受け取ったが、実際には「by the way(ちなみに)」と言った可能性もあり、明確ではない。
これについてローリングさんは「X」で、「発言そのものよりも、その後の出来事の方がはるかに傷ついた」と書いた。ワトソンさんはこの時、ローリングさんの電話番号を知っていたにもかかわらず、テキストメッセージを送ってきたという。そのメッセージには、「今とてもつらい思いをされていて、本当に大変ですね」とだけ書かれていたと、ローリングさんは書いた。
「これは、私に対する殺害やレイプ、拷問の脅迫が最も激しかった時、私自身の安全対策を大幅に強化しなければならず、家族の安全を常に心配していた時のことだ」
「エマはただ、公の場で議論の炎にさらにガソリンを注いだ。それでいて彼女は、心配しているとたった1行書くだけで、自分の根本的な思いやりと優しさを私に伝えられると、そう考えたのだ」
ローリングさんはさらに、更衣室や公衆トイレなど、トランスジェンダーの人の使用について自分が反対する女性専用スペースを、ワトソンさんが「必要とする可能性はほとんどない」と述べた。
「私は14歳の時点で億万長者ではなかった。エマを有名にした本を書いていた頃、私は貧乏暮らしをしていた」と、ローリングさんは付け加えた。
「だからこそ、私は自分自身の人生経験から、エマが熱心に加担してきた女性の権利の破壊が、彼女が持つ特権を持たない女性や少女たちにとって何を意味するのか分かっている」
また、ワトソンさんが最近、自分への愛情を表明したことについては、「彼女が方針を変えたのではないかと疑っている。彼女は、私に対する全面的な非難が、かつてほど流行していないことに気づいたから変えたのだ」と述べた。
ローリングさんは一連の投稿を、次のように締めくくった。
「友人の暗殺を常に求める活動家たちの運動に親しげに近づきながら、その元友人を母親扱いして、自分はその元友人の愛情を受けて当然だなどと、そんな態度は大人ならとれないはずだ」
「エマが私と違う意見を持つのは、もちろん自由だ。そして、私をどう思うか、公に語る権利も当然ある。しかし、私にも同じ権利がある。そして私はついに、その権利を行使することにした」
BBCニュースは、ワトソンさんの代理人にコメントを求めている。
「一見両立しない二つのことを同時に抱える」
ワトソンさんは2020年、ハリー・ポッター映画の他の出演者と同様、ローリングさんの見解に反対すると発言した。ワトソンさんは当時、「トランスジェンダーの人たちは、『自分はこういう人間』だと本人が言う通りの存在。自分が何者か、たえず疑問視されたり否定されたりすることなく、自分らしく人生を生きる資格がある」とソーシャルメディアに書いた。
先週のインタビューでワトソンさんは、ローリングさんとの過去の関係があるからこそ、今でも「ジョー(ローリングさんの本名ジョアンの愛称)を大切に思うことができる」と語った。
ワトソンさんはまた、自分が成長する中でローリングさんが示してくれた「優しさと励ましの言葉」、そしてハーマイオニーのようなキャラクターを演じる機会を与えてくれたことを称賛した。
「彼女を、あるいは(自分のそうした経験を)何かのためにキャンセルする世界など、私にはあり得ない」と、ワトソンさんは述べた。「それはいつまでも真実でなくてはならない。真実なので」。
「私には、この一見両立しない二つのことを同時に抱える以外に、自分に何ができるのか分からない。そして、二つのことがいつか和解するか、融合するか、願うしかない。そして、いつまでもそうならなくても、それでもどちらも真実であり得ると、受け入れるしかないのかもしれない」










