記者会見する富士フイルムホールディングスの古森重隆会長=5日午後、東京都千代田区で
富士フイルムホールディングスは五日、事務機器大手の米ゼロックスとの合弁会社である富士ゼロックスの株式25%を米ゼロックスから買い取り、富士ゼロックスを完全100%子会社にすると発表した。昨年打ち出した米ゼロックスを買収する計画は断念し、自力で事務機器事業を強化する。富士フイルムは今回の取引成立を条件に、契約を破棄した米ゼロックスに対して起こした損害賠償訴訟を取り下げる。日米企業が対立した大型事業再編は、協力は継続しながらも双方の独自性を高めることで決着した。
米ゼロックスが保有する富士ゼロックスの株式などを総額二十三億ドル(約二千五百三十億円)で買い取る。五日に契約を締結しており、十一月上旬の取引完了を予定している。
富士フイルムの古森重隆会長・最高経営責任者(CEO)は五日に東京都内で記者会見し、米ゼロックスとの今後の関係について「統合は考えない。独自の道でやる」と買収断念を明言した。米ゼロックス買収は「マスト(必須)ではなかった」とした上で、今回の案が「ベター(優良)だ」と説明した。
富士ゼロックスは米ゼロックスへの製品供給を継続するが、協業の枠組みの見直しにより、欧米市場でほかの企業にも製品を展開できるようになると指摘。「富士フイルムとの協力関係が深まる」とし、両社の技術を組み合わせた新事業を目指す方針も明らかにした。
複写機を含むドキュメント事業の売上高が二〇二四年度に一八年度比約一・三倍に相当する一兆三千億円になるとの見通しを公表。富士フイルムとの連携や、両社の海外拠点の統合などで営業利益が五百億円以上増えると見込んだ。
買収計画を巡っては、米ゼロックスの大株主が反対を主張。対立が深まり、法廷闘争に発展するなど行き詰まっていた。
米ゼロックスのビセンティンCEOは「これらの合意は富士フイルムとの関係をリセットし、両社に大きな成長の機会をもたらす」とのコメントを出した。