画像説明,連邦最高裁前で抗議する中絶反対派と女性の選択権支持派(23日、米ワシントン)

今回の判決は、約半世紀前に連邦最高裁が定めた判例を、同じ最高裁が自ら覆したことになり、きわめて異例。今後、アメリカ国内で激しい論争と政治対立を引き起こすとみられている。

今回の判決は、保守派判事6人とリベラル派判事3人の思想的な違いがそのまま反映されたものとなった。判事9人のうち、保守派のサミュエル・アリート、クラレンス・トーマス、ニース・ゴーサッチ、ブレット・キャヴァノー、エイミー・コーニー・バレット各判事は、明確に「ロー対ウェイド」判決を覆す判断に賛成した。このうち、ゴーサッチ、キャヴァノー、コーニー・バレット各氏は、ドナルド・トランプ前大統領に指名され就任した保守派。

今回の判決をめぐっては、米政治ニュースサイト「ポリティコが今年5月に保守派判事の意見書草稿を入手して報じていた。その中で、筆者のアリート判事は「ロー対ウェイド」判決について、「はなはだしく間違っている」と書いていた。報道を受けて、ジョン・ロバーツ最高裁長官は文書が本物だと認めていた

動画説明,米最高裁が人工中絶の合憲性を否定、人々の反応は?

「この決定は直接、より多くの心臓が脈を打ち、より多くのベビーカーが押され、より多くの成績表が手渡され、より多くのリトルリーグの試合が開かれ、より多くの良い人生が送られることになる。喜ばしい日だ!」と知事は書いた。

長年にわたり「ロー対ウェイド」判決を批判してきた保守派のマイク・ペンス前副大統領は、判決が「アメリカの人たちに新しい始まりを与えた」と歓迎した。

「生きるための2度目のチャンスを与えられた今、生命の神聖性がアメリカの全ての州の法律に復帰するまで、我々は安穏としてはならないし、手を緩めてはならない」と、副大統領はツイッターで書いた。

これに対して、女性の選択権を支持してきたリベラル派で民主党幹部のナンシー・ペロシ下院議長は、「共和党が支配する最高裁」が、共和党の「暗く、極端な目標」を実現したと批判。

ペロシ氏は、「アメリカの女性たちは今日、自分の母親よりも自由が制限されている」、「この残酷な判決はとんでもないもので、あまりにつらすぎる」などとツイート

アメリカの権利団体「アメリカ自由人権協会(ACLU)」は、「これがいかにひどい瞬間か、否定しない」とツイート。「裁判所が何と言おうと、誰も自分の意志に反して妊娠を継続させられるべきではない(中略)中絶は私たちの権利だ。そのための闘いは決してやめない」と書いた。