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連れ連れなるままに大切な人や物・・・出来事について

by usa

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2006年 03月 31日

突然、腕を掴まれた事に驚くJ姫。
「！」
「お願いです! もう少しだけ・・・あと少しだけでいいから。」
「いいえ、本当に困ります。」
掴んだ腕には有無を言わせぬ力が・・・
J姫は、困惑の眼差しでレインを見つめた。
「本当に困ります。」
「じゃあ、せめてお宅まで、送らせて下さい。」
「いいえ、一人で帰れますから。」
「じゃあ、この腕は、離せないな。」
「そんな・・・」
「Mrs.ヴィクトリー、僕が怖いですか？」
「・・・」
「ただ、貴方を送りたいだけです。心配しないで、そのくらいはいいでしょう？」
J姫は、一歩も引かないレインに半ば呆れながら、もう、降参だった。
これ以上、ここで、腕を掴まれたままいる事にも耐え難く・・・
「ええ、では、送って頂きます。」
レインは、にっこりと微笑むといつもの快活な彼の顔で、「じゃあ、ゆきましょう。」




J姫は車のことには疎く、Mr.Leeの横にしか乗ったこともなく、これが何という車種なのかもわからなかった。
しかし、ゆったりとした座り心地のよいシートに身を置くと、少し、緊張感が解けたようだった。
慣れない車のシートベルトを探していると、いきなり、レインが覆い被さり、息が止まりそうになったが、ただ、ベルトをかけてくれただけだった。
「はは・・・、緊張していますか？」
「Mrs.ヴィクトリーは、いい香りがしますね。」
「・・・」
「さあ、ゆきましょう！」
車は静かに駐車場を出て、屋敷へ向かうはずだった。
いくら、車を運転しないJ姫と言えど、自分の屋敷までの道はわかっている。
だが、その意に反して、レインは反対の方向へとハンドルを切った。
「Mr.レイン、道が違うのでは？」
「いえ、少しだけ遠回り、いいでしょう。」
「そんな、困ります。」
「貴方が仕事を終えられたという事は、主人ももう帰宅するはずですわ。」
「わたくしは、主人より、早く帰宅していないと・・・」
「帰宅していないと、何ですか？」
「はは・・・、Mrs.ヴィクトリー、子供じゃあるまいし、大丈夫ですよ！」
「ちょっとだけ、遠回りして貴方に見せたいものがあるんです。」
J姫は、言い出したら、聞きそうも無いこの子供のようなレインに仕方なく付き合う羽目に・・・
（似ているわ・・・Leeの我がままなところに・・・）
（お仕事の出来る人って、時々、子供のようだわ。）
自然に微笑んでいたらしい・・・
レインが、「よかった、もう、笑ってくれないかと思った。」
「えっ？」
「いえいえ、Mrs.ヴィクトリーは笑顔が一番って事です。」
「Mr.レイン、一体どこへゆくのですか？」
「それは、着いてからのお楽しみですよ。」
しかし、屋敷からどんどん離れてゆく事に少し、不安な気持ちに・・・
「もうすぐだから、そんな不安な顔はしないで下さいよ。」
「・・・」
「Mrs.ヴィクトリーは、見ていて飽きない人だなぁ～、コロコロと表情が変わって、これじゃあ、Mr.Leeも手離せませんよねっ。」
「貴方は何て、魅力的な人なんだろう。」
「僕がもう少し、早く貴方と出会っていたなら、何かが、変わっていたのだろうか？」
「何を、仰っていらっしゃるの、Mr.レイン。わたくしは、主人とはもう、生まれる前から決められた運命の人でしたから、何も変わる事などありませんわ。」
「生まれる前から・・・ソウルメイトという事ですか？」
「あぁ～、参りましたね。それじゃあ、僕に勝ち目は無いはずですね。」
「そんな、冗談ばかり、仰って。」
「・・・」
「冗談じゃないって言ったらどうします？」
「えっ？」
いきなり急ブレーキを踏んで、車を止め、真っ直ぐに見つめて来る、Mr.レイン。
そして、驚くJ姫をやおら抱きしめ、その唇に口付けしようとするレイン。
J姫はあらん限りの力を振り絞って、その手を振り解き、車から飛び出し闇雲に走り出していた。
そこは、桜が満開のヨイドの桜並木だった。
どこをどう走ったのか・・・
J姫は、もう、分からなくなっていた。
レインが追いかけて来たら、どうしよう、そればかりが頭の中をぐるぐる回って、怖くて振るえが止まらなかった。
息が切れそうで、苦しくなって、一本の桜の大木に身を委ね、息を整える。
（どうすればいいの。Lee！お願い助けて。）
J姫は、心の中で、叫び続けていた。
　
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　To be continued.