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連れ連れなるままに大切な人や物・・・出来事について

by usa

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2006年 06月 23日

はん、何がとびっきりの笑顔だ・・・
笑ったことなどないくせに、よくもあんな顔が出来たものだ。
自分でもなかなかの演技に役者にでもなれるぞと思った・・・
自室に戻り、笑いをかみ殺すのに苦労したほどだ。
誰も本当の自分など知っちゃいないんだ。
ちょろいもんだな。
それから、夕飯の時に院長先生から、皆に話があった。
院長先生が、「ソヌは、今週いっぱいで、ソウルにある、あるお宅に養子にゆくことになったのです。あと少しだけれど、仲良く過ごし、ソヌとお別れするように。いいですね。」
「はぁ～い。」
あちこちで間延びした子供達の声・・・
「いいなぁ～、ソヌは・・・」
「きっと、お金持ちで幸せになれるんだ。」
「美味しいものだっていっぱい食べれるに決まってるさ。」
そこかしこで、ひそひそ羨ましげな声が聞こえて来る。




一週間なんてあっという間のことだった。
不思議と上級生からもいじめなどには合わなかった。
まぁ、俺が放つ独特の雰囲気は、誰からもからかいやいじめの対象とは成り得ることなど無いのは、明らかだった。
誰だって関わりたくないと言うのが本音だったろう・・・
それ程、俺は、ここでは、異端児だった。
荷物なんてほとんどありはしない・・・
２年近く暮らしたこの施設ともお別れだと思えば、それなりの思いもあった。
院長先生が、「ソヌ、いいですか。パクご夫妻の言う事を素直に聞いてよい子で過ごすのですよ。貴方は、聡明な子だから、先生は何も心配など無いけれど、出来れば、もっと子供らしくおなりなさい。今からでも遅くは無いのよ。」
「・・・」
（あぁ、院長先生には、俺の心の底に何が眠っているのか見えていたのかな？）
一瞬、そんな事を考えた。
だが、俺は、「はい。院長先生、お世話になりました。このご恩は忘れません。」
などと、思ってもいない・・・いや・・・どうだったのだろう。
本当の俺の気持ちは・・・
その頃の俺は、既に自分の気持ちを上手く隠す事が当たり前になっていたから・・・
しかし、やはり、どんなに大人びたとは言え、高が、７歳のガキに、何が見えていただろう。
俺は、俺がわかってはいなかったんだ。
本来ならば、まだまだ、子供子供していて当たり前で・・・
誰だって、甘える術の一つや二つ、御茶の子さいさいが、子供ってものだろう。
そんなこと、誰に教わらなくっても愛されて育った奴ならば、自然と身に付いた生きる知恵みたいなものだ。
子供は、ある意味、狡賢いものさ。
だが、俺には、甘える術など、身に付ける場所は、生まれ付いた時からなかったのだから・・・
だから、俺は、俺が分かっていなかったんだ・・・
本当は、誰より、何より、愛されたかったことを・・・
考えてみれば可哀想な奴だったのかもしれない。
愛が欲しい、誰か、俺を愛して！と、叫べばよかったのか？
誰か、俺を抱きしめて！と・・・
　
ソウルでの新しい生活が始まった。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　To be continued.