買う人がいるから売る人がいる 仏の買春処罰法の立役者が語る性売買

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編集委員・大久保真紀
吹き出しアイコン藤田直哉さんら2件のコメント
藤田直哉さん太田啓子さん
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フランスの「買春処罰法」制定に尽力した元国会議員のモード・オリビエさん=2025年11月7日、東京都豊島区、井手さゆり撮影
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 「お金で体を買うのはレイプと同じ。暴力です」

 フランスの元国会議員、モード・オリビエさん(72)は断言する。

 2016年にフランスで制定された「買春処罰法」を成立させた立役者。処罰法は、性売買の「買う側」を処罰する一方で、「売る側」を被害者と位置づけて保護し、性売買からの脱出を支援することを規定する。性教育や予防の強化も盛り込まれている。

 パリ郊外に生まれた。ソルボンヌ大学で仏文学を学んだ後に会社員に。組合運動を経て地方議員と市長を務め、12年にオランド政権下で社会党の国会議員になった。

 政治家になったのも、女男平等を目指すフェミニスト活動に力を入れたのも、労働者として組合運動に力を注いだ父の影響が大きい。

 父は、会社の中での不平等や差別には敏感だった一方で、女性は必ずしも仕事をしなくていいという考えの持ち主だった。兄にはしっかりキャリアを積むよう求めて支えたが、「私には小学校か保育園の先生ならいいという感じだった」と振り返る。そうした性別による不平等を是正したいと政治の道に入った。

 市長時代に幼い子を抱えた22歳の女性と面会した。女性はホームレスで、金に困って性売買をしていたと打ち明けた。

性売買への認識が変わった面会

 フランスでは、性売買をする…

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この記事を書いた人
大久保真紀
編集委員
専門・関心分野
子ども虐待、性暴力、戦争と平和など
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    藤田直哉
    (批評家・日本映画大学准教授)
    2025年11月15日23時49分 投稿
    【視点】

    セックスワークが単なるワークだと思いにくいな、と筆者も思っていました。もちろん、自由意志で選択し、その結果を有益に活用している人もいるでしょうが、一般的には心身に侵襲性が高く、その点において普通の仕事とは違うのではないか、危険、屈辱、汚染な

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    太田啓子
    (弁護士)
    2025年11月16日9時45分 投稿
    【視点】

    フランスの買春処罰法に学ぶべきことは、「買う側」を処罰するのと同時に「売る側」を処罰せず被害者と位置づけて保護し、性売買からの脱出を支援することを規定していること、性教育や予防の強化も盛り込まれていることだ。この全てが日本に足りていない。高

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